彼女がそこまでこそこそと話してくれた時、私は目の玉が飛び出るかと思う程驚いた。
「ええと、つまり貴女」
にっこりと彼女は笑った。
「別に、そんなに悪巧みではないでしょう?」
「……まあ、確かに」
「今の状況だったら、いくら彼がうちでは普段ならあまり歓迎されない系統の家の出だとしても、大丈夫なんじゃない?」
「そ、そうかもしれないけど……」
「まあどんな後妻をもらっても愛人を作っても、どうしても子供ができないことが判れば、向こうも自分のせいだと気付くんじゃないかしら? まあ、認めたくはないでしょうけどね」
はあ、と私は大きく息をついた。
全くこのひとは。
昔からそうだ。
きっと自分の受けたどんな傷であったとしても、それを武器にできる。
その時できるだけ幸せになるために。
とはいえ、一抹の不安はある。
このひととエフゲニーが、結婚したとして、そのまま「ずっと幸せになりました」なんてやっていけるのだろうか……?
まあいい。
それはまた、その時心配すればいいことだ。
とりあえず、私はこれを聞いておこう。
「それで、私は今度の結婚式のためにいつ頃を空けておけばいいのかしら?」