「なんだか、逆にプロポーズされちゃった感じだなぁ」
「そうだね、思ってたのとは違ったけど」
今日は背を向けられることもなく、ベッドに二人で横たわる。
「え、雫もプロポーズするつもりだったの?」
「というか、押しかけ女房みたいな? 迎えに来てくれなかったら、こっちから行こうと思って」
「それで履歴書?」
「みーちゃんの事、信じてないわけじゃないけど、人の気持ちは変わるから」
「私は……他のことはブレブレだけど、雫への気持ちは変わらないよ、絶対に!」
「みーちゃん」
雫が目を潤ませて私を見る。
あんなに遠くに感じていた距離が縮まる。物理的にも、手を伸ばせばーーいや、伸ばさなくても触れ合える。
「そうだ、あのレポートどうだった? 読んだんでしょ」
「え、あぁ……」
あれ、イチャイチャモードなのかと思ったのにな、少しガッカリしたけれど。
「あれね、いいと思う」
素直な感想を続ける。
「女性が気軽に一人旅が出来る宿とか」
「もちろん、二人でもグループでもいいんだけどね、一人旅のハードルを下げたいよね」
「あとはSNSの活用だっけ、それは雫に任せるよ。私は前の会社の人脈で海外からのお客を呼び込もうかな」
「いいねぇ、夢は広がるねぇ」
二日前の機内では、雫とこんな話が出来るなんて想像すらしてなかったな。
なんだか不思議だ。
「みーちゃん」
擦り寄ってきて私の腕の中に収まる雫。
手触りの良い髪を触り、頭を撫でながら、今度こそか? と期待に胸膨らむ。
しばらくはジッとして雫の暖かさを堪能する。
「雫?」
そろそろどう? と顔を覗く。
「あれ」
スースーとまた気持ち良さそうに。
「寝てる」
何かが頬に触れた気がして目が覚めた。
「おはよ」
雫の笑顔が目の前にあった。
「ん」
「昨日、秒で寝たね、私」
「疲れてた?」
「そういうわけじゃないけど、みーちゃんに抱きつくとすぐに寝れるみたい」
「あれ、それで前の晩も?」
「なんだ、ばれてたのか」
クスクスと照れたように笑う。
「もう朝?」
「うん、今日ね、午後からの出勤にしたの。みーちゃんと一緒に出ようと思って」
「そう、じゃゆっくり出来るね」
「みーちゃん……キスしていい?」
「ん……」
返事の前にもう口を塞がれていた。
長いキスだった。
これは、お誘いでいいんだよね?
名残惜しく、唇が離れた時に聞いた。
「満足?」
「まだ」
「私も」
今度は私から口付けて、雫に覆いかぶさる。
「ーーん、みーちゃん」
こちらも、もっと長いキスをする。
「ーー朝、だよ」
「そうだね、朝だね」
柔らかい首筋を軽く舐める。
「明るいのは、嫌?」
窓の外からは、車の音や他所の生活音が聞かれる。
「ーー嫌では、ないけど」
嫌だと言われても、もう止められないのだけれど。
「焦らす雫が悪いんだよ」
「ーーえ、焦らした? ーーあっ、んん」
スウェットの上から強く胸を揉みしだく。
「その顔、可愛い」
「ーーっ! みーちゃーー」
「そう、もっと呼んで」
雫の感じる場所を攻めながら、リクエストをする。
「ーーみーちゃん、いぃ」
乱れながらも、私の名前を呼ぶ雫にゾクゾクする。
「ーーっは、もうーーみーちゃん、だめっ」
「雫、まだだよ」
最初は、みーちゃんと呼ばれるのが慣れなくて、猫みたいだから嫌だなんて言ってたけど、今じゃ呼ばれる度に愛しさが募っていく。
「もっと感じてーー雫、愛してる」
「ーーみーちゃん、私もーーあっ、あぁぁ」
「ごめん、仕事前だから手加減するつもりだったのに」
そんなこと出来なかった。
愛おしすぎて、全力で愛してしまった。
「大丈夫?」
「じゃないよ、もう!」
「ごめん。今日帰るんだと思ったら、つい」
「罰として、みーちゃんはーー」
「え、なに?」
「クリスマスに、プロポーズをすること!」