話し終えた私は、冷めたお茶を一気に飲んだ。
雫を見れば、静かに涙を流していた。
半年ぶりに見る雫は髪が伸び、頬がこけていた。離れている間に、いったいどれだけ泣かせたのだろうか。
「ごめん、本当に言い訳ばかりで。連絡するタイミングは何度もあったのに。私がバカだったの。今、話しながら気付くなんて。ずっと好きだった、離れていても、別れを覚悟しても忘れられなかった。今でも大好きなの」
「ほんと……ばか」
泣きながらも、小さく呟く雫を見つめる。
「うん、ごめん」
「違う、ばかなのは私。私は……捨てられたんだと思ってた。だから忘れようとして……」
「全部、私のせいだから。雫は泣かないで」
溢れる涙を両手で拭いながら、続けた。
「ねぇ雫、私にもう一度チャンスをくれない? 結局ね、恵さんと旅館を続けることにしたの。でもいろんな事があって今はまだ不安定でね。経営を立て直して軌道に乗せるのに少し時間が--でも、必ず迎えに来るから。私と一緒になって欲しい」
「みーちゃん?」
勢いでプロポーズみたいになってしまったけれど、心からそう思っている。いつか私が死ぬ時には雫にそばにいて欲しい。今度は私がお兄ちゃんに惚気てやるんだ。私の彼女も最高だよって。
「だめかな?」
「超、遠距離恋愛だね」
「えっ、それって?」
「うん、待ってる」
「ありがと、雫」
私は雫を抱きしめた。
この思いを、この気持ちを。
二人の選択を。
二度と壊してしまわないように、そっと。