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第五話 前説 久しぶりのお知らせ

 バイトが休みの長谷川は今日もいつも通りレアスナタをプレイ。

 ただ今日は荒野原とではなく一人だ。

 受け付けを済ませ個室に入り、シートベルトを付けゴーグルを装着。


「いざ! レアスナタの世界へ!」


 長谷川はスタートボタンを押す、縁になる瞬間である。

 特にゲーム内で約束は無かったのでロビーを適当にうろつき始めた。


「今日はどうすっかな~」


 縁はロビーを見回すと今日も大盛況である。

 ロールとシナリオの確認、反省会をしている人達、待ち合わせをしている人と様々だ。


「お、縁じゃないか」

「む?」

「久しぶりだな、ウイッス」


 縁に話しかけたのは、上半身が裸で下半身が鎧でちょいワルオヤジを目指したような顔と髪。


「こんにちは、斬銀さん」

「これから始めるのか?」

「はい、って言っても何するか決めてませんが」

「今日はあのトライアングル持ったのキャラクターと一緒じゃないのか?」

「ああ、スファーリアさん? 今日は一緒じゃないですよ」

「そうなのか」

「てか何で一緒だと?」

「ロビーとかフレンド一覧のシナリオパーティー中とかで一緒居るのをよく見かけたからよ」

「そんなに一緒に居た……かな?」

「故にちょっと話しかけずらかったり」

「そんな気にしないでくださいよ」

「そうか、だったら遠慮なく声かけるぜ」

「はい」

「んじゃテキトーにぶらついてシナリオを探すか」

「そうしましょうか」


 2人は目的も無く歩き出した。

 しばらく歩いていると。


「お、縁さんじゃないっすか」

「おお! 縁ちゃんじゃないか!」

「本格的に復帰した初日に縁ちゃんとは、運がいいですわ~」


 縁は3人に話しかけられた。


「ん?」

「おや?」

「あらま」


 一人は風月。

 そして中年女性和風剣士とサングラスはスタイリッシュで他が和服な初老の男性。


「モテモテな縁さんであった」


 風月は笑って縁の肩をペシペシと軽く叩いた。


「久しぶり、風月さん」

「お久しぶり~元気してた」

「はい」

「よし風月さんの挨拶は終わったから、どうぞ」


 そういうと風月は斬銀と世間話を始めた。


「マジで久しぶりだな、縁ちゃん」

「フォルクさん、元気でしたか?」

「ああ、一番下の子供が高校生になったからね、子離れついでに本格的に復帰さ」


 フォルクという男性キャラクターは、白髪混じりの黒髪と長いヒゲ。

 世直しの隠居が着ていそうな和服と杖を持っている。


「復帰初日に縁ちゃんと鉢合わせるとはね、運がいいですわ~」

「青桜さんお久しぶりです」


 青桜は薄い青色の髪に青色の桜の模様がある、着流しを着て左腰に青色の刀をさしている。


「縁ちゃん、元気してた? 彼女できた?」

「そいや昔『女なんざ桜の種類以上居るんだから、ときめきな!』と、思春期の俺に言いましたね」

「いや縁ちゃん、貴方昔っから浮いた話の一つも無かったじゃん?」


 青桜はペシっ! とおばさん叩きで縁を叩いた。


「まあそれは置いといて縁ちゃん、良かったら一緒にどうだい?」

「いいですよ」

「俺達も混ぜてくれよ~」

「そうだ~混ぜろ~」


 風月と斬銀は両手を上げ下げして抗議をしている。


「もちろんだ、シナリオはこれ」

「フォルクさん、パーティー組んでないですよ」

「おおお、復帰早々やらかしたな」


 フォルクは笑いながらメニューを操作してパーティーを編成して、パーティー全員にシナリオを提示した。



『シナリオ悪人襲来?』


 村が悪質な強盗団に占拠された? 救え!



「シンプルだな、俺の筋肉のように」

「あたしは構わないよ、悪人はせいぶぁいだ~」

「フォルク、始める前に自己紹介しなきゃ」

「ああ、そうだな」

「では私から、衣通姫そとおりひめ青桜だ」

「質問」


 風月が手を上げた。


「その刀って『武器コントローラー』っすか?」

「ああ、そうだ」

「ほ~なるほど」


 武器コントローラーとはプレイヤーが実際に剣や刀等の武器を振り、それがゲームに反映される。

 出た当初は人気が高いのだったが、実際に振るとなると色々問題がある。

 コントローラーの制作費もだが、使用出来る店舗や条件が限られプレイ料金の他にも保険料等も払わなければならないため、一部の層にしか人気は出なかった。


「姫さんの実力はどうなんすか?」

「見てみるか?」

「お願いしまっす~」

「ま、お遊び程度に」


 青桜はゆっくりと右手で刀を抜いた、矛先だけ、鞘に隠れていて完全には抜いていない。


「むむ?」


 風月は動こうとすると『シャ!』っと、何かが風を斬る音がした。


「満足したかな?」


 ニヤリと笑い刀を両手で持っていた。

 刀の矛先は風月の首を捕らえておりゲームでは味わえない『速さ』があった。


「死なないけども、怖いっすな」

「いやいや、失礼」


 青桜は刀を納めた。


「おお納刀が綺麗だ、マジで何か武術やってる人だな」


 斬銀は感心した目で青桜を見た。


「まあな」

「お前のデモンストレーションは長い! 俺はフォルク・スワーだ、あ、名前がフォルクで名字がスワーな」

「あたしは風月です、よろしく~」

「俺は斬銀だ」


 風月と斬銀は軽くお辞儀をした。


「挨拶したしロール開始しようぜ」


 フォルクはベルを取り出した。

 このベル、正式名称『開始宣言確認の鐘』は運営や手伝ってくれるプレイヤーに開始宣言を通知する鐘なのだが名前が長いのでベルと呼ばれている。



「フォルクさん、流石に出だしは考えないと」

「縁達は開始地点で待っててくれ」

「わかりました、雑談でもしてます」

「後は流れだな」

「はい、了解です」

「じゃ、始めるぜ」


 フォルクはベルを鳴らすと光に包まれその場から消えた。

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