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第27話

 ゴーンゴーンゴーン

「くはぁ~」

 鐘が鳴ると、アリアが目を覚ました。アリアを起こすのは面倒だからな、自力で起きてくれて助かった。

「うぐっ。はー」

 今日は退けと言われる前に、アリアの腹から降りる。我は学習する猫だからな。しかし、我が腹から降りたというのに、アリアは起き上がる気配を見せない。

「アリア、もう鐘は鳴っている。起きなくてもいいのか?」

「今日は休みだからいいのー」

 休みか。たまにこういうことがある。授業がないので朝起きる必要が無いんだとか。

「あ。でも今日は買い物だから、もう起きた方がいいわね。はぁ…」

 アリアがため息をついて、上半身を起こす。

「んぐ、くー、はぁ…」

 アリアが伸びをして、ベッドから立ち上がった。我はアリアの寝ていた場所に移動して、身体を横たえた。温い温い。アリアがクローゼットへふらふらと近づき、着ていた服、ワンピースを脱いで籠の中へ入れる。着ていた白い下着、パンツも脱ぐと、アリアが裸になる。相変わらず平たい身体だ。ポンッと飛び出た尻以外、平坦な印象を受ける。毛が生えているのは頭くらいだな、あとはツルツルにハゲている。

「私、私服って持ってないのよねー。夜着にしてるワンピースじゃ流石に恥ずかしいし…制服でいっか」

 アリアが服を着ていく。人間は服を着替えなくてはならなくて大変だな。そんな大変な思いをするくらいなら、裸でいいと思うのだが。いいぞ、裸。楽で。

 ふむ、アリアの支度にはまだ時間がかかりそうだ。寝て待つか。我はアクビを噛み殺すと、目を閉じた。

「クロー、ご飯食べるわよー。」

 アリアに起こされて、食堂に向かう。食堂にはすでにレイラとキースが居り、彼女らに合流した。朝食を食べていると、ルサルカも合流し、三人でおしゃべりしながら食事を摂り始める。

「レイラも制服なのね。私服は着ないの?」

「今日は外に出ますから。この学院の制服を着ていると、変なお誘いを受けることがありませんから安全なんですよ。二人もそれを見越して制服を着たのではないのですか?」

「私は単純に王都で着るような私服を持っていないのよ。継ぎ接ぎだと恥ずかしいでしょ」

「あたしもそんな上等な私服持ってないからねー。制服が一番上等なの」

 朝食も食べ終え、顔を洗っていると、アリアが話があると言ってきた。

「クロ、今日は買い物に行くわよ。」

「買い物?何をするんだ?」

「野外学習で必要な物を揃えに行くのよ。学院の外に行くけど、ちゃんとついてこないとダメよ。」

「我も行くのか?」

 買い物とやらに我が必要とは思えないが。

「当然よ。あなたには荷物を持ってもらわないと。あなたがどれだけ荷物を持てるかの実験でもあるのよ」

 そういうことか。まぁ我も学院の外には興味がある。ついて行ってやるか。食堂でしばらくゆっくりしてから、学院の正門へと向かう。教室とは反対側だ。こちらに来るのは初めてだな。やがて学院を囲む石の塀の切れ目が見えてきた。あの出入り口が正門か。正門の両端には人間が立っており、出入りする人間や使い魔をチェックしている。

「よかった、まだヒルダ様はいらっしゃらないようね」

「お待たせするわけにはいきませんからね。先に外出届を出しておきましょう」

 アリア達が正門傍にある建物で人間と話している。どうやらここでヒルダと合流し、そのメンバーで買い物に行くらしい。

「イノリスは行かないのか?」

「行ければ良かったんだけどね。外出許可が下りなかったのよ。だから今回はお留守番」

「そうか…」

 残念だな。イノリスが居れば乗せてもらおうと思ったのに。それに今回は初めての場所に行く。イノリスが居れば心強いかったのだが、居ないものは仕方ない。十分警戒しなくては。何が起こるか分からんからな。

 正門を出ると、広場になっていた。広場の中央に花や木が植えられ、それを中心に丸く道が敷かれている。我らは正門を出てすぐの所で端により、ヒルダの到着を待った。

 しばらくすると、広場に一台の馬車が入ってくる。馬車は円形の道をくるりと回って正門で止まった。御者が馬車を降り、横に付けられた馬車の扉を開けと、中から出て来たのは制服とは違う服を着たヒルダであった。

「皆さん、おはようございます。どうやらお待たせしてしまったみたいですね」

「おはようございます、ヒルダ様。私達は学園に住んでいますもの、お気になさらず」

 ヒルダの後ろから白い毛玉が馬車を降りてくる。

「おはよう、リノア」

「おはようございます、クロムさん」

 リノアがきょろきょろと辺りを見渡している。きっとイノリスを探しているのだろう。

「残念ながら、イノリスはお留守番だ」

「え!?その…わたくしたちだけで大丈夫かしら?」

 リノアが不安そうだ。コイツ、ケンカ弱そうだからなー。襲われないか心配なんだろう。

「大丈夫だろう。人間もいるしな。それに、居を構えて縄張りを犯そうというわけじゃない。通り過ぎるくらい見逃してくれるさ」

「そうですよね。…うん」

「クロ、行くわよー」

 アリアが呼んでいる。どうやら出発のようだ。

「そんなに心配なら、ヒルダにくっついていればいい。アイツならお前を助けてくれるだろう」

「はい…。そうします」

 リノアが残念そうにトボトボとヒルダの方に歩いていく。一体どうしたんだろう?分からんな。

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