後ろから抱きしめているミナミは、手を動かし身体をなぞる。
触れられた所が熱く感じる。
「部活やってないのに身体引き締まってるね」
と、艶やかな声音で聞いてくる。
「春休みから筋トレしてるからかな」
理性を振り絞って答える。
再びミナミの手が身体をなぞった後に強く抱き締められる。
お互いを隔てているのはミナミのシャツ一枚だけなので、柔らかさがほぼダイレクトに伝わって来る。
無意識に背中の感触を感じていると
「ねぇ、私の身体はどうかな?」
「ど、どうかなって?」
「気持ちイイ?」
と言って更に胸を押し付けてくる。
柔らかさの暴力にノックアウト寸前の理性で
「う、うん。気持ちいい気持ちいい。だからそろそろ離れようぜ?」
と言うと、以外にも直ぐに開放してくれた。
ミナミの方に向き直り注意しようとした瞬間、今度は首に腕を回して抱き付かれた。
今度はお互い向き合っている為、顔と顔がぶつかりそうなほど近い。
ミナミの赤く火照った顔に潤んだ瞳、柔らかく艶やかな唇が目に飛び込んでくる。
そんなミナミの唇が動き
「私って意外と胸大きいでしょ?」
と脳を揺さぶる言葉を発する。
「ミナミ、マズイって」
「どうして?」
「どうしてって……」
俺が言い淀んでいると更に顔が近くなる。
少しでも動けば唇が触れてしまう。
「私がトモの事好きって分かってくれてるよね?」
「ああ、わかってる」
「じゃあ、キスして」
そう言って目を瞑る。
俺はミナミの腰に手を回し抱き寄せてキスをした。
「これが今の俺の限界だ」
「……まさか
「ごめん……」
俺が謝ると俺から離れておでこを触りながら
「ま、焦ってもしょうがないか。今日はこれで許してあげる」
と言って満面の笑みを見せる。
「ホントにごめん。別にミナミの事がキライとかそういうんじゃないから!」
と言い訳がましく言うと
「分かってるって、トモのヘタレー」
と、あっかんべーされてしまった。
その後、ミナミは昼食を作り、今は二人で食べている。
今日のメニューはカレーだ。
「なぁ、ミナミ」
「なぁに?」
「料理勉強してるって言ってなかったっけ?」
「してるよ! どう? 今日のカレーは一味違うでしょ」
確かに前回食べた時よりスパイシーになって更に美味しくなっている。
だが、俺が期待していたのはカレーではない。
「もしかしてカレーしか作れないのか?」
「あー! 今カレーを馬鹿にしたでしょー! カレーは奥が深いんだからね!」
「いや、別にそういう意味で言ったんじゃないけど、他に料理は作れるのかなーって思って」
「作れますー! なんだったらリクエストしてもいいよ!」
「言ったな? なら……」
こうして遅めの昼食を済ませ、ミナミの部屋でしばらく談笑した。
気が付けばもう5時になっていたので帰ろうとすると、ミナミに引き止められた。
「ちょっと待ってトモ!」
「ん? どうした?」
「裸のまま帰るつもりなの?」
言われて気づく。
自分が上半身裸なのをすっかり忘れていた。
ミナミから乾いたシャツを受け取り、今度こそミナミの家を後にした。
2日目は俺がリクエストしたシチューが出され、ミナミにどや顔された。
そして3日目もリクエストした唐揚げを食べて、ミナミの部屋で談笑していると
「あーあ、今日で私だけのトモも終わりかー」
と言いながら寝そべる。
「まだ終わりじゃないだろ?」
「そうだけどー、何も進展しなかったなーって思ってさー」
と言いながらゴロゴロ転がる。
俺としては3日間楽しかったけどな。
「進展してない事はないんじゃないかな」
と若干照れながら言うと、ミナミはゴロゴロと転がって俺の元まで来る。
「例えば例えばー?」
「えっと、ミナミの事色々知れたかなーって」
「胸の大きさとか?」
と言ってわざとらしく胸を強調する。
「そうじゃなくて、料理も頑張ってるし、一緒にいて楽しいって思えた」
素直な感想を伝えると
「んふふふふふふ」
と変な笑い方をしたと思ったら
「良かったー! 私もトモと一緒にいて楽しいよ! だから……何でもない」
ミナミが何を言いかけたのかは分かったが、敢えて聞かないでおいた。
きっと今聞くべき言葉じゃないからだ。
それからしばらくして俺が帰る間際に再び呼び止められた。
「3日間ありがとね」
「なんだよ急に。明後日にはまたミナミの番だろ」
「そうなんだけど、やっぱり寂しくなっちゃって」
「それは……、明後日まで我慢してくれ」
「うん、分かった」
こうしてミナミとの3日間は終わりを告げた。
最後は危なかった。
寂しくなると言われて、それはお互い様だよ。と言いかけてしまった。
自分が思っている以上に、ミナミに魅かれているのかもしれない。