昨日でミナミの3日間が終わった。
そして夜0時を過ぎたと同時に楓からLINEが来た。
〈今日は私の番だね! それで、今日私の家に来れるかな?〉
という内容だった。
ミナミもそうだったけど、家に呼ぶのがトレンドなのだろうか?
それとも二人きりの空間を演出して、俺をドキドキさせたいのか。
だとしたら、二人の選択は大正解だな。
〈おう、よろしく! 何時に行けばいい?〉
と返事を返すと直ぐに既読が付き、返事が返って来た。
楓も午前中は部活があるとの事だったので13時に楓の家という事になった。
偶然かどうか分からないが、楓もお昼を御馳走してくれるらしい。
13時に楓の家に着きインターホンを押す。
するとTシャツにホットパンツ姿の楓が出迎えてくれた。
一見ラフな感じに見えるが、Tシャツのサイズ小さいんじゃないか? と思う程胸部が主張している。
ホットパンツから伸びる足も健康的でスベスベしている。
していると断言したのは、膝枕して貰った時に堪能したからだ。
改めて見ると、ミナミとはまた違った美少女だ。
俺が見惚れていると
「どうしたの? 早く入って」
と言いながら手を引かれる。
ただそれだけなのに俺の心臓は脈を早める。
楓の部屋に通され、お昼を持って来るから少し待っててと言われ待機する。
部屋の中は相変わらずいい匂いで満たされ、発生源は楓なんじゃないかと考えていると
コンコンッ
と部屋のドアがノックされた。
「友也君、あけて~」
とドア越しに言われドアを開けると、大きなおぼんを持った楓がいた。
「随分と大きいな、大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫、友也君は座って」
と言われ座る。
そしてテーブルに大きなおぼんが置かれる。
おぼんの上には焼き魚、煮物、漬物、みそ汁といった和食が乗っていた。
それらを順番に並べて行き、一見すると何処かの旅館の料理なんじゃないかと思う程綺麗だった。
「凄いな、これ全部楓が作ったのか?」
「そうだよ~、友也君って和食が好きなんじゃないかな~って思ったんだけどどう?」
「大好きだよ! でもよく分かったな?」
「毎日のお弁当で色々観察してたからね~」
普段通りに食べていたのだが、そこから俺の好みを当てるなんて凄いな。
俺が感心していると、旅館の様に一つ一つの品の説明を始めた。
「~で、この筑前煮は簡単に見えるけど結構むずかしいんだよ~」
「ただ煮込むだけじゃないのか?」
「ブッブー! 筑前煮は食材それぞれを別々に煮込んで作る物だから料理初心者には難しいのです!」
「え? じゃあこれ全部別々に煮込んだのか?」
「うん、昨日の夜から仕込んで、さっき完成させました~」
一つ一つが物凄く手間が掛かっていて、どれも俺の好物ばかりだった。
そして一通り説明が終わった後に、一緒にいただきますをして食べる。
俺が一口食べるたびに心配そうに俺を見るので
「凄く美味しいよ、やっぱり楓は料理上手だな」
と褒めると
「南のカレーとどっちが美味しい?」
と聞かれた。
どうしてカレーを食べた事を知ってるんだ? と内心焦っていると
「南はカレーが得意料理だから、きっと友也君に食べさせただろうなって思ったんだけど違った?」
大正解です。
「なんていうか、ミナミの事は何でもお見通しって感じだな」
「完璧美少女やってた時は常に色んな事に目を光らせてたからね~」
「その名残で俺の好物が分かったのか」
「友也君に喜んで欲しくて、迷惑だった?」
「そんな事はないよ。俺の事見てくれてるんだと感じて嬉しいよ」
「ありがと~」
一通り食べ終えて、楓が食器を片しに行く。
楽にしてていいよとの事だったので少し横になる。
こうして横になっていると膝枕をして貰った時を思い出すなぁ。
そう考えながらゴロンッと転がり反対側を向いた時、ベッドの下に何かあるのを見つける。
何だろうと思い、手を伸ばして手元に手繰り寄せる。
手に取った物を見て固まる。ハードカバーの本のような物の表紙に
『~Diary~』
と書かれていた。
流石に中を見る事など出来ないので慌てて元に戻そうとすると、1枚の写真が落ちた。
悪いと思いつつも、写真に目が行ってしまう。
するとそこには一人の男子生徒が映っていた。
その写真はどうやら文化祭の準備の時に撮られたようで、男子生徒が椅子に向かって金づちを振り下ろす瞬間が映っていた。
教室で一人だけの男子生徒。
「これって俺……だよな?」
去年の文化祭の時に一人で椅子を直していた時の事を思い出す。
もしかして……!?
俺はおもむろに日記をめくった。
そこに書かれたいたのは驚くべき内容だった。
以前楓は俺のお蔭で価値観が変わったと言っていた。
俺は楓に何かをした覚えはなかったが、日記を見て思い出す。
「あの時声を掛けてきたのは楓だったのか……」
そう独り言ちて日記に目を落とす。
最初はいつも一人で居る俺を何の努力もしないつまらない人間と書いてある。
それが文化祭を切っ掛けに自分の考えが変わり、俺に興味を持ち、いつしか好きになっていたと書いてあった。
俺は驚きで頭が混乱しそうだった。
あの時声を掛けてきたのが楓……?
俺の
なんで? どうして? という想いで混乱していると
「友也君……それって……」
いつの間にか楓が戻って来ていた。