アルバスはプロボースをすることに決めた。トレーシーはアルバスへの恋心を自覚した。
話はスピーディに進んでいく。
「アルバス先輩。魔法薬の材料、今日はお花多めですね?」
「んっ、トレーシー君。ちょっと飲みやすくしようと思ってね。どう? 魔法薬の専門家さん」
「これなら大丈夫だと思います。試してみましょう」
大きな鍋の両端に立って、アレやらコレやらを入れながら魔力を流す。
「……ねぇ、トレーシー君」
「何ですか? アルバス先輩」
トレーシーとアルバスの魔力が鍋を介して優しく優しく混じり合う。
ポイポイと薬草を入れられた鍋のなかは、ピンクになったりブルーになったり忙しい。
「結婚、しない?」
「え?」
ふたりの視線は鍋のなか。
イエローになったり、グリーンになったり忙しい。
「ねぇ、トレーシー君。私のところにお嫁においで」
アルバスの視線は鍋の中から動かない。
「えっと……」
トレーシーの視線も鍋の中から動かない。
「不本意ながら私は次期侯爵となってしまったので。私と結婚すると、キミは侯爵夫人ということになってしまうからメンドクサイかもしれないけれど」
「あの……」
アルバスがポイッと入れた花で鍋の中はグリーンからパープルになっていく。
「キミが嫌でなかったら、結婚しよう! トレーシー君っ!」
「あ……」
トレーシーがポイと入れた花で鍋の中はパープルからピンクになっていく。
「トレーシー君?」
「あの、アルバス先輩?」
「はい?」
「あの……申し込みは、セイデスのところへしてくださいね」
「……はい」
アルバスとトレーシーは、淡々と魔法薬の仕上げに入った。
のちに、その場にいたトラントは「それでいいの⁈」と、詰め寄りたくなるのをグッとこらえるのが大変だったと語った。