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第2話 嘘告?×接吻嘘告?×接吻

 緑丘さんの告白から1日が経った。

 色々考えてみたけど、やっぱりおかしい。

 僕の中で一つの懸念が渦巻いていた。


 ――【嘘告】


 昨日の告白は偽りの物だったのではないかと考えた。

 告白され、両思いが発覚したのに付き合えなかった。

 ならば『両思い』の部分に偽りがあったのではないだろうか。

 罰ゲームでの告白。もしくは陰キャに告白してその反応を見るだけのゲーム。

 どちらも人の心を踏みにじる最低の行為だ。

 あの緑丘さんがそのような低俗なことをするなんて考えたくはない。

 でもあの告白は嘘告だったと考える方が流れ的に自然のように思えた。


「聞いてみるかっ」


 うじうじ悩んでも何も始まらない。

 本人に直接聞けば済む話だ。


「緑丘さん。昼休み、昨日の場所に来てもらってもいいかな?」


「うひゃぉう!?」


 陸に挙げられた魚みたいに大きく飛び跳ねる。

 なんだその反応は。


「緑丘さん?」


「あ、青戸くん。わ、私に、私なんかに話しかけて下さったのですか?」


「う、うん。『なんか』って」


 どうしてそんなに下手したての反応なんだカースト最上位の人のくせに。


「――記念日にします」


「はい!?」


「初めて青戸君から話しかけてくれた今日この日を『祝福の日』と名付けることにしました」


「普通の平日がなんか大それた日になった!?」


 話しかけただけなのに、どうしてこんなおかしな流れになってしまうのか。

 緑丘さんは不意にその場で立ち上がり、クラスメイト全員に向けて高らかと宣言する。


「皆さん! 本日12月2日は今この瞬間『祝福の日』となりました。今日は祝日にしましょう」


「何言ってるの!?」


「嗚呼。この幸福感が一人でも多くの人に伝わりますように」


「泣いてる!?」


 意味不明な流れでついには涙を流し始めてしまう緑丘さん。

 これ以上この場で彼女に刺激を与えてしまうのは危険と判断し、僕は静かにその場から撤退した。

 一応、ハンカチをそっと机の上に置き、最低限の配慮は見せておこう。

 緑丘さんが正気を取り戻した時、机の片隅に置かれていたハンカチを見て小首を傾げているみたいだった。


「緑丘さん。正直に言って。昨日の告白は嘘告だったんじゃない?」


「嘘告ってなんです?」


「嘘の告白のこと」


「意味が分かりません。どうして嘘で告白しなければいけないのです?」


 この反応、シロと見るかクロと見るか、非常に悩ましい。

 もうちょっと反応を引き出してみるか。


「ゲームで負けて『罰ゲームで青戸に告白ねー』みたいな流れだったんじゃないかと疑っているんだけど」


「どうしてそれが罰ゲームなんですか? 青戸君に想いを伝えるチャンスを頂けるなんて罰どころかご褒美じゃないですか」


「本心でそう言ってくれているのであればこの上なく嬉しいのだけど、やっぱり信じられないんだ。あの緑丘さんが僕なんかに告白してくれた事実が」


「偽りのない本心です」


 うーん。平行線だ。

 頭のいい人だからな緑丘さん。対話の中で嘘を探るのは至難の業かもしれない。

 ならば、今日半日かけて考えた秘策で探るとしよう。


「本当に僕のことが好きなら今ここでキスできる?」

「き、キス!? キスだなんて……そんな……! そんな――」


 ひどく狼狽えている。そうだよな。好きでもないならキスなんてできない。これは『クロ』で決まりか?


「――そんなご褒美を頂けるのですか!? 青戸くんからキスの提案をしてくれるなんて夢のようです! な、何分間までなら接吻OKですか!? 10分――はさすがに長いですよね。ごめんなさい調子に乗りました。そ、それでは9分50秒にさせて頂きます」


「へっ!?」


 鼻息を荒くした緑丘さんが僕の両肩をガシッと掴んできた。

 頬が赤い。目が血走っている。

 彼女の唇がゆっくり僕の方へ近づいてくる。

 そして――


「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!???」


 なんの躊躇もなく二つの唇は重なった。

 夢中でついばんでくる緑丘さん。

 あまりにも意外な展開となってしまい、驚きと戸惑いでこちらは完全硬直状態となり、唇の自由を完全に奪われてしまう。

 途中昼休み終了のチャイムが鳴る。

 そんなことまるで気にもしていないかのように彼女は唇を合わせ続けてくるのであった。

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