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第38話 クラブ(三)

 ◇ ◇ ◇


「――代表! また拠点を一つ潰されました!」


 限られた者しか知らない本拠で企てている計画の準備を行っていたヴォイチェフのもとに、男性の団員が報告に駆け込んだ。


「何!? どこだ?」


 眉間に皺を寄せて険しい顔つきになったヴォイチェフは、語気を強めて団員に尋ねる。


「ここです」


 団員は壁に立て掛けてある地図の一点を指し示す。


「……そうか。そこなら……まあいい。今のところ重要な拠点は一つも落とされてないからな」


 安堵したヴォイチェフは溜息を吐く。


 本拠をはじめ、特に重要な拠点は信用している一部の者にしか教えていない。故に、いくら拠点を落とされても、重要な拠点でなければそこまで痛くはなかった。


「その程度なら計画にも然して支障はない」


 ヴォイチェフの右腕である細身の男が口を開いた。


「そうだな」

「計画通り俺はここで待機するが、お前には現場で指揮を執ってもうぞ」

「わかっている」


 細身の男こと――エックスが計画の概要を説明していく。


 エックスは本拠で待機し、ヴォイチェフが現場の指揮にあたる計画であった。


「我々の計画は外部に漏れていないな?」


 エックスが報告に訪れた団員に尋ねる。


「おそらく漏れていないと思います。絶対とは言い切れませんが……」

「そうか」


 返答を聞いたエックスは顎に手を当てて考え込む。

 そして数秒後には考えを纏め終わり、顎から手を離して指示を出す。


「――一応外部に漏れていないか調べろ。人員は好きに使って構わない」

「了解です」


 指示を受けた団員はすかさず駆け出した。


「確認が終わり次第仕掛けるぞ」

「こっちは今か今かと待ち草臥くたびれているくらいだ」


 ヴォイチェフは両拳を組み合わせて指の関節の音を鳴らす。

 その様子から、気合に満ちているのが周囲にも感じ取ることができた。


「細かな調整は俺がやっておく。お前は団員のケツを叩いておけ」

「おう。俺にはそっちの方が性に合っている。面倒なことはお前に任せるさ」


 ヴォイチェフは見た目からもわかる通り、文官より武官気質の人間だ。デスク作業より、現場で身体を動かすことの方が本領を発揮できる。


 対してエックスは現場でも無難に役目をこなせるが、文官としての職務の方がより適正が高い。

 その点、ヴォイチェフとエックスは良い組み合わせなのだろう。


 会話を終えるとヴォイチェフは部屋を出て行き、エックスは計画の調整作業に取り掛かった。


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