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第59話 逃走(三)

 ◇ ◇ ◇


 レイチェルとアビーの二人から逃れたエックスは無事逃走に成功していた。

 そのエックスは現在ある女性の前でひざまずいている。


、只今戻りました」


 エックスはひざまずいたまま深々と頭を下げる。


「ええ。良く戻ったわね、フランコ。怪我はないかしら?」

「はい。ご覧の通り五体満足です」

「ふふ。相変わらず大袈裟な言い回しね」


 女は微笑みを浮かべて労いの言葉を掛ける。


「詳しい話を聞きたいのだけれど、まずは約束を果たしましょうか」


 女が足を組み替えると、スリットの入ったスカートから素肌があらわになり太股が顔を出す。


「ありがとうございます。ですが、のご期待に沿える結果とは行きませんでした。申し訳ありません」


 神妙な顔つきで頭を下げるエックスの姿は忠誠心の厚さが窺える。


「あら、そうなの?」


 コテンと首を傾げる女。


「始めから奴らは捨て駒だったのだから気にしなくていいのよ。所詮暇潰しの道具にすぎないわ」

「それは承知しております。ですが、せっかく姫が玩具をふいにしてしまい、ただただ申し訳なく思います」


 自分のことが許せないのか、エックスはより一層神妙な顔を深めてしまう。


「本当に気にしなくていいのよ? それでもあなたの気が済まないと言うのなら、これからもわたくしの為に誠心誠意尽くしなさい」


 女は本当に気にしていないと伝えるが、エックスは納得しない。


「それにわたくしにとっては、あなたが無事に帰ってきてくれたことが何よりも嬉しい結果よ」

「もったいなき御言葉」


 女は自分の為に身も心も尽くしてくれるエックスのことが愛おしくて堪らない。そばに侍る数多くの男の中でも、エックスのことは特別な存在に思っていた。


 エックスは恍惚こうこつした表情を隠すことなく、感動冷めやらずといった具合である。


「――さあ、約束通り今晩はあなた一人だけを愛してあげるわ」


 そう言って女は立ち上がる。


「まずは一緒に汗を流しましょう」


 女は側仕えの男性に湯の準備をするように指示を出すと、エックスを伴って奥の私室へと歩を進めた。


 その後二人は共に浴室で汗を流すと、離れていた期間の埋め合わせをするかのように激しく愛し合うのであった。


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