◇ ◇ ◇
夜が更けた頃、ジルヴェスターはプリム区のティシャンに赴いていた。
現在は一際豪奢な屋敷の前にいる。ビリー・トーマスの屋敷だ。
「趣味が悪いな」
屋敷を見回した第一印象がそれだった。
時間的に
その上、ジルヴェスターは
――『
魔法の効果で誰もジルヴェスターの存在には気づかない。
趣味の悪い外観に辟易しながらも、目的を果たす為に足を踏み出す。
敷地内に入ると、屋敷に侵入できそうな場所がないか見て回る。
完全に不法侵入だが、ジルヴェスターは気にした様子もなく平然としていた。
(ん……?)
明かりが漏れている窓を見上げると、カーテンが揺らめいていた。
暗くて判別しにくいが、
すると僅かに窓が開いており、風でカーテンが揺れていたのだ。
――『
窓の場所は三階であり、普通は侵入口に使えない。だが、魔法師には関係ないことだ。
魔法を行使できれば簡単に三階へ飛び移れる。
ジルヴェスターは難なく窓がある外壁へ飛び移ると、窓の隙間から手を伸ばしてカーテンを捲り、室内の様子を窺う。
窓の先は廊下だった。幸いなことに人の姿は見当たらない。
室内の様子を確認したジルヴェスターは、窓を開けて侵入した。
廊下に出ると、不法侵入しているにも
目指す場所はビリーの執務室だ。
どこが執務室なのかわからないので、手当たり次第部屋を確認していく。
その
乗り気な女性もいれば、諦念して表情が抜け落ちている女性もおり、様々な境遇の人がいることを物語っていた。
堂々としながらも気づかれないように細心の注意を払い、いくつもの部屋に入って行くと、遂に目的の場所へと辿り着く。
(ここか)
その場所はビリーの執務室だった。
部屋に侵入すると、目当ての物がないか見て回る。
今回ビリーの屋敷に侵入したのは、後ろ暗いことに手を染めている証拠を探る為だ。
もちろん悪事を働いていない可能性もあるが、それは調べれば判明する。
デスクの引き出しや、棚などを一通り探っていく。
(目ぼしい物はないか……)
悪事の証拠になりかねない物を残しておくほど浅慮ではないのか、成果は芳しくなかった。
(仕方ない……できればこの手は使いたくなかったが……)
証拠を見つけられなくても、取れる手段は他にもある。ただ、少々強引な手になってしまうので、可能なら避けたかったのが本音だ。
強硬策に出るとしても、ビリーが一人の時を狙わなくてはならない。
(一先ず今日のところは退散すべきだな)
乱交がいつ終わるのかわからない。
いつまでも待ってなどいられないし、他人の行為を観察する趣味もないので、大人しく日を改めることにした。