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第50話

「お騒がせしました」

「んっ。ミカエル君っ。仲良さそうで良かった」

「本当に良かったわ、ミカエルさま。ルノさま」

 久しぶりにルノとふたりで来た王宮では、両陛下に大歓迎を受けた。

「ハハッ。指輪、ありがとうございました」

 オレとルノの手には、お揃いの指輪。

 左手の薬指には、笑ってしまうほど大きな存在のあり過ぎるペアリングが収まっていた。

「これからは、もっと魔法道具の開発に集中できるようにしますね」

 チロリと横を伺えば、ルノがバツの悪そうな顔をしていた。

「よろしく頼む」

 国王さまが満足そうに笑う。

「お願いね。魔法薬の方も、進めて貰えると嬉しいわ」

 王妃さまが微笑ましい光景を眺める目をしながら笑う。

「そうですね。まだ必要ないとは思いますが。安全に使えるよう、少しずつ進めていきましょう」

「頼もしいな、ミカエル君っ」

 国王さまが嬉しそうに笑いながらバンバン肩を叩いてくる。

 ちょっと痛いので手加減して欲しいです。

「でも簡単なモノからでいいぞ。安全性を確認するのは大変だろうからな」

「そうですね」

 確かに。安全を確認する前に王子へ魔法薬を使うわけにはいかない。

 そうなるとオメガで人体実験、なんてことになりそうでマズイ。

「んん~。そうね。オメガの方の体が楽になるようなモノから始めて貰えたら良いかもしれませんわ。大変なのはヒートだけではないでしょう?」

 さすが王妃さま。国母さまは言うことが違うね。

「ああ、そうですね。御子さまが健やかに成長されるのを助ける魔法薬も考えたほうが良いかもしれません」

「ミカエル君は何か使っていたのかね? 普通のオメガよりも体が大きいよね、ミカエル君は」

 オレの体を確認しながら国王さまが言う。

「成長を促すタイプですか? どうでしょうか。小さな頃の事は流石に……。兄たちに確認してみますね」

「お願いするわ。持って生まれた体質は仕方ないけれど、少しでも健康で丈夫に育って欲しいから」

 王妃さまが黒い目をキラキラさせている。これは兄さまたちも呼び出される可能性アリだな。

「でも、オレのように体格の良いオメガになってしまうかもしれませんよ?」

「そんなことは構わないわ。病気や怪我に強い、元気な子になって欲しいもの」

「ああ。元気な子がいいね。それにミカエル君のようになってくれるなら、むしろ嬉しいよ」

「ありがとうございます」

「ふふふ。ミカエルさまは、こんなに素敵なのですもの。賢くて強い子になってくれるのなら大歓迎だわ」

 王妃さまは褒め上手でいらっしゃる。

 でも褒められて悪い気はしない。オレ、頑張ります。

「ありがとうございます、リアナさま。では、小さなお子さまが使えるようなモノも調べてみますね」

「ええ。そうしてください。ヒート関係のモノもなるべく早く用意して欲しいわ。フェロモン関係での苦労は少ないほうが良いから」

「はい」

「今困っている子たちの事も気になる。そちらについても、なるべく早く作業を進めてくれると嬉しいな。設備や人手が必要なら手配するよ」

 国王さまのサポートがあるのは心強いね。

「そうですね。なら、ヒート管理用の魔法薬の改良と量産化も進めていきましょうか?」

「いいわね。そうして貰えるかしら?」

「はい」

 話がどんどん進んでいく中。

 ルノは空気だった。

 王宮での用事は、基本的にはオレのモノなので。

 ルノが付いて来ても分からないのでエスコート役というか、護衛役というか、そんな感じだ。

「オレだけでも大丈夫なのに。ルノだって忙しいだろ? 護衛にはジルベルトが付いて来てくれるんだから、毎回ついてこなくてもいいよ」

「いや、私が一緒に来たいだけだ。私だって、そこそこ腕は立つ。護衛の足しくらいにはなるさ」

「ふふ。シェリング侯爵さまが護衛役とか、贅沢だね」

「ああ。贅沢だ。だが、キミにはその価値がある」

 真顔で言うルノを見てオレは笑う。

 今までもオレは気遣って貰っていたが、最近のそれは少しくすぐったい。

 この間、実家に行った時の事だ。

 ノイエル兄さまに、幸せか? と、問われた。

 オレは、幸せだ、と、答えた。

 ジョエル兄さまには、楽しいか? と、問われた。

 オレは、楽しい、と、答えた。

 兄さまたちに守られて、オレは大きくなった。

 今も気遣われているし、守られている。

 そのことは、純粋に嬉しい。

 だが、オレの世界は広がった。

 兄さまたちしか居ない世界から、もう少しだけ広い場所へ。

 ただ守られているだけではない、少しくすぐったい世界へ。

 オレは来られた。

 そこには、やりがいのある仕事もあるし、オレの価値を認めてくれる人たちもいる。

 何より、愛するアルファルノがいる。

 オレは幸せだ。

 楽しく毎日、暮らしている。

 お母さま。お母さま。貴女が命かけて生み出した命の掴んだ幸せが見えますか?

 例え、見えなかったとしても大丈夫。

 オレがそちらに行ったときに直接、お話しますからね。

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