「あ、すみませんすみません!!」
ユモトは急いで体勢を立て直して後退りする。その時勢い余ってよろめく。
グシャッ。
転ぶと同時に持っていた棒で偶然にもスイカを割ることが出来てしまった。
「第2回戦はユモトちゃんの勝ちー!!!」
目隠しを取って割れたスイカを見てユモトはふぅーっと胸を撫で下ろす。
「ミシマの兄貴ィー面目ねぇ!!」
「いや、仕方がねぇ」
ムツヤ達は倒れているユモトを取り囲んで賛辞を送る。
「よくやったユモト」
アシノが言うとユモトは照れて頭をかいた。
「アシノさん、でも何か偶然なような……」
ルーは早速割れたスイカを拾ってモシャモシャ食べながら言う。
「ぐうじぇんでもいいのお」
「怪我しなかったですか?」
「あ、いえ、大丈夫です」
ムツヤが言いながらユモトの手を取って起き上がらせる。ちょっと恥ずかしくて思わず赤面した。
「さーて、お次はー? ラスト!! ビーチバレー対決!!」
「ビーチバレー?」
ムツヤやモモ、ユモトやヨーリィといった海が初めて組は思わず首を傾げる。
「何かこう、ボールをポンポンポーンってやって相手の陣地に叩き込む奴よ!!」
相変わらずルーの説明は何を言っているのか分からない。
「じゃあルールを知っているアシノと私で行くわ!!」
フンスと胸を張っていうルーだったが、アシノが待ったをかけた。
「ビーチバレーならちびっ子のお前じゃ不利だろ」
「ちびっ子言うなし!!!」
「ちびっ子だ」「違うし」と言い合いながらも、ルーとアシノのデコボココンビが戦うことになる。
「でも向こう3人組よね、ルールとはちょっと違うけど3対3の勝負でどうかしら?」
「こっちはそれで構わないよ」
優男がそう言ったのでルーはヨーリィに声をかける。
「ヨーリィちゃん、一緒にビーチバレーで遊ぼうか」
「よく分かりませんが」
「私がルールを教える」
アシノが簡単に説明するとヨーリィは「わかった」と返事をした。
「それじゃ行くわよー?」
アシノがサーブを打ち、相手チームがそれを難なく返す。ヨーリィも小さい体ではあるが、持ち前の機動力を生かして頑張っていた。
(流石は勇者アシノのパーティだ)
ミシマがそんな事を思っていたら、アシノのスパイクが敵陣の地面に決まる。
その瞬間。
チュドーン!!!
爆発音と共に吹き飛ぶミシマ達、それを唖然と見るアシノ達。
「は? 何が起こったんだ!?」
「あ、あのー、あのボールムツヤっちのカバンから取ってきた奴なんだよね……」
ルーが言うと全員に沈黙が走った。
「ば、爆発オチなんてダメー!!」
場をごまかすためにルーが叫ぶとアシノは頭を引っ叩いた。
「お前のせいだろ!!」
「うーん、ハッ……」
「気が付いたか。良かった」
ミシマは頭に柔らかな感触を覚える。そして見上げるとアシノが微笑んでこちらを見ていた。
男臭い人生で初めての膝枕をされている。
「俺は……」
「私の力が暴走したみたいでな、すまなかった」
あの爆発ボールはアシノの力が暴発したという事に口裏を合わせた。
「まぁ、女の子達と遊べたし、こうして膝枕もしてもらえたし、試合に負けて勝負に勝ったって所かな?」
優男はルーに膝枕を、弟分はヨーリィに膝枕をされている。
「自分、いままで乳はデカければ良いと思ってたっす。でも自分新たな扉が開きそうっす!!!」
しばらくして男達が回復すると、互いの健闘を讃えて握手をした。
「私達、夜にバーベキューするけど、お詫びがてら一緒にどうかしら?」
「是非ご一緒させて頂きたいね」
「あ、あぁ、そうだな!!」
優男が言うとミシマも乗っかってきた。
約束をすると一旦解散となり、日が暮れるまでそれぞれ遊ぶ。
大きな太陽が海に沈んでいく、その様を皆で浜辺に座って眺めていた。
「ムツヤ、お前がしたかった冒険はできているか?」
アシノが聞くとムツヤは笑顔で答える。
「はい! ものすごく楽しいでず!!」
そうかと言ってアシノは笑う。モモは何だかアシノがよく笑うようになったなと思っていた。
辺りが暗くなると、約束通り皆で集まってバーベキューが始まる。
見知らぬ土地で酒と肉と仲間、ムツヤは最高の冒険者生活をおくっていた。
こんな生活がいつまでも続けばいいのにと。