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第72話 キャンプ

 夏休み前に決めた通りに、楓とミナミは交互にアピールしてきた。

 二人とも色々とやっていたが、共通している事が二つあった。


 一つはデート等外出はせずに家に呼ぶ事。

 もう一つは毎回手料理を作ってくれた事だ。


 そんな日々も昨日で終わり、明日からはキャンプが始まる。

 一泊二日なので明日の夜には楓かミナミ、どちらと付き合うか決めなければならない。


 最初はどんなにミナミがアプローチしてきても楓を選ぶと決めていた。

 しかし、ミナミと正面から向き合う事で、俺はミナミにも魅かれていった。


 俺はどちらを選ぶべきなのか迷っていた。



 ターミナル駅に着くと、いつも通り楓が一番に来ていた。


「さすがだな。俺も結構早めに家出たんだけどなぁ」

「ふふ、早く着けば友也君と二人きりになれると思って早く来ちゃった」


 夏に相応しい向日葵の様な笑顔を見せる。

 俺もつられて笑顔になり、他のメンバーが来るまで談笑した。


 15分程経って段々とメンバーが集まって来た。

 そして驚く事に、遅刻常習犯の及川が5分前に到着した。


「お前が遅刻しないなんて珍しいな。このキャンプ、嫌な予感がするな」


 と水樹が揶揄うと


「変な事言わないでよ! 私だってちゃんと成長してるんだから!」


 というやり取りをしている内に、最後だった中居が到着し全員が揃った。

 さっきから旅行記念と言って写真を撮りまくっていた田口が集合写真を提案してきたが、流石にターミナル駅内では恥ずかしいという理由で田口以外の全員から拒否された。


 電車に揺られる事約2時間、そこからバスで更に20分掛けて目的のキャンプ場に着いた。


「うおーー! 大自然だーー!」


 と田口が叫ぶ。

 それにつられてミナミも


「大自然バンザーーイ!」


 と叫ぶ。

 相変わらずこの二人はテンションが高い。

 そんな二人に水樹が


「恥ずかしいからやめろ。先にチェックイン済ませるぞ」


 と注意し、泊まる予定のコテージを管理している受付に皆で向かう。

 道中、楓が皆からお金を回収し、余ったら割り勘で何か買おうという事になった。


 無事受付を済ませ、とりあえず荷物を置きにコテージに向かう。

 丸太で出来たシンプルなコテージが並んでおり、その内の二つが俺達が使うらしい。


 キチンと男女で分けて予約をとっていたので、別々のコテージに入っていく。

 中もシンプルな作りで、部屋の真ん中にテーブルが置いてあるだけで、他は何もない。

 テレビも当然無く、寝る時は布団を敷いて寝るようだ。


「すげー! 何もない!」


 と再び田口のテンションが上がっている。

 かく言う俺も、コテージに泊まるのは初めてなので、テンションが上がる。


 荷物を置き、女子達と合流する。

 近くに川があるので、そこで遊ぼうという事になった。


 コテージから数分歩くと、水が透き通った綺麗な川があった。

 ここでもテンションの高い田口が靴のまま川の浅瀬に入り騒いでいる。


「うっひょー、気持ちいいー! 皆も来いよー!」


 確かに気持ち良さそうだ。

 しかしこのまま入ると服が濡れるな。

 と考えていると


「じゃあ私達も行こうか」

「うんうん、テンション上がるー!」


 と言いながら楓とミナミが服を脱ぎだした。

 何してんだ! とツッコもうとしたが、服の下に水着を着ていたらしい。


「あれ? 友也君は入らないの?」


 と白いビキニで腰にパレオが付いた水着の楓が聞いてくる。


「いや、水着なんか用意してないんだけど」

「えー、近くに川があるから遊ぼうっていったじゃん」

「こんなちゃんと人が泳げる川だとは思わなかったんだよ」

「折角水着着て来たのに~」

「俺に構わず遊んでこいよ。ミナミが呼んでるぞ」


 ミナミは既に川に入り田口を沈めて遊んでいる。

 楓は渋々といった感じでそこに混じる。


 その傍では中居と及川が水の掛け合いをしている。

 中居に及川が敵う訳が無く、猛抗議をしている。


 そんな光景をボーッと見ていると、水樹が居ない事に気づいた。

 辺りを見回すと、近くの木陰で何やらスマホで通話していた。

 何を話しているのか気になったが、水樹の事だからナンパした女子とかだろう。



 結構な時間川で遊び、お腹が空いてきたのでそろそろバーベキューをしようという事になった。

 受付から道具と食材を受け取り、河原のバーベキューエリアに移動する。 

 役割分担は郊外遠足の時と同じだ。


 中居、水樹が火起こし担当で、その他が食材担当だ。

 田口は服のまま川で遊んでいたので着替えに戻っている。


 一度経験してるのでスムーズに準備が出来たが、準備してる最中も楓とミナミのアピールは止まらない。

 やけに近かったり、ミナミに至ってはこんな場所でも胸を押し付けてきたりしていた。

 しかも及川に気づかれない様に巧みに死角を狙っているので、それだけで二人の本気度が分かる。



 食事も終わり、一端コテージに戻って食休みをする事になった。

 部屋でくつろいでいると、水樹が唐突に


「そういえば友也達はどこまでいったんだ?」


 という質問をしてきた。

 そこに田口はおろか中居まで食いつく。


「それ俺もちょ~気になってたわ~」

「お前ら付き合って結構たつもんな」


 と興味深々で聞いてくるが


「いや、俺達夏休み前に別れたって言ったじゃん」


 と返すと


「それも本当か怪しいけどな。でも4月から付き合ってたんだから何かしらあっただろ?」


 と更に追及してくる。

 これが男同士の恋バナ? なのだろうか。


 確かに色々あったけど楓の許可なく話してもいい物なのだろうか?

 俺が悩んでいると中居が


「もしかしてお前らが別れた理由ってそれか?」


 と聞いてきた。

 「それか?」と言われても意味が分からなかったので聞き返すと


「お前が機能不全だからフラれたんじゃないのか?」


 とあられもない誤解をされてしまった。


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