「ずっと……ずっと青戸くんのことが好きでした」
こんなことがあって良いのだろうか?
正直校舎裏に呼び出されたときはまさかと思った。
僕なんかには一生縁がないイベントと思っていたから……
緑丘咲さん。
学園で最も人気の高い彼女からの愛の告白に僕は天に昇る幸福感に包まれた。
勿論僕からの応えは決まっている。
「ありがとう緑丘さん。こんな僕で良ければ――」
「――待って! 青戸くんの言いたいことは分かります! クラスメイトということ以外全く接点なかった私風情が急に何を言っているんだって感じですよね!」
「えっ? いや、そんなことは――」
「――わかってる! わかってますから! でも慈悲はあって良いと思うの! お願い! 振られる前に私にチャンスをください!」
「はっ? えっ? ちゃ、チャンス?」
「卒業式の日、私はもう一度告白します! その時に少しでも……ほんの少しでも私を彼女にしても良いと思える気持ちが青戸くんに生まれたら、どうかその時は私を受け入れて頂けたらと……」
緑丘さんが全然喋らせてくれない。
何を一人で暴走しているんだ緑丘さんは。
容姿端麗、成績優秀、何より優しくて皆をグイグイ引っ張っていけるリーダーシップに僕はとっくの昔に片思いをしていた。
そんな彼女からの告白、断るなんて選択肢最初からなかった。
「緑丘さん、卒業式なんて待たなくても僕からの答えは決まっているよ。僕で良ければぜひこの瞬間から付き合ってほしい……です」
言った。言えた。
「優しいですね青戸くん。私を傷つけない為にそのような優しい言葉をくださるのですね。でもいいのです。青戸くんの優しさに甘えて彼女にさせて頂くだなんてそんな図々しいことしません。私は実力で貴方の彼女になりたい……いえ、なってみせます!」
「どうして告白OKしたのに自分から引き下がったの!? 聞いて!? 好きだから! 僕本当に緑丘さんのこと好きですから! 僕の方こそ貴方の彼氏にしてほしい。偽りのない本心だから」
「そんな優しい嘘も付けるんですね。ますます惚れました。絶対絶対! 貴方の彼女になってみせますから! 覚えてろー!」
「覚えてろ!?」
一昔前の悪役の捨てセリフみたいな言葉を残して緑丘さんは走り去ってしまった。
はっや!? 成績優秀だけじゃなくて運動もできるのか。こちらこそますます惚れたよ。
なんというか信じられない一時だった。
告白されて受け入れたのに、付き合うことができなかった。なんだそれは。
「こんなことがあって良いのだろうか……」
苦難な予感がした。