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VRゲームでも運と愛し合おう!
藤島白兎
ゲームVRゲーム
2024年08月01日
公開日
235,781文字
連載中
演劇型オンラインゲーム『レアスナタ』
このゲームを中学時代からプレイしていた長谷川羽島は、正式版の稼働を楽しみにしていた。
ここまで彼がレアスナタに固執するのは、このゲームが彼を救ったからだ。
中学時代、当時の友人達と人気オンラインゲームをしていた。
それなりに楽しんではいたのだが、事件が起こる。
自分のアイテムを馬鹿にされ、友人達や周りのプレイヤーの会話も、罵倒や下ネタだらけでネットマナーも欠片も無かった。
友人に嫌気が差して縁を切りゲームも辞め、その後親戚からレアスナタを進められる。
レアスナタは個人情報をしっかりと登録しないと出来ないゲームであり、一度アカウント停止されると復帰は出来ない。
そして運営がネットマナーを徹底し、プレイヤーもまたお互いが気を使いゲーム内の空気が凄くいい、こうして彼はのめり込むのだった。

成人してからも仕事をして、休日にはレアスナタをする、そのサイクルが変わる事は無かった。
しかし、一つの出会いがそのサイクルを徐々に変えていく。
同じ職場の荒野原終と意気投合、彼女も中学時代からレアスナタをプレイしていた。
仕事帰りや休日に良く遊ぶ様になり、2人の時間が増えていく。

最高の仲間達と共に最高の舞台を作ろうぜ!

残酷、暴力はゲーム内の演出です。
性描写はキャラクターの設定やセリフ回しで匂わす程度です。

第一話 前説 正式稼働と受付のお知らせ

  『レアスナタ』


 このレアスナタとはこのゲームの語源の一つで役割、つまりはロールを意味するらしい。

 レアスナタをプレイするための施設の名前はレアスナタゲートと言う名前でありレアゲと省略されている。


 受け付けの近くに置かれているベンチに座っている白いジャージの男性が居た。

 レアスナタの正式稼働版パンプレットを見ている。

 少し大きめの鞄を近くに置いている男性は、少しだるそうな顔をしてパンフレットのページをめくっていた。


 「正式稼働後少したってからロビー実装か……時間かかったな」


 男性が見ているページには『全プレイヤーが来ても大丈夫!』と、でかでかと書いてありロビーの写真も載っている。

 写真には受付のようなカウンター、ベンチ、時計などがあり大きな公園をモチーフにした言ってもいい作りだ。

 次のページを開くと『簡単に解説レアスナタとは』のタイトルが目に入った。

 ふと眉の水色の箱とピンク色で赤いリボンをした箱のキャラクターが会話をしている。


 『レアスナタはパソコンやゲーム機でも出来るゲームだけど、一番の持ち味は仮想現実での演技にあるっすよ! 施設の紹介をちょっとだけするっす!』

 『基本設計は横、縦、高さが10メートルで作られた箱のような物に入りプレイするレア、箱の中は少し薄暗く青色の壁におおわれているレア』

 『中央には中吊りになってる専用のシートベルトがあってそれを体に固定するっす、正しく固定すればゴーグルが降りてくるそのゴーグルを装備しゲーム開始っす!』

 『長時間のプレイに対しても設計されているレア、シートベルトの固定方法を変えると椅子に座ったような姿勢でプレイ可能レアよ』

 『ゲームパットやキーボードも邪魔にならない形でシートベルトについているっす、料金プランで中に色々なオプションがついたりもするっす!』

 『詳しくしりたいお友達は公式ホームページにアクセスレア!』


 そのページを見終わりフッと笑う男性。


「レアスナタがやっと正式稼働か、βテストを念入りに5年でαは何十年ってやってたらしいが」


 男性はそう言いながポケットに入ってる財布を開き、レアスナタバージョンβと書かれたカードを出した。

 このカードは『森山ボックスメンバーズカード』といい正規の手続きをしたプレイヤーに渡される物だ。


「お待たせいたしました、番号5番のお客様こちらへ!」


 剣士のコスプレをした店員は営業スマイルで男性に微笑みかけた。


「あれ? 早かったな」


 男性は受付へと移動する。


「ご来店ありがとうございます! 森山ボックスメンバーズカードとご本人が確認出来る顔写真入りの身分証はございますか?」

「はい」


 男性は身分証とメンパーズカードを提示する。


「β版から正式版データを移動なさいます、よろしいですか?」

「お願いします」

「β版から正式版へ移動なさるお客様は正式版キャラクターカードは無料でお作りいたします」

「お手数ですが、こちらにお名前とキャラクター名をお願いいたします」


 登録用紙を店員は出し男性は名前を書く。

 名前の長谷川羽島はせがわはじま

 キャラクター名はえにしと表記した。


「では長谷川様、本日のコースはどうなさいますか?」

「3日間パックで部屋はVIPルームでお願いします」

「3日間パックですね? VIPルームのご利用は初めてですか?」

「はい」

「当店のVIPルームは1日3回食事オーダーが無料になります、それ以外は料金が発生しますのでご了承下さい、ドリンクはドリンクバーがお部屋にございます、ご自由にお使い下さい」


 店員はファイルを開いて長谷川に見せる。

 ファイルにはVIPルームの部屋の写真と備え付けられている物が載っていた。


「VIPルームにはベットがございますが、VIPルームをご利用のお客様は寝具の貸し出しは無料でお使いいただけます、寝袋、座椅子、ソファー、洗濯機、布団各種取り揃えております、またお風呂もお部屋にございます」


 店員は写真を指さしてハキハキと喋って説明をしている。


「シーツの取り換えや清掃のためお客様の部屋に入る事がございます」

「何かホテルみたいですね」

「はは、よく言われます、温泉が名所のゲートには源泉かけ流しの施設もありますよ」

「お、温泉?」

「ええ、ゲームが終わった後の大浴場や露天風呂はいいものですよ、はぁ……またいきてーなぁ」


 幸せそうな溜め息をするが直ぐにハッとして少し恥ずかしそうにする店員。


「し、失礼しましたゲーム中の場合はメールで清掃等をお知らせいたします」

「いえいえ」

「お手数ですがVIPルームに置いてあります注意事項をお読み下さい」

「わかりました」

「3日間パックでVIPルームのご利用だと、前払いで3万円になりますがよろしいですか?」

「これ使えますか?」


 長谷川はクーポン券を出す、それには『一回限りの正式稼働記念で半額券!』と書かれている。


「はい、お使いいただけます! 半額になりまして、1万5000円になります……はい、丁度頂きました、レシートのお返しです、お待たせいたしました! レアスナタの世界へ行ってらっしゃいませ!」


 店員は受付横のゲートを開き、お辞儀をする。

 長谷川はゲートを通り、VIPルームへのエレベーターへ向かう。

 歩いていると盗賊風味のコスプレをした人が居た。


「長谷川様ですね、VIPルームまでご案内いたします」

「お願いします」


 男性店員は深々とお辞儀した後、長谷川も軽くお辞儀をする。

 VIPルーム行きのエレベーターに乗り、部屋の前までまでついた。


「こちらでございます」


 係員が部屋を開ける、そこに広がっていたのは、広い部屋、高い天井、ふかふかなベット、ドリンクバー、大きなテレビ等々、まさに至れり尽くせりのVIPルーム!


「ご用がありましたらお呼び下さいませ、では失礼します」


 係員はお辞儀をして出て行き、長谷川は絶句している。


「空気に圧倒されたが俺はゲームをしに来たんだ、早速着替えだ!」


 気合いを入れるように顔をペシペシと叩く長谷川。

 鞄からジャージを取り出し着替え、ゲームルームのプレートが貼ってある扉を勢いよく開けた!


「ひろ! 馬鹿じゃねぇの!? てかこれを独り占めか……」


 学校の教室二つ分はある広さで部屋の中は映画館のように足元を照らす明かり。

 長谷川は中央に行き宙吊りにされたシートベルトを体に装着する。


『シートベルトの正常装着を確認、ようこそ! レアスナタの世界へ! ゴーグルの装着が完了いたしましたらスタートを押して下さい!』


 アナウンスと同時にゴーグルが降りてきてそれを装着する長谷川。

 スタートと書かれたボタンが目の前に現れる。


「行くぜ! レアスナタの世界へ!」


 長谷川は両手を広げて無駄な決めポーズをし後、スタートボタンを押した。

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