二十分後、車から降りると、目の前には大きな五階建ての重厚感のある建物がそびえたっていた。えっと。てっきりご飯を食べに行くものだとばかり…。そう思った矢先、
「言い忘れたが、私は秘密警察の
「ひ、秘密警察?」
唐突な言葉に驚く私。そこへすかさず、カラスのヤトが突っ込む。
「え!?まだ話してなかったの!?」
「話そうと思ったら君が来た」
私はまじまじと建物全体の一階から屋上まで見る。屋上には大きな旗。すっかり暗くなって、どんな旗なのかはわからないけど。
「ちなみに、ヤトも私の仲間だ。情報収集や凪の護衛を担ってくれている」
はにかむヤト。足でゴシゴシと頭をかく。
「はあ」
話を聞きながら、私は力なく
すると、焔は運転席のグローブボックスを開けてドライフルーツを取り出し、ステンレスのボウルにザラザラと入れ、ヤトの前に差し出した。
「君はここでお留守番だ」
ヤトは一瞬嬉しそうな顔をするが、すぐに不服そうな顔で焔を睨む。
「君の好きなイチジクのドライフルーツ、入れておいたから」
ヤトはプイッと横を向いて、それなら仕方ない、という表情を浮かべて焔を見つめる。
「一時間ほどで戻る。行くぞ、凪」
そう言うと、焔は運転席の扉を開けて外へ出る。私も三秒ほど遅れて外へ。前方を見ると、すでに焔は歩き出している。私は小走りで、焔を追いかけた。
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サーっと自動ドアが開き、私は秘密警察の本部に足を踏み入れる。高い天井、館内の奥には大きな掛け時計と円形のエンブレムが飾られている。
エンブレムには「SPT」の文字。
「SPT…?」
「秘密警察『Secret Police Taskforce』、通称『SPT』だ」
私は息を飲んだ。なんか、ドラマでしか見たことないけど、アメリカのFBIとか、CIAみたいな感じだ。なんとなく、格好いい…。呆然とエンブレムを見つめる私を気にも留めず、焔は話を続ける。
「あんなことがあったばかりだし、外は危険だからな。ここの食堂で食事でもしながら、詳しく話そう」
そう言うと、焔は再び
十分後。私は広々とした食堂の窓際のテーブルにちょこんと座っていた。
窓からは美しい夜景が見える。
焔はこの世界が私にとってのパラレルワールドだと言っていた。それに、さっき私を襲ってきた黒装束の小男。あの男は、確かに私を「幸村凪」と呼んだ。
どうして、私を知っているんだろう?
一体何が起きているんだろうか?
「待たせたな」
窓から前方に視線を移すと、片手に二枚ずつ器用に皿を乗せた焔が立っていた。ウエイトレスさながらの仕草で、丁寧に皿をテーブルへと置く。
ハンバーグ、野菜サラダ、ハーブが乗ったチキングリル、コンソメスープ、チーズフォンデュ、フルーツ盛り合わせ…。レストランのような豪華な料理の数々を見て、私は思わず声を上げた。
「え?あ、あの」
「足りないか?」
「…いえ、十分です。ありがとうございます」
私は会釈をする。
「そうか」
素っ気なく腰を掛けると、焔はいよいよ本題について語り始めた。