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第31話 そして

 話し終えた私は、冷めたお茶を一気に飲んだ。

 雫を見れば、静かに涙を流していた。

 半年ぶりに見る雫は髪が伸び、頬がこけていた。離れている間に、いったいどれだけ泣かせたのだろうか。


「ごめん、本当に言い訳ばかりで。連絡するタイミングは何度もあったのに。私がバカだったの。今、話しながら気付くなんて。ずっと好きだった、離れていても、別れを覚悟しても忘れられなかった。今でも大好きなの」


「ほんと……ばか」

 泣きながらも、小さく呟く雫を見つめる。

「うん、ごめん」

「違う、ばかなのは私。私は……捨てられたんだと思ってた。だから忘れようとして……」

「全部、私のせいだから。雫は泣かないで」

 溢れる涙を両手で拭いながら、続けた。

「ねぇ雫、私にもう一度チャンスをくれない? 結局ね、恵さんと旅館を続けることにしたの。でもいろんな事があって今はまだ不安定でね。経営を立て直して軌道に乗せるのに少し時間が--でも、必ず迎えに来るから。私と一緒になって欲しい」

「みーちゃん?」

 勢いでプロポーズみたいになってしまったけれど、心からそう思っている。いつか私が死ぬ時には雫にそばにいて欲しい。今度は私がお兄ちゃんに惚気てやるんだ。私の彼女も最高だよって。

「だめかな?」


「超、遠距離恋愛だね」

「えっ、それって?」

「うん、待ってる」

「ありがと、雫」


 私は雫を抱きしめた。

 この思いを、この気持ちを。

 二人の選択を。

 二度と壊してしまわないように、そっと。


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