「せ、先生がやられた!?」
「に! 逃げろ!」
「は、走れ! と、止まるんじゃねーぞ!」
山賊達は一目散に逃げ出した日!
青桜は呼吸を整え息を止めた。
「響け、桜音色!」
納刀する音が辺りに響き渡る。
「がっ!」
「くっ!」
「うーわ、うーわ、うーわ」
様々な断末魔が聞こえ次々と盗賊団は倒れていった。
気絶したようだ。
「しかし歳をとると技一つで疲れが出てダメでござるな」
「姫ちゃん、こっちのベンチに座りなさい」
フォルクは何時の間にかベンチで休んでいた。
「そうさせてもらうでござる」
「ま、この事件の黒幕は縁に任せようぜ、神様相手なんざ疲れるだけだからな」
斬銀はフォルク達が座っているベンチの近くの地べたに座った。
「お? 斬銀は神とバトルした事あるん?」
風月はスキップしながら斬銀に近寄っていく。
「色々と居るが、縁とも殴り合ったな~懐かしい」
「ほほう、夕日を背景にお互いを殴り合いでもしたの?」
「ま、そんな所だな」
「で、あのぶっ倒れてる人達はどうするん?」
「ほっとけ、少しお灸だ」
「風邪をひくかもしれませぬな、ハッハッハ」
「それより、青桜さんの技のキレがヤバイよ! かっこいい!」
風月は目を輝かせている。
「ふふ、今の拙者には数回の技が限界、若い時の無茶が響いたでござる」
「あ、その刀に名前ってあるの?」
風月は青桜の刀を指差した。
「
「花の名前だよね?」
「そうでござる、横文字ならば『でるふぃにゅーむ』でござる」
「ふーん」
「大飛燕草は『あなたは幸福をふりまく』や『誰もがあなたを慰める』と言った花言葉があるでござる」
「ほう、いい花言葉じゃないか」
斬銀も刀を見ると刀がプルプルと震えている。
「ん? 今震えなかったか?」
「大飛燕草は少々恥ずかしがり屋な、精霊でござるからして」
「おお~精霊なんだ」
風月は青桜に近寄って刀をマジマジと見た、すると刀はスッと消えてしまった。
「うお? 消えた!」
「いやはや、悪気は無いでござる」
「ま、そのうち慣れるっしょ」
「して縁殿、準備はいいでござるか?」
「ああ、行ってくるよ」
縁は迷う事なく何処かへ歩く、村の中にある地下へと続く階段を見つけて降りた。
階段を下りきると、細い道が続いていて明るい部屋が見えた。
縁は細い道を歩き部屋へと入ると中は祭壇や御神体等があった。
「良く来たな、幸運の神よ」
「またあったな、隷属の神」
縁は御神体を見た。
「ほっほっほ、何か用かな?」
「随分と余裕だな、俺の力が干渉したはずだが?」
「ふむ、自分を神と勘違いしている馬鹿にお灸をすえてやろうかとの」
強い口調で言い放たれた言葉に縁はジッと御神体を見ている。
「それにお前さんの力なぞ、ワシには効いとらんよ? 逃がさない様にしたようだがの? ファファファ」
高笑いが地下室に響く。
「信仰心集めは勝手だがな、俺の神社に御参りしにきた少年がお父さんの無事を願っていたんだよ」
「ほう? それとワシがどんな関係があるのかな?」
「少年は神様にお願いしようとしたら、金が無いからと門前払いされたとか」
縁の声に徐々に怒りが混ざる。
「それがどうした? タダで願いを叶えられると思っている方が間違いではないかね?」
「神と人間関係がわかってないようだな」
縁のその言葉に周りの空気が変わった。
「まあいいさ、逃げないのか? 逃げるなら俺は追いかけないぞ?」
「……貴様、その口封じてくれる!」
御神体から黒い霧が現れ、それが人の形となる。
その姿は以前太陽の花を採取しようとした時に現れた神だ。
相変わらず老人の姿をして杖を突いている。
「ワシに口出ししなければ、長生き出来たものを! ワシの隷属となるがいいわ!」
隷属の神は縁に向けて手をかざすと縁に首に首輪がはめられた!
「容易いな、ほっほっほ」
「は?」
縁は首輪を容易く右手で引きちぎった。
「遊んでないでさっさと逃げた方がいいぞ? 居ると俺より怖い奴が後で来るぞ?」
「なんだ逃げてほしいのか? イキリ散らしてる割には他力本願か? フォッフォッフォッ!」
「ええ……今ので実力も計れないのかよ、まあ俺は忠告はしたからな?」
「小僧! 調子に乗るなよ? ワシは――」
「あのさ戦術として意味の無い喋りをするな」
縁は呆れた声でそう言い放つと隷属の神は見るからにブチギレ始めた!
「後悔するなよ! 小僧!」
隷属の神はかっこいいと思われるポーズをしながら縁を指差した。
「俺も若い頃こんな感じだったのかな……当時はかっこいいと思ってたんだろうな」
「かあああああぁぁぁぁぁ!!!」
隷属の神は足を踏ん張り、腰を入れ、力を解放し、膨れ上がる筋肉!
斬銀のようなムキムキマッチョマンになった。
「力でわからせてくれる!」
隷属の神は一瞬で縁の前まで来た。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
隷属の神の丸太のような右腕で縁の胸に打撃を与えた!
その速さは凄まじく縁が防御出来ない速さであった。
「うぐぅ!!」
縁は弾丸のように真っ直ぐ吹き飛んでいく。
通って来た細い道を通り縁は階段にぶつかった。
それでも勢いは止まらずに野球の犠牲フライのように空へと舞い上がる。
「……」
気を失っているのか動かない縁、今度は地上へと落ちてくる。
落下した場所は斜めの屋根に当たってまた跳ねる縁は空中に放り出される。
「うお!? 縁!?」
休憩していた風月はびっくりして立ち上がった!
「おやおや、高く上がってますな」
「ふむ、黒幕とのバトルに先手をとられたでござるか?」
「あー、ありゃ遊んでるな、兎の神様ってのは相手をおちょくるのが好きなんかねぇ」
フォルクはお茶を飲んでいる。
青桜は団子を食べていて近くに小さい水色の鯨が浮いていた。
スクワットをしている斬銀。
「みんなビックリしなさすぎじゃない?」
「ま、昔から縁を知ってるからな」
皆の落ち着き様に『なんだかなぁ』と顔に出た風月だった。