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第28話

 アリア達について王都の大通りを歩いていく。大通りというだけあって広い道だ。余裕で馬車がすれ違える。左右には背の高い建物が並び、通りには人や馬車が通っていく。どうやら道の真ん中は馬車の通り道らしい。歩きの人は道の端によって移動している。我らもその例に習って道の端、一段高くなっている歩道を歩いていた。

「最初は何から買うの?」

「まずは水と食料かしら?」

「そうですね。水と食料があればなんとかなりますし、水と食料から買いましょう。ただこの辺りは貴族や富裕層向けの高級品を取り扱ってる店が多いので、今の私達には手が届きません。下町の方に向かった方が良いと思いますが、いかがいたしますか?」

「そうですね。レイラさんの言う通り、予算が足りません。下町に向かいましょう」

 ヒルダが決定を下す。いつの間にか4人のリーダーはヒルダに決まったようだ。アリアがヒルダはボスのような存在と言っていたからな。まぁ妥当だろう。

 4人に続いて道を歩いていくと、大きな道に出た。今まで通って来た道も、馬車が余裕をもってすれ違える程大きかったが、出くわした大きな道はその倍はありそうだ。その道が左右に続いている。

「この通りの向こうが下町です。すみません。私、下町には不案内で…」

「じゃあどうしましょう。私なんて王都に出たの事態、初めてよ」

「同じくー」

「わたくしも下町の事はよく分かりません。とりあえず、大通り沿いに歩いて店を見つけましょう」

 コイツ等こんなことで大丈夫だろうか?一行は目的地も分からないまま下町へと踏み出した。

「うーん…。どこも高いわね」

「そうですね。質はいいようですけど、こうも高いと…」

「どれだけ王都の人は金持ちなのよ」

「あたし、安い店がないかちょっと聞いてくるね」

 ルサルカが一行を離れ、道行く老婆に突撃していった。良い情報があればいいのだが。我はもう歩くのに飽きたぞ。

「あ?なんだ嬢ちゃん。ここはオレの縄張りだぜ。」

 ん?なんの声だと思って辺りを見渡すと、リノアが猫に絡まれていた。痩せた猫だ。ふむ、戦闘力3ってところか。我が手を出さなくても、ヒルダが蹴散らすだろう。場合によってはリノア自身が蹴散らすかもしれない。

「あら、猫だわ」

「リノアと友達になりたいのかしら」

 どこをどう見ればそうなるのだろうか。アリア達が頓珍漢なことを言っている。リノアも助けを求めればいいのに、縮こまっているだけだ。ひょっとしてアレが怖くて震えているのか?そんなバカな…。

 相手の痩せた猫が前足をゆっくり振り上げる。殴ろうというのではない。頭を押さえつけてどちらが上位者か思い知らせようというのだろう。

「その辺にしておけ」

 我は介入することに決めた。だって誰も助けないんだもん。ヒルダも動かないのは予想外だ。興味深そうに痩せた猫を見るばかりで介入しようとしない。

「な、なんだおめぇ!?」

「我の連れに手を上げるとは良い度胸だな?」

 我は痩せた猫に近づいていく。相手の猫はタジタジだ。あ、逃げた。良い逃げっぷりだ。敵わないと見れば即逃げる。アイツ長生きするな。良い猫だ。

「あ、ありがとうございます…」

 そしてこっちは悪い猫だ。リノアを見る。

「なにクロ。やきもち~?」

 アリアがニヤニヤと頓珍漢なことを言ってるが無視だ、無視。

「今の場面、助けを求めるなり、ケンカするなり、取れる手段なんていくらでもあったろ」

「すみません。わたくし、怖くなってしまって…」

「それで動かないでは、相手の良いようにされてしまうだけだぞ。お前も使い魔だろう?魔法を使えば簡単に撃退できるのではないか?」

 リノアがシュンとうなだれてしまう。

「その…怖くて…動けなくなってしまって…」

「はぁ…」

 たまにだが、リノアのような猫が居る。たぶん根が優しすぎるのだろう。ケンカにも消極的で、かといって逃げることも出来ない。猫社会の底辺を生きる猫だ。

 リノアにとって、使い魔として人間の庇護を得ることが出来たのは幸運かもしれない。おそらくリノアでは厳しい野良猫生活は無理だ。まったく、今までどうやって生きてきたのやら…。

「次からは…自分で動けるように、がんばります…!」

「あぁ」

 まぁリノアはまだ子どもだ。これからに期待だな。

「リノアが助けられたようですね。ありがとう、クロ」

 やっと事態が読み取れたのか、ヒルダにお礼を言われる。鈍いな。ヒルダに限らず、猫の機微に対して鈍い気がする。相手の猫の顔や態度を見れば、友好的ではないと気付きそうなものだが…人間には難しいか?

「皆ー。聞いてきたよー」

 ルサルカが老婆の元から戻ってきた。有益な情報があればいいのだが。

「大通りからは少し外れるけど、向こうに地元の人が使ってる商店街があるみたいだよ。値段も安いみたい」

「でかしたわ、ルサルカ」

「そうですね。ルサルカさん、お手柄です。早速行ってみましょう」

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