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第73話 午前0時

 俺が機能不全で楓にフラれたんじゃないかと疑われたので反論する。


「別に機能不全とかじゃないから! ちゃんと役にたつよ!」


 と言うと、今度は


「という事は使のか?」


 と水樹が聞いてくる。

 それに合わせ田口が


「俺も早く経験してー!」


 と叫ぶが無視。


「いや、実際に使った訳じゃなくて、キチンと機能するって言いたかったんだよ」


 この俺の言葉に反応したのが中居だった。


「おいおい、あんだけイチャイチャしてて何もしなかったのかよ」

「いや、そういう雰囲気には何度かなったけど俺がヘタレちゃって……」


 と俺の言葉を聞いて


「そりゃお前が悪い。フラれてもしょうがねぇな」


 と中居は吐き捨てる様に言った。

 別れた本当の理由は言えないので何も言い返せず黙り込むと


「まぁまぁ、友也だって初めての恋人でどうしたらいいかわからなかったんだろ」


 と水樹がフォローしてくれた。

 それどころか中居にもちょっかいを出し始めた。


「そんな和樹は及川とはどうなんだ?」


 話題が俺から中居に移る。

 中居は面倒くさそうに


「普通だよ普通」


 と答えるだけだった。

 だが水樹は手を緩める事なく中居をイジる。


「普通ってなんだよ、中居も5月から付き合ってるんだしもうやる事はやったのか?」


 とかなり攻めた質問に対し中居は


「なんつーか、アイツの事はそんな簡単に済ませられないっつーか……」

「なら友也と一緒だな。友也も相手の事を思って手を出さなかったんだろうし」


 とここでも俺をフォローしてくれる。

 さすがグループの影の支配者! って俺が思ってるだけだけど。

 水樹の言葉を受けて中居は


「チッ! さっきは悪かったな」


 と分が悪そうに謝って来た。

 中居らしい謝罪に思わず笑うと


「何が可笑しいんだよ!」


 と言い睨まれたが


「いや、中居も意外と彼女想いなんだなと思ってさ」


 と言うと


「ははは、確かにな。普段のキャラじゃ考えられないわ」

「中居君マジパないわ~」


 と一笑い起きた。

 中居も反論するのが馬鹿らしくなったのか一緒に笑っている。



 しばらく雑談した後、水樹と中居が立ち上がり


「そろそろ行くか」

「暇だしな」


 と言いながら俺と田口に向かって


「これから女子達の部屋に乱入するぞ!」


 と言い、俺達は女子達が泊まっているコテージに向かった。



 女子達が泊まってるコテージに着くと、中居は何のためらいもなくノックする。


「はーい!」


 と言ってドアを開けたのは及川だ。

 中居は及川に向かって


「ノック位ですぐ開けるな、もっと用心しろ」


 と注意しつつ中へ入っていく。


「もー、何しに来たし!」


 と文句を言う及川の後に続いて俺達も中に入る。


 コテージ自体の作りは一緒だが、女子が使っているというだけで違って見える。

 いや、実際に部屋の散らかり具合が違った。


 女子部屋はコンセントからスマホの充電ケーブルがのびており、飲み物やお菓子の袋等が並べられていた。

 女子会に紛れ込んだ気分だ。


 女子も女子で、急に男連中がやってきたにも関わらず、動揺している素振りが無い。

 それどころか、待ってました! みたいな雰囲気すら感じた。


 リア充の男女の交友関係がよく分からない。

 普通恥ずかしがったり、嫌がったりするもんじゃないの? 俺だけ?


 「暇だから遊びに来てやったぞー」


 と中居が言うと、楓も


「いらっしゃ~い、丁度私達も暇してたんだ~」


 と言い、次いでミナミも


「そうそう! 丁度佳奈子から恋バナ聞き終わったばかりだしね~」


 と言いながら中居を見る。

 その及川はというと


「中居、ごめん」


 と何故か謝っていた。


「お前……ったくしゃあねぇな」


 と言って及川の横に座る。

 そして水樹も及川と楓の間に座ったので、俺も座る事にした。


 席順は


 中居・及川・水樹・楓・俺・ミナミ・田口の順で、円を作る様に座った。


「とりあえずトランプ持って来たから何かやろうぜ」


 といつの間にかトランプを持っていた水樹が言うと


「私は大富豪やりたいかな」


 と楓が言うと


「え? 大貧民って言うんじゃないの?」


 とミナミが疑問を口にする。

 大勢集まると起こるトランプあるあるだな。

 地域等によって呼び方やルールが若干違かったりするのだ。

 因みに俺は大富豪と呼んでいた。


 「取りあえず都落ち無しで、階段での革命も無し。他は全部ありってことでいいか?」


 と水樹が皆に確認をし、大富豪が始まった。


 勝負の結果はミナミが最下位で、ブービーが俺だった。

 楓はゲームでも一番になり、最下位とブービーで皆の分のジュースを買ってくるという罰を与えた。


 コテージから一番近い自販機は受付にあるので、ミナミと二人して歩く。


「いや~、まさかあんなに盛り上がるとはね!」

「そうだな、楓は相変わらず何でも強いな」

「あー! 折角二人きりなのに楓の話するんだー」


 と口を尖らせてプイッと顔を背ける。


「だけど、この組み合わせは楓がわざと仕組んだと思うだろ?」

「そりゃあね~、今日が最終日だし」


 と話していると俺とミナミのスマホから同時にLINEの通知音が鳴った。

 確認すると楓からだった。


〈今日の0時に川の桟橋で10分だけ待ってる〉


 と書かれていた。


 ミナミの方を見ると


「私は自販機の前で待ってるから」


 という答えが返ってきた。

 これは付き合うと決めた相手に会いに行けという事だろう。



 その後、風呂に入り、特にやる事もないのでまだ11時過ぎだったが就寝する事になった。

 しばらくは他愛もない雑談をしていたが、次第に皆眠りに就いた。


 俺は物音を立てない様にそっとコテージを抜け出す。


 そしてを胸に、自販機に向かって歩き出した。

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