縁達はコンサートホールの様に巨大な建物の前に転移してきた。
様々な人種の人達が行き来している中、2人は建物の入り口を目指す。
「縁君付き合わせてごめんね?」
「え? 何が?」
「いきなり呼び出してレース観戦に行こうって言ってさ」
「ああいや、俺は構わないよ」
「このチケット男女ペアなの」
「は? レース観戦なのに?」
「うん、ほら」
スファーリアは縁にチケットを渡した。
『第五回三輪車バトル近未来ひかり選手観戦男女ペアチケット』と書いてある。
「いやいやいや随分と限定的なチケットだな! てか本当に男女ペアかよ」
「その理由は解らないけども、私は親しい男性って居ないから」
「教師で仲のいいとかは?」
「居る、けど学校行事の一環でここに来たんじゃなくて個人として、それに先生として来るとお酒の飲めないし」
「ん!? 酒!?」
予想外の発言に足を止めてスファーリアを見た!
「そうお酒、てか何に驚いてるの?」
「確か生徒さんが参加する大会だよな?」
「高校の大会じゃなくて今日は一般の大会」
「ああそうか、学校行事じゃないって言ったもんな」
「うん」
「ふと思ったんだが」
「どうしたの?」
「人の行き来が多いけどさ、色んな大会出来るほどこの建物は大きいのかなと」
「この建物の入り口が転送装置になっていて、チケットで判別して各会場の観客席に転送されるらしい」
「ほ~なるほど便利だな」
「じゃあ入り口に入ってみようか」
「ああ」
2人は小走りで出入口に向かい、一歩建物内に入った瞬間に景色が変わる。
まず目に移ったのは巨大な競技場で中央にはレース用のコース。
周りを見回すとガラス張りの部屋に長時間座っていてもリラックス出来そうなイス。
テーブルにタッチパネルのタブレット、トイレまである。
「なんだなんだ、なんかすげーな」
「特等席」
「おお、特等席とな?」
「普通の席だとガラス張りでイスとトイレしかない」
「このガラスはかなりの強度があるな、並みの……いや、強力な魔法も防ぎそうだ」
縁はガラスを裏拳で軽く叩いた。
「私の演奏術でも無理」
「壊そうとしたのかよ」
「学校の実技教室のガラスもこれと同じ素材だから」
「ある意味安全性はお墨付きか」
「試合開始までのんびりとしてましょ」
「ああ、そうだな」
席に座った直後にスファーリアはタッチパネルに手を伸ばす。
「うーむ、流石に無料じゃいいものは無いか」
「食べ飲み無料なの?」
「うん、そこの魔法陣が書いてるテーブルが受け取りと返却口」
「ほう? 便利だな」
スファーリアが指さした方向に受け取り返却口とプレートが張ってるテーブルが置いてあった。
「うん、ここよりいい席はいいもん食べ飲み出来る」
「いい物食べたかったら高級店にでも行こうぜ」
「あらあら、デートのお誘い?」
「言葉って難しいな」
「あ、
「音菓子?」
「噛むと色んな音が出るお菓子、
「音人?」
「あれ? 縁君に説明してなかったっけ?」
「忘れてるな」
「簡単に言えば音で身体を構成してる人の事」
「ほ~それは珍しい」
「……信仰心で実体化する神様には言われたくない」
「俺は半分人間だが、これは手厳しい」
2人は笑いあいながらタッチパネルを操作する。
『さぁ! みんな観戦休憩中の所悪いがここから観戦する人の為にもう一度自己紹介させてもらうよ!』
競技場の中央に平たい円盤が現れ、それに乗っている人物がマイクを使って喋っている。
『僕は三輪車ファイター! 三輪車バトルの実況なら任せてもらおう!』
その人物はツンツンヘアーでキリッとした目と熱さを感じる眉毛。
服装はF1選手が着るようなスーツを着用して、スポンサーのような名前が沢山はってある。
『ルールは50メートル一発勝負、レギュレーションはオートAI、必殺有り、ノーオプションバトル! そしてジャッジはこの人だ!』
『この勝負、ジャッジ合意が審判を務めるさせていただきます!』
初老でレフリーの制服を来た男性が光に包まれて三輪車ファイターの隣に現れた。
「うーん、自分の知らない競技って説明されてもわからないよな」
「縁君、簡単よ?」
「お?」
「頑張っている人達を自分の物差しで罵倒しない、これだけで物事は楽しくなる」
「先生にそう言われると説得力はあるが、なんか違わないか?」
「むぅ、ドヤ顏しっぱい」
「したかったのかよ」
その時、魔法陣が書いてるテーブルから軽やかな音楽が流れた。
2人が頼んだ物が魔法陣からあらわれる。
「ささ、試合開始まで飲み食いしてましょ」
「本当にお酒たのんでるし」
「ふふふ~ん、私はのんべぇ」
縁は食べ物と飲み物を移した。
その瞬間スファーリアはお酒を飲みだす!
「悪酔いだけはしないでくれよ」
試合開始までの2人のちょっとした飲み会が始まってしまった。