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第13話 反魔法主義(四)

 ◇ ◇ ◇


 日が沈み外灯が街中を照らす時間帯に、街中から少し逸れた薄暗い場所でうごめく複数の影があった。

 場所はネーフィス区の第二の町であるマーカイウに所在し、ワナメイカー・テクノロジーが所有する魔法技術研究所だ。


 ネーフィス区は、ウォール・ツヴァイとウォール・トゥレスに挟まれているウォール・ツヴァイ内の南西に位置する区だ。商業の中心地であり、多くの企業や店舗などが軒を連ねている。


「これより任務を遂行する。各自行動開始」


 集団を率いるリーダーのその言葉と共に、配置に着いていた者たちが作戦通り各自行動を開始する。

 統率が、どちらともとれる動きで行動している。


 研究所に勤める魔法師や非魔法師達も協力して応戦するが、虚しくもことごとく研究施設を破壊され、その上研究資料や金目の物を一切合切奪取されてしまう。


 そして目的が達成されると、複数の影の姿は闇夜に消えていった。


 翌日の新聞には、ワナメイカー・テクノロジーが所有する魔法技術研究所が襲撃されたと大々的に記事にされていた。


 今回の事件も、連日新聞を賑わせていた反魔法主義団体過激派組織ヴァルタンによる事件と関係しているのかと事実と憶測を交えた内容で記され、紙面を賑わせている。


 研究所には魔法師も非魔法師も勤めているが、無論、魔法技術研究所なので魔法師――魔法的資質を有する者――の割合の方が圧倒的に多い。研究者の大半は魔法師で、非魔法師はほんの僅にいるだけである。その他の非魔法師は事務員など直接魔法や研究に関わらない者たちだ。


 研究者になる魔法師にはどちらかと言えば戦闘向きではない者や研究者肌の者、魔法を実用レベルで行使できない者などが多い。


 その研究所に勤める非魔法師と、実用レベルでは行使できないが多少は魔法を扱えるものの研究者故に身体を鍛えていない魔法師に対し、非魔法師だが身体を鍛えている実行犯で構成されるヴァルタンのどちらにがあるのか、いくら研究者といえども魔法師であることに変わりはない者たちが、そんな簡単にヴァルタンに好き放題やられるのか、本当に犯人はヴァルタンなのか、と記者や有識者の意見や憶測が紙面に掲載されている。


 この日はこの事件の話題で魔法師と非魔法師を問わず、国内の各所で賑わうのであった。


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