残る大型魔獣2匹のうち、北側にいる大型魔獣をやっつけるべく僕とソルさんは
「いいですかグラッジ様、
ソルさんは出来るだけ分かりやすく
仮に成功しても自分の目の前で超爆発が起きる事になり、上手く処理しないと自分自身も怪我してしまう技のようだ。
僕は仮に暴発してもいいように指と同じぐらいの小さいサイズで火と氷の剣を作り出し、小規模な
20回以上トライしてみたものの結局1度も成功する事がないまま僕とソルさんは北エリアに着いてしまう。そこにはさっき戦ったゴーレムをそのまま銀色にしたような魔獣が西エリアと同じように城壁へ突進を繰り返していた。
城壁を見る限り、かなり亀裂が入っているようだ。これ以上突進されると穴が空いて魔獣の侵入ルートを作らせてしまう。僕は一旦、
「ソルさん、今は上手くいきそうにない
「イチかバチかよりも確実にダメージを与えられる技を当てた方がいいのかもしれませんね……無理を言ってすみませんでしたグラッジ様。再び我々の息の合った連携をみせてやりましょう!」
僕とソルさんは互いに目でタイミングを取り合い、西エリアでの戦いと同様に
僕とソルさんはこの1撃で決めるつもりで鞘から豪風の刃を抜き放つ。
「「
僕達が生み出した2つの刃は、さっきの戦い以上に鋭くゴーレムの額を削り取る。このまま倒れるか、もしくは西側のゴーレムと同じように反転して同士討ちをしてくれればと思ったが、こっちのゴーレムは手で額を抑えたまま子供の様に地団駄を踏み始めた。
「う、うわぁぁ!」
超重量が生み出す連続の踏みしめは爆発音に似た音を放ちながら地震を起こし、思わず僕は声をあげて驚き、尻もちをついてしまう。
そんな僕を遥かに高い位置から見下ろしたゴーレムは止まりもしなければ暴走して同士討ちをすることもなく僕の真上に右腕を掲げる。そして、そのまま左腕を右腕に叩きつけて砕き、大量の岩を僕に目掛けて滝の様に放出する。
ただ岩が落ちてくるだけなら弾き飛ばす事も出来るけど落ちてきている岩はゴーレムの魔力も宿っていて頑丈かつスピードが乗っている。
急いで立ち上がっても避けられそうにないと思った次の瞬間、ソル兵士長が2本の風の双剣を作り出し、まるで舞をしているかのように岩を1つ1つ弾き飛ばしてみせた。
その姿は豪快でお堅い印象がある兵士長としてのソルさんとはかけ離れている。僕が小さな頃に憧れたソルさんとはまた違うカッコよさがあった。双剣も左右で長さも太さも違っていて、その違いが舞いに一層メリハリをつけているような気がする。
ゴーレムの放った岩が次々と轟音をあげながら横の地面に弾き落されていくのを見る限り腕が砕けたゴーレムは戦力がガタ落ちしている。倒しやすくなったのではないか? と思ったけれど僕の考えは甘かった。
ゴーレムは地鳴りのような咆哮をあげると肩の部分を白く発光させて地面に落ちた大量の岩を再び自身の体にくっ付け始める。肩から肘、肘から手へと接続していき、あっという間に元の状態へと戻ってしまったのだ。
幸い額の傷は修復できていないものの、それでも腕を回復したゴーレムの方が僕達よりもずっとアドバンテージがある。現に大量の岩を風の剣舞で防ぎ切ったソルさんは肩で息をするほどに疲れ切っている。
ゴーレムは真下にいる僕達を睨んでいる……復活させた腕で再び岩の雨を降らしてきそうだから逃げるか防御するかしなければ! だけど、ソルはさんは疲弊していて、もう1度防げそうにもないし走れそうにもない。僕が守らなければ!
僕はこの窮地をどうすればいいのかを考えていた。振ってくる岩を
こういう時こそソルさんの剣舞のような力を受け流す技が有効なのだろう。左右で長さの違う
僕は危機的状況にも関わらずそんなことを考えてしまっていた。すると僕の脳へ、まるで雷でも落ちてきたかのように突然1つの記憶が弾けた。それはお爺ちゃんが少しだけ見せてくれた
あの時、お爺ちゃんは先に氷の剣を丁寧に作り出してから火の剣をサッと取り出して
僕なりに結論を出して
そんな時に1度も成功経験の無い技を試すなんて、どう考えても馬鹿げている。それでも横にいるソルさんは不安1つない笑顔で応援してくれた。
「グラッジ様なら確実に成功できます、頑張ってください!」
そんな顔をされたら何が何でも応えたくなってくる。僕は右手に火の魔力、左手に水の魔力を溜めると、お爺ちゃんの
「え? 槍?」
ソルさんが口を開けて驚いているが、これが僕の編み出した答えだ。細長い槍は体積の調整がしやすい。そして得意な水属性の槍は自然と魔力が強くなってしまうから、その分長さを短くして、火の槍は逆に長くすることにした。
昔、お爺ちゃんは剣の腹と腹をぶつけて
僕は獲物を狙う鷹のようにゴーレムの胸の辺りを凝視し、2本の投擲槍を同時に投げる。
「これが僕なりの
僕の投げた2本の槍が合掌するかの如く吸い寄せられてゴーレムの胸部で衝突する。その瞬間、顔の皮膚が後ろに引っ張れているかのような凄まじい爆風と爆音が起こり真下でいた僕とソルさんはたまらず両手足を地面についた。
1秒にも満たない時間ではあるけど重力が100倍にでもなったかのような風圧は今まで生きてきて経験したことの無いものだった。体が軽くなり真上を見るとゴーレムの体は膝から上が粉々に砕けて周辺100メードの範囲まで破片を飛ばしていた。
自分が発動しておいてなんだけど馬鹿げた威力である。もし、お爺ちゃんのように双剣を使って自分の目の前に爆発を起こしていたら僕は死んでいたかもしれない。
そう考えると
偶然とはいえ投擲槍での発動を思いついて本当に良かった。お爺ちゃんみたいに爆発の規模や方向をコントロールできるようになるまでは至近距離での使用は避けておこう。
ゴーレムの破片がどさどさと降り注ぐ中、呆気にとられたソルさんがハッと正気を取り戻し、小声で僕に呟く。
「まさか、こんなに危険な技になるとは……軽々しくやってみましょう! などと言ってしまい、すみませんでした……」
逞しい体を小さく丸めて謝るソルさんの姿はいつものような威厳がなくて、何だか新鮮だった。