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王都の皆には内緒だよ! 3

「私は使いますよぉー、裏の道具にキョーミありますしぃー」


 カミクガは意外にも乗り気だった。クサギもうーんと考えて言う。


「わかりました。ウチも使いこなせるかわかりませんが、使います」


 後はサツキだけだが、その勇者は浮かない顔をしている。


「サツキ、お前はどうなんだ?」


「あ、はい! もちろん魔物を倒すためだったら私も使います」


 アシノは短く「そうか」と言った。


「裏の道具は試練の塔で手に入れた事にしておけ」


「試練の塔は1人だけで登る場所、私はともかくクサギやカミクガの分は……」


「そこなんだよ、私が思い浮かんだもう一つの作戦は」


 ニヤッとアシノは笑って言う。


「試練の塔で魔物に効く武器を手に入れたって事にして、私達で使っちまうんだよ」


「なるほど、それなら堂々と使っても怪しまれませんね」


 クサギは手をポンと打って、なるほどと納得する。


「そろそろ見回りでもしないと怪しまれる。私はここまでだ。後はお前達で裏の道具を見繕ってくれ」


 ムツヤ達を見てアシノは言った。ルーは「任せといてー」と返事をする。


「裏の道具って使い手を選ぶのよ。例えば魔力の伝導率ほぼ100パーセントの杖とか、魔剣とか」


 それを聞いてサツキ達はゴクリと生唾を飲んだ。実力には自信があったが、使いこなせるかと。


「ちなみに、モモちゃんが持ってるのは切れ味の良い裏の剣と無力化の盾ね」


「無力化の盾!? それも本当に実在していたのですね」


 盾にそこまで詳しくないサツキでも名前を知っている代物だ。


「そこで、私の助手に登場して貰います」


 ルーは赤い宝石を木に叩きつけた。するとまた長方形の枠が現れる。2度目なのでサツキ達も驚かない。


「はいはい、どうもはじめまして。元武器屋のギルスです」


 サツキ達は「あぁ、どうも……」と挨拶を返した。


「サツキちゃんは風魔法の使い手だから、それに見合ったものを。ムツヤっち!!」


「はい!!」


 ムツヤがカバンをゴソゴソと手を突っ込んで探すと、一振りの剣を取り出した。


「これなんかどうでしょう? 握ると風が吹き出るんですけど」


 その剣を見てギルスはため息をついた。あれ? ダメだったかなとムツヤは思うが。


「ムツヤくん。それ、レプリカじゃなければ魔剣『カミカゼ』……」


「魔剣カミカゼェ!?」


 サツキは変な声を上げた。風を使う者に伝わる伝説の武器だ。


「わ、私がカミカゼを……」


 ムツヤは魔剣『カミカゼ』をサツキに手渡す。


「引き抜く前に少し離れた方が良いよ。力が暴走するかもしれないからね」


 ギルスの言う通り、サツキは皆から離れて魔剣を引き抜いた。


 銀色に薄く青を塗ったような刀身が太陽に照らされて美しく光る。


 横薙ぎに振るうと、突風が生み出され、目の前に砂埃が舞った。


 サツキは緊張しながら魔力を込めてみて驚く。普段遣いの剣とは比較にならないほどスッと力が入る。


 そして、また振るう。


 瞬間、風の刃が剣の軌道上に生まれて飛び出す。目の前にあった木々は真横に切れ、時間を置いて倒れてきた。


「これが魔剣……」


 少し力を込めて軽く振っただけでこれだ。この時、サツキの心の中は様々な感情がグルグルと巡っていた。


 1つは魔剣に対するワクワクとした高揚感。もう1つは恐怖。


 最後に、こんな強力な武器があるのならば、私達の今までの鍛錬は何だったのだろうという虚しさ。


 剣を鞘に収めて、感情を微塵も顔に出さずにサツキは振り返って戻ってきた。


「魔剣ゲキヤバなんですけど、サツキ大丈夫!?」


「あぁ、使いこなせるようになるまで時間は必要かもしれないが」


「はいはーい。次はクサギちゃんの武器ね」


 ルーが言うと、クサギは苦笑いをして指先で顔をかく。


「えーっと、武器っていうか、ウチは回復術師で戦闘はそんなになんですけどぉ」


「まぁまぁ。何かあるでしょムツヤっち!」


「はい!」


 ムツヤが取り出したのは赤色のシンプルな杖だった。杖というより棒と言った方が近いかもしれない。


「それは…… 俺の専門外だけど、まぁ使ってみてよ」


 クサギは受け取ると、驚きを隠せなかった。


「何これ!? 魔力の伝導率高すぎるんですけど!?」


 突然そんな物を渡されて、普通に持つことが出来るクサギの実力は確かなものだった。


「試しに使ってみるけど、怪我人居ないから支援魔法か防御の魔法しか使えないかー」


「私が実験台になりますよぉー」


 そう言って名乗り出たカミクガにクサギは支援魔法をかける。


「マジパネェ!! 魔力の通りが全然違うっすわ!!」


 支援魔法を掛けられたカミクガは試しにその辺を走り回ってみる。元から速い彼女のスピードは更に速いものになっていた。


「何かいつものクサギちゃんの魔法より、更に力が漲る感じですよぉ」


 次にクサギは防御壁を展開してみる。


「あー、パないっすわ。やっぱ楽っすね」


「試しに攻撃でもしてみる?」


「頼んます」


 ルーは精霊を召喚して防御壁を力いっぱい殴らせた。相当な衝撃だったはずだが、防御壁はビクともしない。


「衝撃の伝わりがちょろっとだけって感じっすね」


「えー。結構本気で殴らせたんだけどなー」


 ルーは少し自信を失ったが、それよりも杖に興味が行っていた。


「凄いな。それに魔力の伝導率が高いなら、その辺の人間だったら杖で触れるだけで気絶させられそうだね」


「なるほど、そういう使い方もあるっすね……」


 ギルスの発言になるほどとクサギは思う。


「ムツヤさぁん、私もいい武器が欲しいですぅ」


 カミクガはムツヤを下から見上げて言った。

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