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第155話 クリスマスパーティー

 12月23日、今日は終業式だ。

 明日からは待ちに待った冬休みだ。

 それにしても相変わらず校長の話が長い


「~であるからして、学生としての節度を持って過ごしてください」




 校長先生の長い話が終わり、漸く終業式が終わった。

 教室に戻りいつもの溜まり場に集合する。


「うわわわわわ、ヤバイヤバイ、どうしよう」


 うおっ! なんだ? 南が壊れた。


「どうしたんだよ、何がヤバいんだ?」

「だって、明日からずっと休みなんだよ! 部活も引退したからダラケ放題じゃん!」

「お、おう」

「反応薄―い、どうせトモは沙月ちゃんと色々するんでしょうね!」

「なんでキレてんだよ! 情緒不安定か!」


 南との毎度のやり取りをすると


「相変わらず友也のツッコミは冴えてるな」

「二人で芸人目指せ」

「あはは、息ピッタリだよね~」

「南は殆ど素だから怖いんだよね~」


 と、夫婦漫才やらなんやらと揶揄われる。

 自分ではツッコもうとか思ってないんだけど南が変な事言うとついツッコんでしまう。


「どうもどうも~。トモ! 一緒に芸人になろう!」

「え? なんだって?」

「トモったら照れなくてもいいのに~」

「ごめん、電波が悪くて聞こえなかった」

「もういいです~、私一人でレッドカーペット歩きます~」

「芸人はどうしたんだよ」


「「「はははははっ!」」」


「と、冗談は此処まで! みんな! 準備はいい?」


「「「え? なんだって?」」」


「う~~、もう知らない!」


 ちょっと揶揄い過ぎたな。床に体育座りしていじけてしまった。


「ごめんごめん、ちゃんと準備は出来てるよ」

「最初からそう言ってよ~。トモは沙月ちゃんと一緒に来るんだよね?」

「ああ、田口も彼女連れて来るんじゃなかったか?」

「え? なになに~? 今俺の話した~?」

「田口も今日恭子ちゃん連れてくるんだよな?」

「そうそう! 俺のマイスイートハニーを皆に自慢しちゃうYo!」

「ウザッ!」

「南、もう少し小声で言ってやれ」

「佐藤君~、そういう問題じゃないって~」

「ウザッ!」

「佐藤君!? 今のも聞こえたからね!」

「ははは、まぁ、今日は楽しもうぜ」

「さっすが佐藤君分かってる~!」


 時々田口の事が心配になるのは俺だけだろうか?


「とりあえず16時半に現地集合でいいんだよな?」

「そだよ~」

「了解、んで終わりが22時迄だっけ?」

「未成年だから22時以降はダメ~って言われた。オールしたいのに~」

「それはしょうがないだろ。っていうか犯人捕まってないんだから絶対に一人で帰るなよ?」

「分かってます~、彼氏の居ない楓と二人で帰ります~」


 そう言って楓に抱き付き「独り身は寂しいねぇ」と言いながら俺をチラチラ見て来る。

 二人を振った負い目で目が合わせられない。


「もう、南ったら。それじゃあ16時半に現地集合って事で」

「うーい」

「おう」

「わかった」

「オッケー!」

「は~い」

「はい!」


 こうしてクリスマスパーティーの打ち合わせも終わり、そして2学期が終了した。



 時刻は15時、身支度を済ませ沙月との待ち合わせ場所に向かう。

 沙月とは動物公園以来、関係は良好と言える。

 むしろ再告白する前より良くなったと思う。


 中居と及川も良好なようで、あれ以来及川がツヤツヤしている。

 そして驚くべき事に、田口と恭子ちゃんの関係も良好らしい。

 水樹のアドバイスが上手く行き、更に仲を深めたようだ。



 沙月との待ち合わせ場所に到着したが、まだ沙月は来ていないようだ。

 まぁ、約束の15分前だから無理はない。

 今日は荷物も多いし気長に待とう。


 それにしてももうすぐで今年も終わりか。

 今年は色々あったなぁ。

 柚希の特訓でリア充になって、リア充になってからも結構苦労したな。


 そして何より、楓と付き合った事は大きい。

 初めて女の子を心から好きになって、好きな人の為なら頑張れるって事を教わった。

 そして南にも告白されて、まぁ、色々と体験出来た。

 夏休みには友華さん、沙月と知り合って、沙月からも告白されて。


「やば! 考え事してたら約束の時間から15分過ぎてる!」


 寒くて近くの喫茶店に入ってたから沙月を待たせちゃってるかもしれない!


「何を考えてたんですか?」

「え? 今年は色々あったなぁって。ってそれどころじゃない、早く行かないと!」

「何処にですか?」

「何処にって沙月を待たせて……って沙月!」

「えへへ~、こんにちはです」

「何時から居たんだ?」

「ん~、15分前位ですね」

「約束の時間ぴったりじゃん! っていうか声掛けてくれれば良かったのに」

「考え事してるっぽかったのでずっと横顔眺めてました」


 くっ! 可愛い! 最近一層可愛くなったと思う。

 夏休みの頃と比べて丸くなったというか、大人っぽさが増したというか。


「待たせて悪いな。それじゃあ行こうか」


 喫茶店を出て俺達はとある場所へ向かう。


「さっきの友也さんじゃないですけど、今年は色々ありましたね」

「そうだな。俺はボッチから抜け出したしな」

「私はやっぱり友也さんと出会えたのが大きいです」

「それを言ったら俺も沙月と出会えてよかったよ」

「えへ、ありがとうございます」


 今年の思い出を話しながら歩いていると、あっという間に目的地に到着した。


「友也さん、リベンジです!」

「ああ、任せろ!」


 俺達がやって来たのは、以前サンタコスを買いに来た店だ。

 あの時は喧嘩をしてしまって買えなかったので、クリスマスパーティー前に買いに来たのだ。


 店の奥へと進み、サンタコスが並んでいる一角に行くと


「なんか、種類が増えてるな」

「時間が無いので友也さんが決めちゃってください」

「え?」

「どうせ友也さんに選んで貰うんですから時間短縮ですよ」


 とりあえず前回置いてなかった物から見て行くか。

 順番に見て行き、更に吟味して、そして一着手に取り


「おれはこれがいいかな」

「ワンピース型ですか。それに結構丈が長いですね」

「前着てたやつは屈んだりしたら見えそうだったからな。これなら見えないだろ」

「もしかして友也さんがあの時余り乗り気じゃなかったのって……」

「い、いいから! 早くしないと遅れるぞ」

「は~い♪」




 カラオケのパーティールームに全員集まり、料理や飲み物が揃った所で南がマイクを持って


「みんなー! 盛り上がってるかー!!」


 まだ始まっていないのにこのテンションは流石だ。そしてもう一人


「イェーイ! 盛り上がってるゼーぐぇ!」

「私の前で馬鹿しないでって言ったわよねぇ?」

「ご、ごめんなさい」


 すげぇ! 一瞬でアームロックからのマウントポジション取り! 恭子ちゃん怖い!

 これは田口完全に尻に敷かれてるな。



 その後はカラオケを歌ったり持参したボードゲームをやったりと大騒ぎだった。

 こんなに楽しいクリスマスパーティーは初めてだ。


 去年までの俺なら騒いで人様に迷惑掛けた挙句、性の6時間でサルみたいにヤる只の馬鹿としか思わなかっただろう。

 いざリア充になってみるとキチンとルールは守るし、迷惑行為もしない。

 まぁ、一部の奴等は例外でそんな事等考えないで行動してるのかもしれないけど。



「もう終わりかぁ、物足りないよ~」

「何言ってんだよ、一番騒いでた癖に」

「そうそう、結局マイクは一度も話さなかったしな」

「う、うるさいなー。あ、そうだ! 今度は忘年会やろうよ忘年会!」

「忘年会かぁ。水瀬は騒ぎたいだけだろ?」

「違いますー。皆はどうかな? 忘年会」


 目を爛々と輝かせて皆に問いかける。


「忘年会っつってもいつやるんだ?」

「それは皆の都合が合う日で!」

「どうすっかなぁ」


 忘年会かぁ。一度はやってみたいけど……そうだ!


「大晦日なんてどうだ? 忘年会やった後にそのまま初詣に行くってのはどう?」

「お! 友也ナイス! いいね、それ」

「さっすが俺達のリーダーだ」


 中居が何か言ったけどスルーだ。

 その後も反対意見は出なく、大みそかに忘年会&初詣が決定した。




「今日は楽しかったですね~」

「そうだな、南は騒ぎすぎな気もするけど」

「あはは、南先輩はテンション高いですからね~」


 クリスマスパーティーからの帰り、沙月を送りながら今日の感想を言い合う。

 一通り感想を言った後、静寂が訪れる。

 そしてそのまま沙月の家の前まで辿り着くと


「ありがとうございました」

「寒いから暖かくして寝ろよ」

「……」

「沙月?」

「友也さん……」

「どうした?」

「明日は……期待していいんですよね?」

「……沙月」

「ええと、あの、お、おやすみなさい!」


 そう言って物凄いスピードで家に入っていった。


「沙月……」


 明日はクリスマスイヴだもんな。

 恋人と過ごすクリスマスは初めてで今から緊張する。



 『期待していいんですよね?』



 これってやっぱりアレだよな。

 俺もいつまでも逃げてたらダメだよな。

 沙月の部屋の明かりを見ながら決意をし、帰路に就いた。



 この時の俺はまだ、あんな事が起こるなんて想像すらしていなかった―――

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