「お疲れ様で~す!」
「お疲れ様~!」
アルバイト初日は目が回る程に覚える事が多くて、きりきり舞いの
土曜という事で更衣室も人が多く、あたふた私服に着替えて猫耳と猫尻尾のロボットアタッチメントを消毒スプレーを吹きかけ専用ケースに仕舞い、急いで部屋を出ると。
「お疲れ様。一日働いてみて、どうだった?」
「お疲れにゃん。明日からもやってけそうかにゃ? にゅふふふ」
あまねさんとミャオさんがニコニコと待っててくれてました。
あまねさん、もう帰る支度が出来ていて、ちょっと年上っぽい素敵な私服姿。ミャオさんはまだお店があるみたいで、可愛らし過ぎるメイド服から真っ白な猫耳と尻尾がにょっと伸びてて、ゆらゆらとさせてます。
はわわわわ。
「お、お、お疲れ様でした! んも~、目が回っちゃって回っちゃって、大変でした!
「んふふふ……慣れれば大丈夫よ。明日もよろしくね。まなみちゃんはもう、うちのチームなんだから」
「そうにゃ~。明日、休んだら、めっだにょ」
「わ、わっかりました~! 絶対! ぜえ~ったい休まないで来ますから!」
「うん。宜しい」
「宜しいにゃ。んじゃ、ちょっと駅までチラシ配りのついでにお見送りするにゃん」
「わ~、ありがとうございます~!」
「むふ。い~って事にゃ。んじゃ、タマ姐ぇ~、ちょっと逝って来るにゃ~ん!」
「あ、ちょっとミャオ!」
店の奥からタマさんの声が飛んで来たけれど、私たちの手を引いてダッシュで駆け出しちゃうミャオさん。
「い、良いのかなぁ~」
「良いにゃん良いにゃん」
「ミャオちゃんは、言い出したら鉄砲玉だから」
「何ですか、それ」
「当たるまで止まらない」
「どこに!?」
「にゃはははははは!」
階段を駆け下り、三人で目の前の公園を突っ切って、九十九電機の十字路を右折。まぁ、夕方でも凄い人の群れ。他のお店のメイドさんたちも、声を張り上げて客引きしてるし、怪しい日本語も飛び交っててまるでサバトみたい!
ああ、思い切ってアルバイトに応募してみて、良かった~!
なんかこう、世界がぱ~っと広がる感じ? 広がり過ぎて、何だか方向感覚が狂いそう。お、送って貰って正解かも!
三人でキャッキャと笑いながら小走りに抜けていたら、何か変な音楽が。
「あ、ごめ~ん」
あまねさん、慌てて懐からスマフォを取り出しました。あ~ん、アイフォンの高い奴~! いいな~。ん? 男の人の声?
するとあまねさん、通話を切るとパンと両手を合わせて謝って来ました。
「ごめ~ん! ちょっと急用が!」
「むふ。男にゃ」
え~っ!!?
どや顔のミャオさん。ぺろりと舌を出すあまねさん。こ、これは確定的だわ~。
「という訳で、ホントごめん!」
「いいにゃいいにゃ。裏切り者はさっさと行くにゃ」
「あの、その、お、お疲れ様です~」
「あはははは。二人とも、また明日ね」
「あ~、あ~、聞えないにゃ~。しっしっ」
「ひど~い。ぐれてやる!」
「え!? あの、その!」
「も~、冗談よ。じょーだん。じゃね!」
小走りで駆けて行くあまね。髪が弾む様に揺れて、心の弾みようが伝わって来るみたい。
「いいな~」
「いいにゃ~」
「え!? いないんですか? そんなに可愛いのに!?」
「いないにゃん! いないにゃん! マジまんじにいないにゃん! それよりまなみちゃんは、どうなにょ~ん? ん? んんん?」
「あ~……いないデス……」
ちょっと見栄張ろうかと逡巡しちゃった。ぐふ……