「この私がお姉さま……トレーシーよりも劣るなんてことはあり得ないわ。いえ、あってはいけないことなのだわ」
夜会以降、エリザベスの思考は姉であるトレーシーを
母譲りの美貌に細い体、可愛らしい仕草に可愛らしいドレス。
魅力的な自分。
魅力的な自分を活かせる自分。
そんな自分が、姉よりも
どうすれば姉を
エリザベスは、そればかりを考えていた。
「私が、お姉さまのお相手を
エリザベスは、トレーシーの作った魔法薬や魔道具を上位貴族の夫人たちに贈りまくった。
もちろん、可愛らしいカードに美しい文字と媚びた文章を添えることも忘れない。
「贈り物にカード。まずは私を知ってもらう所から始めないとね」
エリザベスには自信があった。
取り入るための基本は、男性も女性もさして違いはない。
結果、エリザベスはある公爵夫人のお茶会へ招かれることになった。
その場で出会ったのは侯爵令息。
奇しくも、その令息はメイデン侯爵家と対立する家の者だった。
金髪に青い目の、少し年上である青年は貴族らしく美しい。
(婚約者のいる方だけど構わないわ)
エリザベスには自信がある。
愛人であったとしても、本妻よりも愛される自信があれば怖くはない。
(しかも、メイデン侯爵家と敵対するお家。私が協力すれば、お姉さまのお相手であるアルバスさまの家名に泥を塗ることなんて簡単よ。ふふふ)
エリザベスの心は、暗い色をした喜びに満ちていた。