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第13話 グループ

 担任はこの後、始業式があるから体育館に移動する事と、始業式が終わったらHRをやって今日は終わりと言う事と、明日からは通常授業になる事を告げると教室から去っていった。

 咲崎高校は前日に新入生の入学式を行うので、新入生も一緒だ。

 担任が去った後、ざわざわとそれぞれの友達やグループになって体育館に向かう。

 俺は友人が一人も居ない為一人で向かう。

 さっきまで俺と話していた及川は他の女子と楽しそうに話している。

 そこで気づいた。

 及川と一緒にいる女子に見覚えがあったのだ。

 名前は確か新島楓にいじまかえで

 成績は常にトップで運動も出来る様で、テニス部に所属していて去年はインターハイに出場している。

 容姿も亜麻色の髪を肩甲骨辺りまで伸ばしていて、風になびく髪がとても綺麗らしい。

 らしいというのは、俺自身が見た事が無いのと、クラスの連中が話しているのを聞いたからだ。

 運動部らしい引き締まった体ながら出る所は出ていて、誰にでも分け隔てなく接する天真爛漫な子らしい。

 あれ? このスペック何処かで聞いたような?

 などと考えていると、いつの間にか体育館に着いた。

 校長先生の長い話を聞き、再び教室に戻る。

 すると、意外な人物から声を掛けられた。

 それは、去年も同じクラスだったが全く接点のない、トップカーストに所属している男子だった。


「よう、随分変わったな? 及川から話聞いてびっくりしたよ」


 話しかけてきたのは水樹みずきだった。

 下の名前は憶えてない。

 なんせ接点ゼロだったからな。


「あ、ああ。 心機一転頑張ろうと思って」


 と、若干リア充パワーに圧されながら答えると、すかさず隣の席の及川が間に入ってきた。


「え~、彼女欲しいからイメチェンしたんでしょ~?」


 と言う言葉に、水樹は


「まぁ、動機はどうあれ、変わろうとするのはいい事だな」

「あ、ありがとう」


 水樹のフォロー? にまたもリア充パワーに圧されてまともに返事が出来なかった。

 やっぱり経験の差なのだろうか?


「ま、頑張れよ。自分を変えるなんて難しいと思うけど応援してるぜ」


 と言って水樹はグループに戻っていった。

 俺は内心ホッとしていると、また新たに声を掛けられた。


「君が佐藤君? 彼女が欲しくてイメチェンしたんだって?」


 予想外の人物、新島楓から話しかけられた。

 でも、及川経由なら当然なのか?


「ま、まぁ、そんな所かな」


 俺には眩しすぎてまだ相手するのは早すぎる!


「ふふ、そこは嘘でもそんな事ないよ! って言わないと。ストレートすぎるよ」


 くすくすと笑いながら指摘してくる。

 確かに言われてみれば馬鹿正直に彼女が欲しいからイメチェンしたなんて答えたら心象悪いよな。

 今後は気を付けなければ。


「ごめんごめん、まだこのキャラが定着してなくてさ。愛嬌って事で!」


 と返すと


「キャラなの?」


 と小首を傾げて聞いてきた。

 可愛い! その辺のアイドルより可愛いんじゃないか?

 と、ハートの矢が胸に刺さりそうになるが、すんでの所で理性で防御する。


「キャラっていうか、素の自分を出すのに慣れてない感じかな」

「そうなんだ~、じゃあ頑張らないとね!」


 と満面の笑みで返してくる。

 と、そこで及川が


「彼女作るにしてもさ、もっと交友関係広げないと!」


 とド正論をぶつけてきた。


「そうなんだけどな~。どうやったら交友関係広まるの?」


 と素朴な疑問を投げ掛けた。

 リア充ってなんであんなに交友関係広いんだろう?


「ん~~、自然と友達が増えてるかな」


 と全く参考にならない答えが返って来た。

 しかし、新島から思いもよらない提案が飛び出てきた。


「だったらさ、私達のグループに入らない?」

「それいいかも!」


 なん……だと!?

 俺がトップカーストグループに入る?

 いやいや、話が飛び過ぎて眩暈がしてくる。

 俺が悩んでいると


「ダメ……かな?」


 と、上目遣いで聞いてきた。

 ヤバイ! 凄く可愛い! こんなの男なら断れないだろ。


「ダメじゃないけど、水樹達はどう思うかな?」


 女子達が勝手に盛り上がって俺をグループに入れても、グループのリーダーがどう判断するかだ。

 ちなみに水樹はリーダーではない。

 リーダーは中居と言う奴だった気がする。

 確かサッカー部でエースだったはずだ。

 そんな中居にNOと言われたら、俺はまたぼっちの道を進む事になるだろう。

 それだけは避けたい。

 もしそうなった時、俺だけではなくめぐまで巻き込んでしまうからだ。

 そう考えていると


「大丈夫だよ! 私達がサポートするし、水樹は佐藤君の事悪くは思ってないみたいだったから」

「そうそう、それに中居も悪い奴じゃないしね!」


 そう二人が背中を押してくれる。


「じ、じゃあお願いしようかな」


 俺がそう答えると


「オッケー! じゃあ早速連絡先交換しよ!」

「私もー!」


 リア充ってこんな気軽に連絡先交換するのか!

 と驚いたと同時に、一気に女子の連絡先を二人ゲットした事に感動した。


「中居達には話しておくから、今日は一緒に帰ろうね~」


 と言って新島は水樹達の元に向かっていった。

 そして隣の席の及川は


「これからよろしくね~!」


 と言った後に


「好きな子が出来たら報告してよ! 協力するからさ!」


 と笑顔で告げてきた。

 新学期初日にトップグループに入れるなんてスタートダッシュ過ぎるきもするが、これがリア充のペースなのかもと思い、改めてリア充スゲェと思わされた。

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