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第22話

「私は戻って来た!」

「良かったわね、アナタ」

「本当に良かったですわ、お義父さま」

「良かったですね、リトル男爵」

 トレーシーの父であるマックスは、金の力で爵位を買ってマックス・リトル男爵となった。

 そして今宵は家族総出で夜会へとやってきたのだ。

「ありがとう、愛しい妻に可愛い娘よ。そして、娘の婚約者であるユリウス・イグナコス子爵令息。トレーシーの仕入れ値が上がって大幅な減収になったり、爵位を無くすなどの憂き目にあったが。それをバネにして稼ぎに稼ぎ、ついに男爵位を手に入れた。これで私は再び貴族だ!」

「お金で買った爵位でも、貴族は貴族ですわよね。アナタ」

「そうだよ、ローラ。我が愛しの妻よ。さすが分かってるね」

「貴族に戻れて嬉しいですわ、お義父さま」

「そうか、そうか。エリザベス。そろそろ、お義父さま、は、止めて、お父さまと呼んでおくれ。もうダウジャン伯爵家に遠慮することはないんだ。これからは堂々と、親子としてやっていこう」

「お父さまぁ~」

「良かったね、エリザベス」

「うん。ありがとう、ユリウス」

「それにしても、こんなに短期間で爵位を買えるほど稼げるなんて。スゴイですね、リトル男爵」

「ふふふ。今までの実績があるからね。顧客はしっかり掴んでいるし。魔道具や魔法薬は、トレーシーからでなくても仕入れられる。もっと安く魔道具や魔法薬を作ってくれる所はあるからね。そこを私は探し出して取引しているというわけさ」

「素敵よ、アナタ」

「ふふふ、そうかい? ローラ」 

「お父さま、出来る男のオーラが出ています」

「そうかい? エリザベス」

「ボク、しっかり勉強して後を継げる立派な男になります」

「期待しているよ、ユリウス」

「それにしても、アチラの方が騒がしいですわね」

「そうね、お母さま。何かしら?」

 ユリウスは何かに気付いて顔を歪める。

「えっ? アレは……」

「あれは、トレーシーじゃないか!?」

「「えっ!」」

 マックスの言葉に驚いて、ローラとエリザベスは彼の指さす方を見やった。

「どういう事? お義姉さまがドレスアップしているわ! それに一緒にいる殿方を見て!」

「あぁ、何てこと。あの方は独身令嬢人気ナンバーワンの高位貴族独身男性であるアルバス・メイデン侯爵令息ではなくて?」

「そうですわ、お母さま。公爵令息さまとお義姉さまが、どうして一緒に?」

「あー、あのクソ憎たらしいダウトン子爵の息子もいるぞ。今はダウジャン伯爵さまか。忌々しいヤツだ」

「アナタ、せっかく見かけたのですから、私、嫌味のひとつも言いたいですわ」

「そうですわ、お父さま。あの人たちのせいで、私たち酷い目に遭ったのですもの」

「そうだな。ちょっとしてやるか」

 マックスはニヤリと笑うと人混みをかき分けてトレーシーたちのいる方へと進んでいった。

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