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5.友情と愛情の違いは何?

待望のお昼だ。

俺は食券を買わずに先に座席を確保しておく。

昨日の状況を見てわかったが、

満席にならないもののそれなりに席は埋まる。

4人一緒に食べたいなら早めに行動するにこしたことはない。


さち「恭平、ありがと」


さちが最初に来た。

注文したものを見ると今日はチキン南蛮定食のようだ。


俺「今日はチキン南蛮定食なんだな」

さち「こまめに頼んどかんとな」


チキン南蛮はよほど好きなメニューなんだろう。

ご飯も地味に大盛りになっている

スタイルいいのに脂質が多そうな料理食べるのか。

さすがに太るとかそういうこと言ったら失礼だよな。


俺「ご飯大盛りなんだな」

さち「ご飯おいしーやん」

俺「カロリー消費大変そうだな」

さち「脇腹か脇腹見ていうてんのやな」


そんなことを言ってるがどうみても太っていない。

服で隠れているから正確にはわからないけど、

細すぎず太すぎずの感じで非常にバランスがよさそうだ。


さち「あ、そんな目で見ても脇腹見せてあげへんで」

俺「言ってないぞ!?」

さち「目は口ほど物を言うってな」


ケラケラと笑うさち。

笑顔が本当に多い子だな。

こっちまで楽しくなってくる。

……ちょっと嫌なこと思い出してしまった。


庄司「席確保助かる」

諏訪「露木君、ありがとう」


二人が揃ってこちらに来た。

嫌なことなんて思い出してもしょうがない。

切り替えていこう。

二人の昼ご飯は日替わりの麻婆豆腐定食らしい。

真っ赤で結構辛そうな感じだ。


さち「おそろいやね」

諏訪「日替わりでお揃いっていうのかな?」

庄司「俺は諏訪ちゃんが選んでたから選んでみたぞ」

俺「無理やりということだな」

さち「庄司君は無理やりペアルックにする派なんやね」

庄司「おいしそうなものを選んでたら選びたくなるだろ!?」

俺「そういうことに」

さち「しておいたるわ」

俺・さち「「イエーイ」」


手をハイタッチする。


庄司「そのテンションは何なんだよ」

俺「その場のノリ?」

さち「ノリやな」

諏訪「露木君、ご飯買ってこなくていいの?」

俺「あ、そうだった。俺も買ってくる」


全員揃ったので俺も買いに行こう。

さてメニューは、っと。

今日の日替わりはさっき聞いたように麻婆豆腐定食か。

昨日さちが食べていた親子丼おいしそうだったし、

丼ものにしよう。


うな丼。食堂にあるのは珍しい。

かつ丼。大体これはあるよな。

かつ亜種。亜種ってなんだよ。ソースカツ丼か?

親子丼。カッコがついてるのが珍しいな。

親子丼。実質とろろ丼だったな。

他人丼。すき焼き的な?

他人丼。こっちが普通だよな。

他人丼。マグロといくらか何か?

親戚丼。初めて聞いたぞ親戚丼。

鉄火丼。値段は安めだけどマグロの質はどうだろうな。

海鮮丼。たまに魚の切れ端を集めただけのやつがあるからなぁ。


刺身系もわるくないけど、

この中だと聞いたことのない親戚丼がきになる。

豚と猪とかそんな感じだろうか?

せっかくなので買ってみよう。


俺「これは……」


丼に入ったご飯とほぐした数の子とやかん。

どうやらほぐした数の子をご飯にかけて、

やかんの中身をかけて食べるらしい。

つまりお茶漬け……?


庄司「お、来たか……お茶漬け?」

俺「そう見えるよな」

諏訪「数の子使ったお茶漬けなんてあるんだ」

さち「おいしそーやん」

俺「親戚丼らしいんだけどな」


やっぱりお茶漬けにしか見えないよな。

とりあえず椅子に座ると、

横にいるさちが丼を覗き込んできた。

残念だが丼の中を見てもご飯しかないぞ。


ご飯に数の子をのせてやかんの中身をかける。

ふわっと出汁のいい香りがする。

お茶じゃなくて出汁なのか。


庄司「中身はお茶じゃなさそうだな」

俺「出汁っぽい」

諏訪「出し茶漬け?」


なるほど、出し茶漬けか。

……いやどこが親戚丼なんだよ!?


さち「一口もらうでー」


出汁に気を取られた隙に、

流れるように俺のスプーンを手に取って、

丼の中身を味見されてしまった。


さち「なるほど、だから親戚なんか」

庄司「知っているのか雷電」

さち「雷電ちゃうわ。これは煮干し出汁なんよ」

庄司「煮干し……なるほどそういうことか」

俺「諏訪さん分かる?」

諏訪「全然分からない」


理解の早い二人で完結してるからさっぱりだ。

煮干しだったらなんだっていうんだ?


庄司「煮干しは何の魚だ?」

俺「そりゃあイワシだろ」

庄司「正確にはカタクチイワシだがあれはニシン目なんだ」

諏訪「あ、数の子はニシンの卵だから」

庄司「どこまでを親戚というかはわからんがそういうことだろう」


なんでそんなに学がないと分からないネタなんだよ。

しかもそこまで理解しても丼の意味ないし。


さち「恭平はおもろいもん選んでくれるな」

俺「一口といいつつ二口目食べようとしてないか?」

さち「はい、あーん」


さちが口に入れようとしていたスプーンを俺の方に向けてくる。

やっぱり食べようとしてたんじゃないか。

あれ?これって間接キスでは……?


俺「いや、これは間接k、むぐっ

さち「あ~~、聞こえんな」


喋っていた口に無理やり突っ込まれた。

……意外と悪くない。ぷちぷち触感が面白い。

ご飯もうっすら味がついているっぽいな。

二口目を食べようとしたら、

まださちがスプーンを持っている。


俺「もう自分で食べr、ふぐっ

さち「隙ありやで」


自分で食べると言おうとしたら、

またスプーンを突っ込まれた。


諏訪「楽しそうだね」

庄司「仲良すぎだな」

さち「ソウルメイト やで」

俺「クラスメイトの進化系か何か?」

諏訪「心の友的な?」


庄司がニヤニヤしている。


庄司「ソウルメイトって日本語で魂の伴侶っていうんだぜ」

さち「ち、違うかんな。仲間とか友達とかの意味やかんな!!」


少し顔を赤くしたさちが必死に否定している。

……どういう気持ちで言ってるんだろうな。


高校のころ、仲の良い女の子がいた。

毎日会話してたしよく一緒に帰っていた。

会話の距離が近く頻繁にボディタッチしてくる子だったな。

周りを明るくさせてくれる子で一緒にいて楽しかった。

特に笑った表情がかわいかった。

男子高校生であれば好きにならないはずがない。

思い切って告白した時の返事は忘れられない。

「ただの友達だと思ってた。女として見られてたって何か嫌だな」

そして恋人どころか友達としても付き合ってもらえなくなった……。

もし告白なんてしなかったらきっと友達で居続けられたんだろう。

もうあんなことはこりごりだ。


さち「恭平?どしたん?」

俺「いや、これけっこうおいしいな」

さち「せやろ!!」


嬉しそうに笑いながら答えてくれる。

からかいがいがあると思われてるだけなら

今のままで十分だ。

下手に恋愛がらみにして友達をなくしたくない。

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