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第三話 演目 絆の日常茶飯事

「あらあら? お兄様妬けますわね? あの方を『お義理姉様ねえさま』と呼んだ方がいいかしら?」

「彼女は可能性を言っただけだろ」

「あら? お兄様好みの落ち着いた女性ではありませんか?」


 絆はニヤニヤしながら、ここぞとばかりに縁に言葉のちょっかいをかける。


「その話がしたいなら後だ、今回は何だ?」

「何時ものですわお兄様? 『お前は不幸の神なんだから退治しなければ』と、お馬鹿様達が私を殺しにか封印しにきましたの」

「ええ? 今時不幸の神殺せば世の中から不幸が無くなるとでも思ってんのか?」

「それは知りませんが、敵は若い青年が3人組で何やら転生者らしいですわよ?」

「転生者? なんだそりゃ?」

「神の気まぐれやミスで死んでしまった人達が別の世界からこの世界へと転生した人達ですわ」

「ほう? 最近はそんな奴らが居るんだな」

「付け加えますと、神はお詫びに強力な力と共に転生させる、もしくは転移させるらしいですわよ?」

「んん? どれくらいの力を貰えるんだ?」

「『説明好きな彼女』から教えてもらいましたが……そうですね、本気を出したお兄様以上の力を貰ったとか」

「はあ!? ちょっと待て普通の人間がか?」

「ええ、聞いた限りではほとんどは普通の人間ですわ」

「どんなからくりなんだ?」

「ですからそのもの達の後ろに居る神を引きずり出そうかと」

「だから俺の所に来たのか」


 絆が何かを察知したかの様に空を見上げた。


「お兄様そろそろ来ますわ、可哀想なほど不幸な気配が近寄ってきますもの」

「何だ? この有り得ない幸運は馬鹿か? 俺を超える幸運とは……な」

「ですが所詮は他者に与えられた力、生まれ持ち努力した我々の敵ではないかと」

「ああ、そんな奴らに負けてたら神失格だ」


 縁は眉間にシワをよせた。

 光に包まれて、見るからに若い3人組がいきなり現れた!

 槍を持ち学生服にマントを羽織っている人間。

 軽装備の剣士の姿をした人間。

 魔導師のような格好人間。


「居たぞ! そこだ!」

「ああん? 何か一人増えてない?」

「スバルフあのジャージ男を魔眼で調べてみてくれ、レベルはいくつだ?」

「ああ、叢雲任せたまえ」


 縁を見るスバルフの目が一瞬赤く光る。


「やれやれ、運は測定不能だが他がお粗末でレベルもお粗末だ」

「ならついでに狩っときゃいいんじゃね? 討伐対象の仲間だろ」


 学生服マントはやる気満々で長い槍を構えた、現れた三人は他にもなんだかんだと好き勝手色々と話している。


「絆」

「どうしました? お兄様」

「転生者ってこんな奴らばかりなのか?」

「ええ、滑稽でしょう? 笑えてきますわ」

「ああ、こいつらから身の丈にあった幸運を感じない」


 縁は眉間にシワを寄せ、絆に近寄り自分の鞄を絆に渡し殺意の有る目で三人組を見た。

 絆は手で口を隠して笑いをこらえている。


「少々『お話』したくなった」


 縁は絆を討伐しようとする輩に近寄っていく。


「何だ? アンタは」


 軽装備の剣士が話しかけてきた。


「俺は縁、そこに居る絆の兄だよ」

「ハッ! だったら一緒に討伐してやるよ!」


 学生服マントは槍を構えて突撃してきた!

 ただ、槍の構え方がお粗末だった。

 矛先を相手に向けて、勢い良く突撃するのかと思えば、バットのように持って突撃してきたのだ。

 ハンマーならまだ理解出来るが、長い槍でそれをしている。


槍術ランススキル! 紅蓮之型フレイムモード! 紅蓮之舞フレイム・ド・ライブ!」


 学生服マントは一回転して槍を振り払った、走る勢いと回転する勢いで風を起こす。

 槍が光、矛先から燃え盛る炎が燃え盛る!

 その炎を縁に向かって風と共に放った!

 特に回避や防御の構えをしていない縁に炎と風が縁に襲いかかる!

 縁は風に切り刻まれ炎に身を焼かれるのであった。

 そのまま倒れた縁は可燃物のように全身が燃えている。


「へっ! 楽勝だな!」


 学生服マントはニヤリと笑い余裕綽々で、自分の仲間の方へと戻る。


「ヤマト! 後ろだ!」

「何だ? 叢雲そんな声だしてよ」


 縁を攻撃したヤマトはニヤニヤしながら振り向くと。


「っ!? なぁ!?」


 ヤマトが振り向くと縁は真後ろ居て互いに目が合う。

 縁は無表情でヤマトを見ていて何処も燃えておらず平然と立っていた。


「……この程度で俺を殺せると思ったのか?」

「なっ!?」

「どうした? 殺さないのか?」


 突然の出来事に対処出来ないヤマト。


「ちっ! 俺の技をくらって生きてるとはやるじゃねーか!」


 ヤマトは冷静さを取り戻し仲間の方へとジャンプして縁から距離をとる。


「だが! 次はそうはいかねぇぜ!」

「お前らは『会話』すら出来ないのか?」


 縁は無表情でだが目は哀れむように3人組を見ている。


「なあ、聞かせてくれないか? 妹が何故襲われなきゃならんのだ?」

「ああん? 討伐の依頼がギルドに有ったからだよ、詳細もちゃんと読んだぜ?」

「依頼の詳細は知らないが『理解して依頼を受けた』と解釈していいんだな?」


 縁はウサ耳カチューシャに手をかけた。


「やれやれ、頭の悪そうな貴方に説明すると『貴方の妹の存在自体が世界に邪魔』……この説明で理解出来ますか?」

「じゃあ殺しあおうか」


 スバルフはメガネをクイッとした。

 縁がウサミミカチューシャを外そうとしたその時!


「ぶぁはっはっはっはっは! ひはははは!!」


 いきなり少々下品な笑いが辺りに響き渡った。

 場所は縁から見て後方の木の上からその笑い声は聞こえた。


「そんな小さい理由で俺の妹分を殺そうってのは……笑えるぜ!」


 その人物は木から降りてきて縁達に近寄ってきた。

 赤い髪で見た目で気前の良さそうな中年男性、服装はジャージで色は赤。

 ジャージの上から腕輪をし、指には色々なデザインの指輪をしているが左手の薬指には指輪をしていない。


「ったく縁、気持ちは解るがそんな顔しちゃだめだぜ? こんなちぃせぇ奴ら相手に本気を出そうとすんなよ」


 中年男性は縁の肩に手を置いた。


「誰だお前」


 縁のその言葉に中年男性は見事な足ズッコケをしたのだった。

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