「私は戻って来た!」
「良かったわね、アナタ」
「本当に良かったですわ、お義父さま」
「良かったですね、リトル男爵」
トレーシーの父であるマックスは、金の力で爵位を買ってマックス・リトル男爵となった。
そして今宵は家族総出で夜会へとやってきたのだ。
「ありがとう、愛しい妻に可愛い娘よ。そして、娘の婚約者であるユリウス・イグナコス子爵令息。トレーシーの
「お金で買った爵位でも、貴族は貴族ですわよね。アナタ」
「そうだよ、ローラ。我が愛しの妻よ。さすが分かってるね」
「貴族に戻れて嬉しいですわ、お義父さま」
「そうか、そうか。エリザベス。そろそろ、お義父さま、は、止めて、お父さまと呼んでおくれ。もうダウジャン伯爵家に遠慮することはないんだ。これからは堂々と、親子としてやっていこう」
「お父さまぁ~」
「良かったね、エリザベス」
「うん。ありがとう、ユリウス」
「それにしても、こんなに短期間で爵位を買えるほど稼げるなんて。スゴイですね、リトル男爵」
「ふふふ。今までの実績があるからね。顧客はしっかり掴んでいるし。魔道具や魔法薬は、トレーシーからでなくても仕入れられる。もっと安く魔道具や魔法薬を作ってくれる所はあるからね。そこを私は探し出して取引しているというわけさ」
「素敵よ、アナタ」
「ふふふ、そうかい? ローラ」
「お父さま、出来る男のオーラが出ています」
「そうかい? エリザベス」
「ボク、しっかり勉強して後を継げる立派な男になります」
「期待しているよ、ユリウス」
「それにしても、アチラの方が騒がしいですわね」
「そうね、お母さま。何かしら?」
ユリウスは何かに気付いて顔を歪める。
「えっ? アレは……」
「あれは、トレーシーじゃないか!?」
「「えっ!」」
マックスの言葉に驚いて、ローラとエリザベスは彼の指さす方を見やった。
「どういう事? お義姉さまがドレスアップしているわ! それに一緒にいる殿方を見て!」
「あぁ、何てこと。あの方は独身令嬢人気ナンバーワンの高位貴族独身男性であるアルバス・メイデン侯爵令息ではなくて?」
「そうですわ、お母さま。公爵令息さまとお義姉さまが、どうして一緒に?」
「あー、あのクソ憎たらしいダウトン子爵の息子もいるぞ。今はダウジャン伯爵さまか。忌々しいヤツだ」
「アナタ、せっかく見かけたのですから、私、嫌味のひとつも言いたいですわ」
「そうですわ、お父さま。あの人たちのせいで、私たち酷い目に遭ったのですもの」
「そうだな。ちょっと
マックスはニヤリと笑うと人混みをかき分けてトレーシーたちのいる方へと進んでいった。