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第四話 演目 唸れ必殺!スーパーサンダービックバン!

 試合が始まるまでにスファーリアは浴びるように酒を飲んでいた。


「うひひひ、楽しい~」

「おいおい酔っぱらってるじゃないか」

「んあ? 酔っぱらってないですよ?」

「ほんとか?」

「さっき言ったでしょ? 音人は音を栄養としてるって」

「確かに言ったけども」

「楽しい音は心を楽しくさせるの」

「ああ~なるほど」

『みんな! 待たせたな! これから三輪車バトル! 高校、高等部部門を始めるぞ!』


 三輪車ファイターの言葉に盛り上がる会場!


「あれ? 今更だが防音になってると思ってた、歓声とかは聞こえるんだな」

「簡単に言えば各席から発せられた歓声や特殊なマイクは通す」

「そいやこの部屋スピーカー無いな」

「技術の進歩」

『まずは選手の紹介だ! 一番コースは、桜野学園高等部一年生! 近未来ひかり君だ!』


 会場に歓声が上がると共にひかりが派手な演出と共に直線コースのスタート地点に現れた!

 服装は自分の名前が入った競輪選手が着るユニフォーム。


「ハロー! 近未来ひかりだよ!」


 ひかりは観客に向かって手を振った。


『ひかり、マイク入ってないぞ?』

『小錦! こっそり教えて!』


 会場は笑いの渦に包まれる。


『ハハハ! そんなひかり君の三輪車マシンはサンシャイン・小錦君だ! 太陽エネルギーで動く元気いっぱいなマシンだぞ!」

『サンシャインパワー! ウェーイク! アッーープ!』


 小錦はそう叫ぶとジャンプし、空中で人型から三輪車へと変形した!

 顔が三輪車のハンドルの真ん中に付き顔も変形し太陽の形に変わる!

 ひかりは軽くストレッチした後小錦に搭乗した。


『続いて対戦相手の紹介だ! 髑髏どくろ高校三年生の石林天馬君だ!』

『イクゾコラー!』


 パララパララという音共にスタート地点付近に煙が巻きあがる。

 その中から三輪車に乗り特攻服でリーゼントの男が現れた!

 デモンストレーションと言わんばかりに自由に走り回った後、スタート地点で止まり右手を上げると会場はまた歓声を上げる。


『天馬君の三輪車マシンはファンタスティック・メルヘン・ボーイだ! 乙女心を宿したファンシーなマシンだ!』


『気軽にボーイと呼べや! コラァ!?』


 名前はファンシーだが天馬の三輪車マシンは珍走団を連想させるゴテゴテの違法改造車。


『短期決戦の勝負だ! みんな! 目を離さずに見てくれよ!? 二人は準備はいいか!? いいなら右手を上げてくれ!』


 2人は高らかに右手を上げた。


『それでは! スタートシグナルに注目だ!』

「ひかり、マイクをオフにしろよ?」

「わかってるよ」


 ひかり達の前方にスタートシグナルが現れる。

 シグナルは赤で止まっている、赤が2つあって青が1つのシグナルだ。

 ピッピッと言う音が一定のリズムで会場に響き渡る。



『三輪車バトル!』


 三輪車ファイターが叫んだ!

 少ししたらシグナルの赤が1つ進み。


『レディィィィィ!』


 ドスの聞いたジャッジ合意の声が響いた!


『『ゴー!』』


 三輪車ファイターとジャッジ合意の声と共に青が点灯した!


『ファンタスティック・ロケット・スタート!』


 ボーイが青の点灯と共に凄まじいスピードでロケットスタートをした!

 一見フライングしたようにも見えるがその勢いは凄まじいく、25メートル付近まで一気に進んだ!


『天馬君! 華麗なロケットスタートだ!』

『彼のロケットスタートはいつ見ても素晴らしいです、今回もフライングはしていません』

「小錦! デルタドリフトでチャージだ!」

「了解だ! ひかりアレをやるんだな!」


 小錦はスタート地点で三角形の形でドリフトを始めた!


『おおーっと!? ひかり君その場でドリフトを始めたぞ!?』

『デルタドリフト、この間の公式戦で編み出した必殺技ですね、太陽光をチャージするドリフトです』

「けっ! 何をするか知らんがもう終わりだ!」


 天馬は一瞬振り返りドリフトをしているひかり達を見た。


「ボーイ! メルヘンエンジンに切り替て一気に勝負キメるぞ!」

「行くぞコラァ!? メルヘンエンジン点火だ!」


 ボーイのスピードが格段に上がる! ボーイが加速すると通過した後に飴やらお菓子がバラまかれている。


『おっと!? ボーイ君が進むとそれと同時にメルヘンチックな状況になっているぞ!? そして凄い加速力だぁぁ!』

『子供好きな彼らしいエンジンですね、そのエンジンはメルヘン力を動力しているます、搭乗者、つまりは彼がメルヘンであるほどエンジンは力強さを増します』


 ジャッジ合意は冷静に解説しているが、ばらまかれたお菓子を取って食べている。


「この勝負、貰ったぁ! メルヘン最高だぜぇ!」

「ひかり! いくぞ!」

「よろしくてよ小錦!」


 ひかりはゴールに向かってゆっくりと進みだした!


「スゥゥゥゥゥゥパァァァァァ!」

「サンダァァァァァァァァ!」

 ひかりは思いっきり叫び小錦も負けじと叫んだ!


「「ビックバァァァァァン!」」


 ひかりと小錦は魂を揺るがすような叫びをした! 

 すると小錦が軌跡を描いてジグザグに進み始める!

 まさに雷が落ちるように一瞬の速さで天馬に追いついた!


「ちっ!」


 隣まで加速してきたひかり達をちらっと見る天馬。


「負けるかオラァ! メルヘンパワー全開だ!」

「こ、これは凄いぞ! スーパーサンダービックバン! 天馬君との距離を容易く縮めてしまった!」

「スーパーサンダーは雷の如く素早いドリフトの連続なのですが、そこにビッグバン、宇宙を誕生させる超爆発を加えた訳です、ノーオプションなので本来の速度ではありませんがね」

「雷の如くとどろけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「メルヘンが負けるか負けるかオラァァァァァァァァァ!」


 ひかりと天馬はほぼ同じにゴールをした! 

 小錦とボーイはタイヤ後を付けながらドリフトして制止する。


『おっと!? 同人の様に見えるが!? ジャッジ合意さんの判定は!』

『今回の勝者は……』


 会場がザワザワしている。


『天馬&ボーイペア!』


 その判定に会場が歓声を上げる!


「っしゃぁぁぁぁ!」

「メルヘン最高!」


 天馬が右手を上げたると会場が更に熱気に包まれる。


「ごめんね小錦」

「何か可笑しかったぞひかり」

「……まさか!」


 ひかりは難しい顔をしている小錦を見て何かを悟った顏をする。


『その判定少し待ってもらおう、ムーンライト』

『月光波!』


 突如謎の声が会場に響き、天から青い光が降り注ぎスポットライトの様に天馬を照らす!


『おっと!? ジャッジ合意さんの判定に意義を唱えるのは誰だ!? あそこだ!』


 三輪車ファイターが指差したのは観客席の屋根の一角、すかさずスポットライトに照らされた人物が居た!


『今の勝負に異議がある』


 その人物は高そうな和服にサングラスをした青年が立っていた、黒く長い髪の毛で風に揺られている。

 隣には小錦のようなフレームの三輪車が人型に変形して立っており、額には月のシンボルがあった。


『神聖な三輪車バトルに違法パーツを持ち込む悪しきライダー、汚れた心には神聖な場所は似合わない』


 謎の男の意義申立により会場がざわつき始めた。

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