「――ジルくん、この後時間あるかしら?」
出入口の混みあいを避ける為に、人口密度が下がるまで席に座って大人しく待機していたジルヴェスターにオリヴィアが声を掛けた。
「ああ。何かあるのか?」
「ええ、これから選択科目について意見交換をしようと思って、よければジルくんもどう?」
意見交換の場に誘われたジルヴェスターは少し考える。
オリヴィアの隣には当然のようにステラもいる。そして他に二人の女子生徒の姿もあった。どうやら授業見学の間に仲良くなったようだ。
ジルヴェスターは既に選択する科目は決めていたが、せっかく学生になったので学生らしく生活しようと思い至り、オリヴィアの提案を受けることにした。
「構わんよ」
「俺もご一緒していいか?」
了承の旨を伝えたジルヴェスターの隣にいたアレックスが便乗して参加を希望する。
「ええ、もちろんよ。みんなもいいわよね?」
オリヴィアは一緒にいる三人にも確認を取る。
三人とも頷いているので、どうやら無事に了承してくれたようだ。
「どこで意見交換するのかな?」
授業見学の時に仲良くなったと思われるオリヴィアと一緒にいる二人の内の、髪が深みのある真っ赤な色の凛々しい出で立ちをしている方の女生徒が尋ねる。
「そうね……カフェなんてどうかしら?」
学内にはカフェテラスが併設されている。
ちょっとした話をするのにはうってつけだろう。
「いいと思う」
ステラが賛成すると、他の面々も賛成の意を表明したので、場所はカフェテラスで決定した。
「先に自己紹介してもいいかな?」
「ああ、そうね。ごめんなさい気が回らなくて」
話が一段落したところで凛々しい女生徒が自己紹介を提案すると、オリヴィアは初対面同士の面々がいるのにも
「私はイザベラ・エアハート。よろしく」
イザベラと名乗った少女は白い肌に赤い瞳を備えており、深紅色のマニッシュショートヘアが特徴的だ。
白いブラウスの上に赤のジャケットを羽織り、赤いスカートは膝よりやや上辺りの長さで、黒のパンティストッキングを穿いている。
女性としては高めの身長で手足が長く、麗人という言葉がピッタリと当てはまる佇まいをしており、同性から人気がありそうな出で立ちをしている。
(エアハート家か、名門中の名門じゃないか)
ジルヴェスターはエアハート家について思考を向ける。
イザベラの生家であるエアハート家は、魔法師界でも有数の名門だ。
アレックスのフィッツジェラルド家も名門だが、エアハート家の方が断然名門である。
クラウディアのジェニングス家と並んで、この国のトップに君臨する名家なのがエアハート家だ。
「わたしはリリアナ・ディンウィディーです。よろしくお願いします」
イザベラと共にいたもう一人の少女が名乗った。
リリアナは白い肌に黄色の瞳を備えており、
ステラと同じくらいの身長だが、大きく異なるのが凹凸の激しい身体つきだ。
制服はブラウス、ジャケット、スカートは全て白で統一し、黒のタイツの穿いており、清楚な印象を周囲に与えている。
(ディンウィディー家。こっちも名門だ)
リリアナの生家であるディンウィディー家も名門だ。
エアハート家ほどではないが、フィッツジェラルド家と同等の名門であり、決して侮ることはできない。
その後ジルヴェスターとアレックスも順に自己紹介を済ませると、七人連れ立ってカフェテラスへ移動した。