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第14話『アイリの未来と、ディアの未来』

それから、少し先の未来。


アイリとディアは結婚してからも、変わらず魔界の城に住み続けている。

それはアイリの『王女』という立場、そしてディアの『魔王の側近』という立場から、自然な流れだった。

愛娘と離れたくない魔王にとっても、ディアはアイリの理想の相手なのだ。




その日、アイリとディアは二人の子供を連れて、魔獣界に来ていた。

……というか、子供たちに連れてってと、ねだられたのだ。

今では魔界と魔獣界の城は転移魔法の扉で繋がれて、簡単に行き来できるようになった。

魔界の城にある専用の扉を開けると、そこは魔獣界の玉座の間へと繋がる。

そこではエメラが待っていた。


「お待ちしておりました。魔獣王ディア様、王妃アイリ様、王子様に王女様」

「エメラさん、こんにちは!ごめんね、急に」

「お邪魔いたします」


ディアは魔獣王なのだから、その挨拶は変だ。

すると、男の子の方がアイリから離れて駆け出す。


「エメラお姉ちゃん〜!!」


そう言ってエメラに抱きついた、ディアにそっくりの、3歳くらいの男の子。


「まぁ、アディ様。お元気でしたか?」

「うん!あのね、ボクに空の飛び方教えて!あとお勉強も!」

「勉強熱心ですのね。偉いですわ、アディ様」

「うん!はやく大人になってボク、エメラお姉ちゃんをメトるの!」

「まぁ……」


ディアにそっくりなイケメン男児にプロポーズされて、エメラはまんざらでもない。

もう一人の、アイリにそっくりの3歳くらいの女の子は、アイリにくっついたままだ。


「ママ〜!アタシもレイトに会いたいよ〜!!呼んで〜!!」

「えぇ?もう、イリアったら……レイトくん、お仕事中だと思うけどなぁ」

「仕方ないですね、呼びましょう」


イリアが駄々をこねだしたら止まらないのを知ってるディアは、携帯通話機を使ってレイトに連絡した。

するとすぐに転移の扉が開いて、レイトが現れた。


「レイト〜〜!!」


イリアは飛びつくようにしてレイトの腰にダイブした。


「わっ……イリア王女、今日も元気だね」

「レイト、アタシに空の飛び方教えて!絵本読んで!勉強も教えて!」


イリアは明らかにアディに対抗しているようだ。


「あはは、今日も注文が多いなぁ」

「これはメイレイなの!レイトはアタシのダンナになるの!だから、ずーっとアタシのシモベなの!」

「イリア王女、それ怖いから……」


アイリにそっくりな可愛い女児にプロポーズされて、レイトはまんざらでもない。


アイリとディアの間に生まれた子供は、双子の男女。

とは言っても、二人の外見は全く似ていない。


兄のアディは、父のディアにそっくり。

妹のイリアは、母のアイリにそっくり。


親にそっくりなのは、見た目だけ。

魔獣王子・アディは明るく積極的で、魔獣王女・イリアは強気で活発。

二人とも魔獣の希少種『バードッグ』特有の、金色の瞳を持っている。


アディとイリアは、悪魔と魔獣、2種族の血と性質を完璧に兼ね備えている。

悪魔の羽根もあるし、魔獣の姿にも変身できる。

悪魔の王族の血筋も、魔獣バードッグの血筋も、最強の魔力も。

すべて薄れる事なく完璧に受け継いだのだ。


将来、アディはエメラと結ばれそうな気がするし、イリアはレイトと結ばれそうな気がする。

長寿の悪魔と魔獣だからこそ成せる、世代を超えた奇跡の巡り合わせ。

悪魔の王族の血筋も、魔獣バードッグの血筋も。

これからも途切れることなく、永遠に繋がっていくのだろう。


いつか、この魔獣界も……

魔獣王アディと、王妃エメラが治める日が来るのだろう。


そして、アイリとディア。



「アディもイリアも、将来が楽しみだね」

「そうですね。私も楽しみです」





悪魔の王女と、魔獣の側近。


これは、前例のない禁断の恋が成就し結ばれた、奇跡の物語。





そんな二人と家族の愛は、これからも永遠に続いていく。



—完—

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