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反魔法主義団体過激派組織ヴァルタンのナンバーツーであるエックスは本部に詰めていた。
ヴァルタンの代表であるヴォイチェフを始め、団員を送り出した後は必要な後方支援を行っていたが、それも既に完了し手持ち無沙汰になっている。
「――ん?」
自分の執務室にあるデスクの椅子に深く腰掛け、コーヒーを片手に休憩していたエックスは違和感を抱き、周囲に視線を彷徨わせる。
(見られている?)
何者かに監視されていると悟り、言葉を口にしないように努める。
言葉を口にすることで自分にとって不利になる情報を与えてしまう恐れがあるからだ。
(……潮時か)
そこからのエックスの判断は早かった。
自分にとって不利になりかねない証拠となり得る物と、欠かせない必要な物を素早く回収し、執務室を出て駆け出す。
(初めからランチェスター学園への襲撃が上手く行くとは思っていなかった)
エックスは現在ランチェスター学園で戦っているであろうヴォイチェフたちのことを思い浮かべる。
(
敬愛してやまない人物に想いを馳せると、表情が
(それに奴らは既に手綱が効かなくなってきていたからな。切り捨てるのにはいい頃合いだった。ヴォイチェフたちには悪いが、奴らは所詮道具にすぎない)
エックスにとってヴォイチェフらヴァルタンの団員は、
(後は俺が逃げきれば終わりだ)
自分にとって不利益になり得る証拠物を一つ残さず持ち帰られれば御の字だった。
(
まるで自分がこの場を無事に脱することができると確信しているかのようだ。それほど自信があるのだろうか。
エックスは