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4.友達として言うべきこと

体感で長い一日だった。

まさかエロゲについて語れる初めての友達が女の子なんてな。

ただエロゲと言ってもいろいろある。

どの辺りまで踏み込んでいいものなのか。

せっかく出来た友達をなくすような真似はしたくない。


「お、感想ついてる」


考え事をしながら小説投稿サイトのマイページを見ていると、

一昨日投稿した短編に感想がついていた。


俺は趣味で小説を投稿している。

それだけなら隠すようなことじゃない。

問題なのは内容がR18ということだ。

それもちょっとエロいシーンがあるとかではなく、

がっつりエロメイン。


「今回は女性向けに書いたから高評価の感想だと信じたい」


R18の小説には男性向けと女性向けがある。

エロいことをしているのに違いはないけど表現がかなり違っている。

男性向けは登場人物の欲望が分かりやすいエロが好まれやすく、

女性向けは登場人物の心理が分かりやすいエロが好まれやすい。

「異性に何をさせたいのか」と「異性になぜさせたいのか」

どちらの表現を優先するかって感じが近いと思う。

もちろん逆になったから絶対に好まれない訳ではないし、

両方がしっかりしている作品もある。

個人的な印象の話だ。


そして女性向けのR18小説のほうが感想の内容が高評価の事が多い。

男性向けだと[良かった][悪かった]という感じが多いけど、

女性向けだと内容が濃いからだと思う。

ただその分低評価の感想だとかなり心にクル。

容赦なく「ここがおかしい」「こんな考えにならない」と言われる。


Maple[今回の話よかったです。二人は幸せになれたんですね。特に最後の指輪のシーンが気に入りました]

よかった、Mapleさんだったか。

Mapleさんは気に入った小説にはいつも感想を送ってくれる。

感想がない場合は多分気に入らなかったんだと思う。


Mapleさんのページを見ると、

基本的に女性向けの小説に対して評価やブックマークをしているのだが、

その中に俺の男性向けの小説が混じっている。

こういうのは作者で読んでくれているのが分かるので嬉しくなる。

ただ評価はシビアで気に入らない小説には容赦なく☆1をつける。

それでも評価してもらえるのはありがたい。

システムの都合上☆1でもポイントは入るし、

その人の好みも理解しやすいからだ。

Mapleさんの場合、エロなのかキャラものなのかどっちつかずの小説は低評価されるようだ。

気に入れば男性向けの凌辱系でも☆5をつける辺り、

なかなか剛の者だと思う。


「それでも初日で34ポイントかぁ」


俺としてはかなり良い出来だったと思うけど現実は非情だ。

一度は日刊1位とか取ってみたい。

そのためにも感想を参考にしてどんどん作品作っていかないと。


・・・


昨日は夜更かししてしまった。

結局短編作り終わらなかったからなぁ。

エロの経験がないのをエロゲと想像で補ってるから難しい。

さて朝ご飯を作る気にならないので食堂で食べよう。


食堂に行くと既に庄司がいた。


庄司「よう、早いな」

俺「おは、朝ご飯食べようと思ってな」

庄司「そうか。二人は一緒じゃないのか?」

俺「昨日もたまたま一緒だっただけだぞ」

庄司「……諏訪ちゃんってめっちゃ可愛くない?」

俺「めっちゃかわいい」

庄司「是非仲良くなりたいんだよな」

俺「俺も仲良くなれているわけじゃないから一緒に頑張ろうぜ」


丁度その時、食堂に二人が入ってきた。

さちが俺を見つけると小走りで駆け寄ってくる。


さち「恭平ー」

諏訪「あれ?いつの間に名前呼び?」


諏訪さんが首を少しかしげている。かわいいなぁ。

ストレートの前髪が少し動いて

眼鏡にちょっとだけかかるのとか最高。


さち「恭平が運命の人ということが発覚してな」

俺「誤解を招くいい方はやめろ」

庄司「羨ましい、俺も名前呼びされたい」

さち「んー、なら立木君も庄司君と呼んだるわ」

庄司「やりぃ」

俺「漁夫の利だと」

庄司「二匹目のどじょうの方が適切だろ」

俺「そうなの?」

さち「恭平は意外と学がないんやな」

俺「ど直球に馬鹿にされたぞ」

諏訪「ことわざは使い方難しいよね」

俺「目が点になるとかあんまり使わないよな」

さち「東京が崩壊することを表す慣用句やな」

諏訪「どういうこと?」

俺「女神転生、通称メガテンってゲームで大体東京は崩壊するイメージがあるから」

諏訪「そうなんだ、二人ともゲームに詳しいんだね」

さち「一般常識の範囲やで」

俺「逸般人の間違いでは?」

さち「言葉だけでは分からないネタはNGやで」

庄司「ちなみに目が点になるはことわざじゃないぞ」

俺「え?違うの?」

さち「慣用句やゆーたやろ」

俺「同じ意味では?」

さち「言葉の組み合わせで新しい意味を作るのが慣用句、文章が教訓めいたものになっているのがことわざって感じやで」

俺「知らなかった……」

庄司「あんまり気にすることじゃないしな」


こういう所で基礎学力の差が見えてしまう。

庄司は軽いノリで喋ってるけどかなり賢い。

入試も余裕だったらしい。

俺なんてギリギリ入れたレベルだ。

ちなみにさちも余裕だったらしい。


俺「あ、よく見たらもうご飯食べる時間ないじゃないか」

庄司「人のせいにするのは良くないな」

さち「うちじゃなーい、うちじゃない」

諏訪「っ」


さちが替え歌を歌い出したけど、

綺麗な歌声だったのでツッコめなかった。

実際さちもツッコミ待ちだったようで、

俺の様子を伺ってきた。

俺が聞きほれているのに気づいてニヤっと笑って歌うのをやめる。


さち「うちがかわいいからって襲ったらあかんで」

俺「襲われる側がその歌を歌うのかよ」

さち「10話で流しとったら神やったのにな」

俺「あの終わり方でEDがそれだったらつなぎ方に悪意がありすぎる」

さち「示すんだ…! 俺の可能性を…!……ビーム・マグナムで…!」

俺「制作陣は明らかにわかっていてつないでいるよね」

さち「PVで見たから意図的やと思うねんな」

庄司「さっぱり分からん」

諏訪「第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇のネタだよね」


諏訪さんが話に入ってきた。しかもネタ元を知っている。


さち「お、もみじちゃん、よう知っとんね」

諏訪「スパロボけっこう好きだから」


女性のスパロボユーザーってかなりレアいな。

ユーザーの中で1%ぐらいしかいないとか聞いたことがある。

しかもけっこう細かいネタなのに知ってるとは意外だ。


庄司「え、知らないの、俺だけ?」

さち「庄司君おっくれってるー」

俺「煽るのはやめなさい」

諏訪「よかったら貸してあげようか?」

庄司「え!?是非貸してほしい」

俺「ゲーム機持ってるのか?」

庄司「Switchはあるぞ」

さち「ゲームやるん?」

庄司「リングフィットアドベンチャーしか持ってない」

俺「そういう系か」


俺も買ったなぁ。

クリアした後は埃かぶってるけど。


さち「Fit Boxingもええで」

俺「しかしSwitchでスパロボというとV~30ぐらい?」

諏訪「私Switchで持ってるから大丈夫」

さち「うちもSwitchやけどDL版やから無理やな」

俺「俺はPS4版だしDL版だな」

庄司「だうんろーど版っていうのは?」

諏訪「実際のソフトがなくてデータだけなの」

俺「実物がないから貸せないんだよ」

庄司「そういうものがあるのか」


分かってはいたけど庄司はあんまりゲームやらないみたいだな。

それならエロゲもやらないだろう。


諏訪「明日持ってくるね」

庄司「頼むよ」


諏訪さんも隙あらば布教しようとする辺りは信者の鏡。

庄司も諏訪さんと話すきっかけになるだろうしちょうどよさそう。


さち「もうそろそろ朝の講義始まるで」


4人で講義に向かう。

今日は第二外国語か。

恰好いいからってドイツ語選んだけど難しいな。


・・・


しまったなぁ、何も口に入れていないからお腹空いた。

たしか購買に軽食売ってたし軽く食べてくるか。

そう思って席から立ち上がろうとすると腕を掴まれた。


さち「まだ講義途中やで」

俺「お腹が空いたからちょっと購買行ってくる」

さち「後にしとき」


教授から目を離さずに答えるさち。

真剣な表情だ。


さち「お金払うて講義を聞かせてもろとんや、ちゃんと聞かなお金の無駄やで」


言い返したい衝動に駆られる。

でも……しゃくだけどその通りだ。

高いお金を出して遊びに来てるわけじゃない。


・・・


講義が終わった。

なんとか空腹には耐えられたな。


さち「あの……恭平、強う言うてしもてごめん……」


さちがおどおどとした態度で俺に謝ってきた。

注意されて俺が気分を害したと思ったのかな?

そんな捨てられた子犬みたいな顔されたら、

どうすればいいんだ。


俺「いいよ、俺が悪かったんだし」

さち「恭平……」


顔がパッと明るくなった。

感情が分かりやすくて助かる。


さち「うち、食べ物買ってくる!!」


そういうや否や、売店にダッシュしていった。

俺に何も聞いてないのに何を買ってくる気なんだよ。


庄司「愛されてるな」

諏訪「どうみても彼氏彼女だよね」

俺「いつそんな話に」

庄司「割り込む隙がなかったぞ」

諏訪「ダメンズ系の小説で見た展開だったよ」

俺「俺そんなに駄目な人だった!?」

庄司「講義中に出ていくのは駄目だろう」

諏訪「単純に周りの人の気が散るよ」

俺「でも途中退出してる人は他にもいたぞ」

庄司「それはまともに学問に取り組む気がない人間だな」

諏訪「露木君はそういう人じゃないよね」


二人がかりで指摘される。

はい、すみません……。

言われてみればその通りだよな。

そういうのをちゃんと指摘してくれる友達でよかった。


さち「はぁはぁ、買ってきたで、休憩中にはよぅ食べや」


息を切らしてさちが帰ってきた。

ニッコニコで買ってきたのはおにぎりとお茶。

おにぎりはやっぱりツナマヨだった。


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