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第120話 リーダー

 昼食を摂り終わり、再びバスに乗り込む。


「これから宿泊するホテルに向かうぞー」


 と担任が車内アナウンスをする。


 担任によると毎年お世話になっているホテルらしい。

 くれぐれも問題を起こさない様に注意された。


 その時、田口がビクッと身体を震わせていた。

 恐らく何か企んでいたのだろうが、こればっかりは仕方ない。



 朝市から30分程でホテルに到着した。

 ホテルに隣接する大きな駐車場に入り停車する。


 バスから降り再び整列すると学年主任が


「今日からお世話になるホテル・ラピスラズリさんだ。これから主任さんからの挨拶があるので静かに聞く様に!」


 と言い、拡声器を主任らしき人物に渡す。


「どうも、初めまして。紹介に与かりました主任を務める新島 和利にいじまかずとしと申します。

今日からの4日間、皆さんに快適に過ごして頂く為に誠心誠意お世話させて頂きます。高校生の修学旅行は人生で一度しかありません。皆さんの良い思い出作りに微力ながら力添えをしたいと思います」


 と最後に頭を下げて拡声器を学年主任に渡す。


「ではこれよりホテルにチェックインをする。手続きは担任の先生がやるのでその後各自の部屋の鍵を受け取る様に。それまでは大人しく待機してる事」


 1組から順番にホテルに向かう。


 ホテルの中に入ると凄く暖かい。

 待機してる様に言われた場所には大きな暖炉があった。


 暖炉なんて見るのは初めてなので皆のテンションが上がる。


「おー、暖炉かぁ。初めて見た」

「スゴーイ! 暖か~い!」


 と代わる代わる暖炉の前に行って感想を口にする。


 そうこうしている内に手続きが終わったのか、担任がやって来た。


「今からルームキーを渡すから男女それぞれのリーダーは取りに来てくれー」


 そう言われそれぞれのグループのリーダーが鍵を受け取りに行く。

 その様子をボーッと眺めていたら


「何やってんだ友也、早く取りに行けよ」


 と水樹から言われる。


「え? リーダーが取りに行くなら中居が行くんじゃないのか?」

「何言ってんだよ。俺達のリーダーは友也だろ?」

「いやいや、いつから俺がリーダーになったんだよ? っていうか中居はそれでいいのか?」


 と中居に話題を振ると


「誰がリーダーでも構わないだろ。それに文化祭でリーダーやっただろ?」

「文化祭はそうだったかもしれないけど、このグループは違うだろ?」


 俺が必死に否定していると水樹が


「友也! そろそろ昔の自分と比較して自分を下げるのは止めろ」

「水樹……」

「皆もう友也の事を認めてるんだ。だからこそ中居も否定しないんだよ」


 水樹に言われてハッとした。

 文化祭の時に水樹に怒られたばかりじゃないか。


 そうだ。

 あの時に自分に自信を持つって決めたんだ!


「ごめん、また俺は同じ過ちを繰り返す所だった」


 俺が謝ると中居が


「分かったんなら早く行ってこい」 


 と俺の背中を押す。


「ああ、行ってくる」


 と言って担任の元へ行きルームキーを受け取った。


 このホテルは15階建てで、俺達が使うのは3階と4階だ。

 3階が男子で4階が女子となっている。


 夜になるとエレベーター前や階段の前に先生が交代で見張りを立てるらしい。

 昔、カップルが夜中に密会をして不純異性交遊をしていたのがバレて、それ以来厳重に男女の行き来を監視する様になったそうだ。


 どうして俺がこんな事を知っているかと言うと、バスの中で前田と後藤が都市伝説として話しているのが聞こえたからだ。


「では各自の部屋へ行き、荷物を置いた後またここに集合だー。主任がホテルを案内してくれるそうだー」


 俺達は一時解散となり、自分達の部屋へ向かう。


 俺達が使う部屋は一部屋にベッドが4つあり、テレビと中くらいの冷蔵庫に無料Wi-Fiが完備されていた。

 こんな部屋に泊まれるなんて……。

 親に感謝しなければ!


 荷物を置き再び集合した俺達はホテルの中を案内して貰った。

 このホテルには驚くことに大浴場のほかに屋上に露天風呂があるらしい。

 だが、俺達は露天風呂は使えないそうなのでプライベートで来てみたい。


 ホテルの案内が終わり自由時間となった。

 俺達グループは部屋に籠っていてもつまらないので談笑しながら当てもなくホテル内を歩いていた。


 すると田口が何かを見つけた。


「おや、これは何でしょう? 隠し通路のようにも見えますが……」


 何だと思い田口が指さしてる所を見る。


「只のポスターだろ」


 と中居が切り捨てるが、よくそのポスターを見ると隅が剥がれていた。

 剥がれている部分をめくってみると、そこには部屋らしき扉があった。

 俺達が使っている部屋のドアと違い、和式の引き戸だった。


 それを見た水樹が


「よくこんなの気づいたな。逆にキモイわ」

「キモイとは何ですか!」

「っつーかいい加減喋り方戻せよ」

「しかし担任殿に見つかったら帰されてしまうでござる」

「っあー! その喋り方マジうぜぇ。おい、行こうぜ」


 と言って中居はスタスタと歩いていってしまう。

 俺と水樹は顔を見合わせて肩を竦めた後追いかける。


「ちょ、ちょっと待ってよ中居君~」


 と素に戻った田口が必死で追いかけてきて中居に謝っていた。

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