「愛してる……愛してる……」
「オレも愛してるよ、ルノ」
何度も、何度も、ルノは言葉を繰り返してはオレの肌にキスを落とす。
ルノの唇が辿る形で、オレは自分の体の形を知っていく。
「愛している……愛してる……愛してる……」
うわ言みたいに繰り返す言葉に、どれだけの意味があるかなんて知らない。
それでも、オレは必死に返事を返す。
「愛してる……オレも……愛してる……」
言葉にすればするほど、男の体が熱くなるから。
オレのアルファが熱を増すから。
求められなくても、言葉にする。
青みを帯びた銀髪を一束、口元に寄せて口づける。
左手を引き寄せて、指先にキス、キス、キス。
片手腕立て伏せの体勢になってしまったルノを見て薄っすらと笑う。
幸せだな、と、唐突に思う。
オレは上半身を起こし、更なる幸福感を求めて愛しいアルファにねだる。
「ルノ……キスして……」
全身に降っているモノは何だ? と、いうのは無粋。
唇に唇が欲しいだけ。
「んっ……」
「……っ」
ねっとりと絡みつくようなキス。
舌を追いかけて縋りつくように絡めれば、ルノの広い背中がピクリと跳ねた。
もっともっと深く深く繋がれとばかりに追いかけるけれど。
やがて唇は離される。
薄目を開けてルノを伺えば、こちらを見る欲にギラつく瞳と視線がかち合った。
ニヤリと笑ったオレのアルファは、再び唇を浅く重ねて離し、オレの唇をフワッと一瞬舐めてまた離れた。
エロい。
快感がゾクッと駆け抜けていった。
いったん体を離したルノは、ベッド横に置いた机の引き出しから瓶を取り出す。
「それって……ヒートの時のヤツ?」
「ん? ああ。そうだよ。お義兄さまのくれた……」
「まだあったんだ……」
「うん。あの時は、最初だけしか必要なかったから……」
「……」
えーと。
暗にお前の体エロいって言われたような気がするけど、気のせい?
「今日はヒートでもないし。まだ二回目だから必要だよね」
お兄さまのくれたピンク色のローションが入った瓶を片手に、ニヤッと笑うルノ。
エロい。
ベッドに戻ってきたルノを、オレは無言で押し倒す。
「わっ?」
ローションの瓶を片手に持ったままコロンと仰向けに寝転がるルノ。
「えっ? なに?」
「……」
オレを見上げるルノが、お間抜けカワイイんですけど。
青みがかった銀髪が白いシーツの上に散らばり、青い目がキョトンとしている。
整った顔は一見女性っぽく見えるけれど、逞しく鍛え上げられた体は厚みのある筋肉に覆われていて女性になんて見えない。
いつもは服の下にある部分の肌は、とても白くて。
所々に配置された色素の薄いピンク色やら茶色やらが、とても映える。
とてもエロい。
戸惑った瞳でオレを見上げるルノは、不安げに思えるけれど。
高ぶった欲望が萎える様子は伺えない。
どうしてやろうか、コレ。
「えーと……ミカエル?」
「……」
オレは無言でルノに覆いかぶさり、その唇に食らいつく。
激しくて乱暴なキスに応える舌。
夢中で貪り合う。
絡み合う舌は口腔内を暴れて、飲み込みきれなかった唾液は糸を引いて垂れていく。
「……んん……っ」
「っ……っんっ」
ルノの両手がオレの背中に回る。
大きくて少しザラつく手が、肌の上を滑っていく。
何かを確認するように。
感触を愉しむように。
煽るように。
オレの背中を撫でている。
ルノの髪を弄ぶように触れていたオレの手は、やがて縋りつくように彼の頭を抱えていた。
愛するアルファの上にまたがって、その頭を抱えて唇を貪り。
腹の辺りに置いたオレの尻に感じるのは、熱く高ぶった欲望。
ルノの手が下へ下へ降りて、尻を撫でる。
背中がビクンと跳ねて、思わず唇を離す。
「んっ……ルノ」
「ぁ……ん、ミカエル? ねぇ?」
「何?」
「あの……やっぱり、キミも突っ込みたい?」
「……は?」
何言ってんだ、このアルファ。
「いや……キミも男だから……そっちをしたいのかと……」
「……」
え?
なんですか?
オレがそっちをしたい、と言ったならば。
ルノは受けて立つということでございますか? そうですか?
「キミがしたいなら……私は……」
「……」
ちょっと、ナニ言ってんだ。
このアルファ。
もぅ……もぅ……もぅ……。
「抱いてっ!」
「はぁ⁈」
「オレの気が変わらない内に、さっさとしろよっ」
いや、変える気なんて無いんだが。
なんてタチの悪いアルファなんだっ。
オレ、しっかり愛されちゃってんじゃんっ。
それをオレが望んだならば、突っ込まれる気満々のアルファなんて。
どこ探したっているわけない。
いま目の前にいる男以外は。
「あっ……えっ? はい?……」
オレは右手でルノの左手首を、左手で右手首をひっつかみ、体を後ろに傾けた。
ベッドに仰向けになったオレを見下ろす体制になったルノに、ピンク色した瓶を突き出す。
「お前の役目っ!」
言いながらオレの顔がカッと熱くなったような気がするけど今さらだ。
全身が興奮で赤くなっているのだから、ルノに分かったかどうかは謎。
オレは今、とてつもなく興奮している。性的に。
「とっととしろっ」
「あっ、はいっ⁈」
慌ててルノはローションを手のひらに垂らして。
「ちょっと冷たいかも……」
と、言いながら、オレの後ろに手をかけた。
「……」
ねぇ。それって、お作法なの?
前も聞いたセリフにツッコミたいけど、ツッコまない。
今はそれどころじゃないから。
「……んっ」
ローションをまとわせた指が、オレの中につぷんと入って来る。
ゆっくりでも慣れない刺激。
「ミカエル……」
「んっ……」
甘く呼ばれて唇を重ねて。
気を紛らわせながらルノは、後ろに入れた指をゆるゆると動かしていく。
気付けばM字開脚のような体制でルノに全てを晒しつつ、秘所を指で解されていた。
「苦しくない?」
「んん……大丈夫……だ、と思う……」
自信はない。
いつの間にか指は二本に増やされ、キスに加えて空いていたルノの左手が肌の上を巡る。
「あぁ………ンッ……」
胸の飾りを少しザラつく肌がこすっていった。
「ミカエル……どう?」
どうと言われても。
答えようがないので、舌を絡めてやる。
下と上とで淫猥な音が響き。
指が三本に増やされ。
甘い喘ぎが止まらなくなった頃。
「いい?」
「んっ……」
イヤって言ったら止めるのか?
そんな意地悪な質問をする時間も惜しいほどオレの体は切羽詰まっているような気がするが、多分、気のせいだ。
ベッドの上に仰向けで転がされて。
一気に貫かれる。
「ぁあっ……ぁッ……きつっ……」
「っ……ぃいっ……はっ……」
「あぁ……あっ……ああっ」
「んっ……うっ……ンンッ……あああっ……」
熱くて、甘くて、エロい喘ぎ声。
どちらのモノか分からなくなるほどに上げまくる。
肌を滑り落ちて行くのは汗?
それとも、もっと、別のもの?
つるつると滑りやすくなった筋肉質な体に爪立て縋りつく。
「ああぁ……ンンッ……ンンン……ッ」
二人同時に解放する欲望。
真っ赤になるまで高めた欲望を解放した途端、一気に真っ白くなる世界。
――――気持ちイイ――――――――。
ついばむようなキスをして。
そこからまた、再びの高みへ ――――――――。