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第51話

「ルノ、しつこい」

「いいじゃないか。新婚なんだ」

「新婚っていつまで……」

「いつまででもいいぞ。死ぬまで新婚って言い張るのもいいのではないか?」

「いや、ルノ。それじゃ、ただのバカだ」

「バカにもなる。私のパートナーは魅力的過ぎるから」

「ハハッ。なんだよそれ」

 奥さま部屋、正確にはオレ部屋でルノがじゃれついてくる。

 レースとフリルが最低限だけ使われたシンプルな部屋は、白と青と茶色で出来ている。

 白は青の影響を受けて、純白というより銀に近い色に見える。

 家具の茶色は総じて淡く、明るい。

 甘さ控えめのスッキリした部屋は、オレとルノの色。

「確か、この部屋はオレの部屋だったはずなんだかなぁ~」

「いいじゃないか。パートナーなんだから」

 あれから変わった事と言えば、オレが使う作業用の机が運び入れられたこと。

 部屋は少し狭くなったが、仕事は少し進めやすくなった。

 仕事に必要な物は殆ど実家にあるけれど、自宅で出来ることも沢山ある。

「ルノは自分の仕事をしなくていいの?」

「ここでしてる」

 ルノの仕事机も運び込まれた。

 小さな事務机だ。

 ルノがここで出来る仕事も沢山ある。

「何も奥さま部屋でしなくても」

「ここがいい」

「居心地がいいから?」

「いや、ミカエルがいるからさ」

「またまたぁ~」

 窓から入って来るのは、午後の日差し。

 心地よい、秋の日の午後。 

「少しでも長く一緒にいて、点数稼がなきゃ」

「ふふ。なんだよ、それ」

 ルノはオレを愛していると思う。

 溺愛だ。

 オレは一瞬、その愛に溺れて息が止まりそうになったけど。

 オメガだからって甘く見てたのは、オレも同じなんだと思う。

 オメガだって、そうじゃない人達と同じように恋も愛も求める。

 溺愛する羽目には、なりたくないけど……。

 ……いや。

 もう手遅れなのか?

「いや、私は本気だぞ?」

 ルノがオレの首に腕を巻き付け体重をかけてくる。

「重たい」

 オレは笑いながら、椅子を半分、ルノに明け渡す。

「キミが自分から噛んでって、言いたくなるようにしたい」

 オレのチョーカーにルノがガシガシと歯を立てる。

「ふふ。まだ全然ダメだな」

「そりゃ残念」

 ルノは笑いながら頬に音を立ててキスを落とすと、自分の事務机に戻っていった。

 同じ場所で別々の作業をしていても気まずくならない距離感が心地よい。

 いつかオレが項を噛ませるとしたら。

 それは。

 ルノ。

 お前だよ。

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