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放課後になると、ジルヴェスターはステラたちに誘われて魔法の訓練をすることになった。
メンバーはジルヴェスター、ステラ、オリヴィア、イザベラ、リリアナ、アレックスの六人だ。
六人は実技棟の空いている訓練室の使用許可を取ると移動した。
訓練室は空いていればすぐに使用許可を取ることができるが、事前に予約をすることも可能だ。今回はタイミングが良かったのか、偶然訓練室を確保できた。
「……レベッカ?」
目的の訓練室に向けて移動していると、ジルヴェスターは見知った顔を発見した。
「――あっ! ジルくんじゃん!」
見知った顔の人物は、入学式の日に喫茶店で出会ったレベッカであった。
「オリヴィアとステラっちもいるじゃん!」
レベッカはジルヴェスターたちのもとへ駆け寄ってくる。
彼女の背後から一緒にいた女生徒も後を追うように駆けてきた。
「こんなところで何してるの?」
ステラはコテンと小首を傾げてレベッカに尋ねる。
「もうステラっちかわいすぎぃ~」
質問されたレベッカはステラの仕草にハートを射抜かれたようで、一直線に駆け寄って抱きついた。
「ステラっち~、私たち魔法の訓練をしようと思ってたんだけど、訓練室が空いてなくて途方に暮れてたんだよ~。しくしく、悲しみ」
言葉とは正反対にも見える幸せそうな表情で、レベッカはステラのことを抱き締めている。
そんな彼女の頭を撫でながらステラは口を開く。
「わたしたちと一緒に使う?」
ステラがレベッカに提案すると、オリヴィアが自分たちも魔法の訓練をするつもりだったので、訓練室の使用許可を取っていることを説明した。
「えっ!? いいの? やった!」
ステラに頬擦りして喜びをあらわにするレベッカは、抱きついたまま器用に振り返って連れの女性に声を掛ける。
「シズカ! せっかくだし、お言葉に甘えさせてもらおうよっ!」
「本当によろしいのですか? お邪魔ではないでしょうか?」
シズカと呼ばれた女性が確認するように問い掛けると、ジルヴェスターたちは頷いて歓迎の意を示した。
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えてご一緒させて頂きます」
「ありがとねぇ~」
シズカは綺麗な姿勢で美しいお辞儀をして感謝を示すが、レベッカは対象的に軽かった。
「改めまして――私はシズカ・シノノメと申します。よろしくお願いします」
一同は順に自己紹介をしていく。
(シノノメ家は風紀委員長と同じく東方から逃れてきた一族の末裔だな。そして剣術の
シズカの一族もカオルの一族と同じく、魔興歴四七〇年に突如として世界中に魔物が大量に溢れ、生活圏を追われることとなった際に遠路遥々逃れて来た一族の末裔である。
そして剣術の大家であり、国中に門下生を抱え、相応の影響力を持ち合わせている一族だ。
シズカは白のブラウスの上に灰色のジャケットを羽織り、膝が隠れるくらいの長さの黒いスカートを穿いている。
肌の色、ポニーテールにしているストレートロングの黒い髪と瞳は、カオルと同じ東方人由来のものだ。
一通り自己紹介を終えた一同は、目的の訓練室へ足を向けた。