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第34話『スキンヘッド暴れる』


 一体何が起こっているのか?


 肉薄する四体のスキンヘッド。これを通すまいとする女。紀子ら三人は突然の事に数歩下がって身構えた。関わる理由が無い。単純な話だ。

 だが、四体の内、三体が明らかに紀子らへと立ち向かって来た。


「え~、どうすんだよ、これっ!?」


 既に抜刀した紀子は、その切っ先を下段に構え、ボビーやいずみに対し、半歩前へ。

 口の端を楽しそうに歪め、ちらちらと年長のボビーの顔を見やる。


「フ~ム。彼ラは一体……」

「来ます!」


 緊張したいずみの声が響く中、赤みがかった肌のスキンヘッドが三体、およそ人の動きとは思えぬ機械的な走りで真っ直ぐに突っ込んで来た。


「しゃあねえな!」


 ぺろり、舌なめずりした紀子は、腰を低く、と思ったら前へ出る!


「へあっ!!」

「っ!?」


 追突する寸前、脚を払う様に切り上げ、すり足で左斜めへと進や振り上げた剣を続く二人目へと振り降ろした。

 ガッキィィィィィィンンンンンン……


 異様な振動音が響き、紀子の持つ水晶の剣がワンと唸り、そのスキンヘッドはまるで何かの力に守られているかの様に、一瞬だけ白く輝いた。先ほど、女の槍を弾いた時と同じ反応に思えた。


「かってぇ!」


 それと同時、最初に下から切り上げたスキンヘッドは、もんどりうって転げ、アスファルトに火花を散らす。


「★◇●※っ!!」


 何やら聞き覚えの無い言葉を叩きつけられ、咄嗟に身をかわす紀子の前を、そいつの腕が横凪に払われ、届かない筈のその間合いで、紀子の剣は激しく火花を散らす。何か、見えない力が!


「いっつ!」


 ジンと痺れる手を無視し、切り返すや滑り込み、相手の脚を崩しにかかる。が、その異様な感覚に、紀子は目を見張る。固い。まるで金属かなにかの様な。ごつごつとした肌ざわりだ。

 その相手を踏み台に、三人目のスキンヘッドが宙を舞う。その時、ロングコートの下に生えた多脚の下半身を、紀子ははっきりと目に捉えた。


「こいつら、ロボットだ!!」


 そのまま、左の太腿で相手の下半身を持ち上げる様に崩し、そのずんぐりとした異様に重い機械の身体を、ひっくり返そうとするのだが、多脚の身体は普通なら地面に叩きつけられる所を妙な具合で耐えてしまう。やっぱり人間じゃ無い!


 やばい!!


「いずみちゃん!?」


 ボビーやいずみが危ない!!

 そう思って、振り向いたその先には、二体が火花を散らして倒れ伏していた。


「え?」

「ん? 紀子チャンまだ~?」

「えええ!?」


 ひょうひょうとしたボビーは、ラッパズボンの埃を軽くはたき、びっくりして目をまん丸にしてるいずみを尻目に軽くウィンク。そのぶ厚い唇をにぃっと歪ませた。


「ハリーハリー」

「う、うっせえ! こいつ、しぶといんだ、よっ!!」


 振り回すスキンヘッドの腕を取り、そのまま投げをうつと簡単に転がってぐしゃり。ボムと煙を吐いた。


「あ、あれえ?」


 なんか思ったより呆気なく壊れてしまったらしく、拍子抜けだ。

 そんな紀子に、ボビーは右手の親指をぐっと立て、にっかり。


「あ、ああ。あんがとよ……」


 見れば、あの女と残りのスキンヘッド一体が、くんずほぐれつに揉み合っている。


 まぁ、元々関わりの無い事だからね。


「行こっか?」

「OK~」

「あ、はい!」


 取り合えず、元来た道を戻ろうか。

 ちらり、流し見れば例のスキンヘッドたちは、ぐったりとまるで陸に上がったタコみたいになっている。

 どんだけ強いのかと思ったら、なんか全然弱くて逆にびっくりだ。


「何だったんだろうな、こいつら」

「オ~イ、紀子チャーン!」

「急いで離れましょーう!」


 気が付けば、二人は少し先を歩いていた。

 慌てて追う紀子だったが、最初に倒された一体から、スキンヘッドが消えていた事には流石に気付かなかった。



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