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第4話 入学式(四)

 ◇ ◇ ◇


 本部棟へと移動した三人は事務員に身分証を更新してもらった。


「二人ともどうだったかしら?」


 先に更新を済ませた二人の元へ歩み寄ったオリヴィアの問い掛けに、ジルヴェスターとステラが答える。


「俺はA組だな」

「わたしも」


 二人の答えを聞いたオリヴィアは自分の身分証を確認する。


「あら、わたしもA組よ。三人とも同じクラスね」


 三人とも同じクラスになれたことに微笑むオリヴィアと、嬉しそうな表情を浮かべるステラ。

 そんな二人のことを茶化すようにジルヴェスターが口を開く。


「まあ、俺は初めからA組だとわかっていたけどな」


 首席合格者は自動的にA組に振り分けられる。なので、ジルヴェスターは初めから自分がA組になることはわかっていた。


「確かにそうよね」


 ジルヴェスターの言葉に苦笑するオリヴィアは肩を竦める。


「だとしても二人も同じクラスなのは運がいいのかもしれないな」


 ジルヴェスターがA組なのはわかっていたことだとしても、ステラとオリヴィアがA組なのは偶然だ。確かに運はいいのだろう。


「とりあえず一年間よろしくな」

「ん。よろしく」

「ええ。こちらこそよろしくお願いするわ」


 一年間クラスメイトとして勉学を共にすることになった三人はお互いに握手し合う。


「二人はこの後どうするんだ?」


 今日の日程はこれで終わりだ。

 なので、ジルヴェスターはステラとオリヴィアにこの後の予定を尋ねた。


「わたしたちは町を見て回るつもりよ」

「そうか。俺も付き合おう」

「ええ、一緒に行きましょう」


 オリヴィアの答えを聞いたジルヴェスターが同行を申し出ると、彼女は微笑みを浮かべて了承した。隣にいるステラも頷いている。


 ランチェスター学園はランチェスター区内のフィルランツェという町にある。


 ジルヴェスターたちが生活しているのはウェスペルシュタイン国だ。

 この国は円形の四重の壁に囲われて守られており、十三の区に分かれている。内地に行けば行くほど富裕層が生活を営んでいる。内へ行くほど壁外から遠ざかるので、必然的に壁外の恐怖から遠ざかる。内地に行けば行くほど富裕層が暮らしているのは道理だろう。

 セントラル区以外の区にはいくつもの町や村があり人々が生活しているのだ。


 四重の壁は外側の壁からウォール・ウーノ、ウォール・ツヴァイ、ウォール・トゥレス、ウォール・クワトロという名称になっている。

 壁内全体を結界が覆っている為、飛行型の魔物も壁内へ侵入することはない。


 ランチェスター区は三つ目の壁であるウォール・トゥレス内の南東に位置し、同じくウォール・トゥレス内に位置するウィスリン区、プリム区と並んで最も富裕層が集まる区の一つだ。


 フィルランツェは学園都市だけあって学生に優しい町である。

 手頃な価格の食堂やカフェも多く軒を連ね、学校生活に必要な物を取り扱う店も多い。


 国立魔法教育高等学校の十二校全てに当てはまることだが、生徒は学校の敷地内にある寮で生活している。――自宅から通える者は寮に入らず自宅から通っているが。


 故に、フィルランツェは町長の意向により、親元を離れて生活する少年少女にとって暮らしやすい町作りを日頃から心掛けていた。


 そうして、身分証をしまった三人は連れ立って町を散策しに繰り出したのであった。


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