「ルー!!!」
血を流すルーを見てアシノは叫ぶ。
「安心しろ、君もすぐ地獄に送ってやる」
ルーにトドメを刺そうとするダクフを見て、モモが長い栗色の髪をたなびかせながら飛び出る。
注意をこちらに向けて、ユモトが援護で大きな氷柱を飛ばが、ダクフが剣を一振りするとその氷柱が全て薙ぎ払われた。
「いやぁ、ムツヤくんの力は素晴らしい」
どうやらムツヤから奪った力を使ったらしい。モモは地面に倒れるルーの元までたどり着くと回復薬を掛けて男との間に立ちはだかる。
「邪魔だ豚ァ!!!」
男が剣を振ってくるが、あまりの速さで見えない。モモは身を小さくして無力化の盾の裏に隠れる。
おかげで攻撃を貰うことは無かったが、とても反撃なんて出来ない。ルーが立ち上がると男は少しイラツイた。
「回復薬は面倒だな。まとめて一気に片付ける!!!」
まず男はモモを狙った。諸刃の剣を振り回して盾の後ろのモモを狙う。そして、1つ突きが通ってしまう。
「ぐ、っつうううう」
右太ももを刺されてしまったモモは地面に片膝を着く。
「やめろおお!!」
ムツヤが普通の剣を構えてモモの元へと走る。男はその横を倍以上の速さで通り過ぎ、またもルーを斬りつけた。
「いやっ、あああああ!!!!」
事前に精霊を召喚していた為、斬られた後即座にそれらがルーとモモを取り囲んで守ってくれたが……
続けて男はアシノの元まで向かう。そして真っ二つにせんとばかりに剣を振り上げた。
「いづっ、くそっ!!!」
アシノは剣先だけだが、袈裟斬りに斬撃を浴びる。
そして、先程から自分に魔法を飛ばし続けるユモトにお返しとばかりに電撃をぶつける。
「あああああ!!!」
ユモトは感電して鼻の奥に嫌な匂いを感じ、全身に激痛を受けながら倒れてしまった。
「さぁ、これでお仲間達は終わりだよムツヤくん」
ムツヤは1人で立っていた。周りには地面に転がる仲間達。
「動くなよ、次に回復薬を使おうとしたら殺す」
ムツヤと仲間達にダクフは言う。今は刺激が出来ないとアシノは回復薬を使うのをやめた。
「さて、ムツヤくん君は散々キエーウに入れと言っても聞く耳を持たなかった。その決意を認めよう」
ジッとダクフを睨めつけながらムツヤは立ち続ける。
「今すぐこの場で自害しろ、そうしなければ仲間を殺す」
「ムツヤ殿!! 聞いてはいけません!!」
「ムツヤ、はぁはぁ、言う通りにした所で相手が約束を守るわけがない…… 聞くな!!」
モモとアシノは言うが、ムツヤはダクフに聞き返した。
「俺が死んだらみんなを殺さないか?」
「あぁ、いいだろう」
「ムツヤ!!!」
「ムツヤさん!!」
ムツヤが右手を腹に当てると、手が光りだす。
「ムツヤ殿、だめええええぇぇぇぇぇ!!!!」
光が腹を貫いて、静寂が訪れた。仲間達は目を見開いてそれを見ている。
ムツヤは地面にドサリと転がった。
「あっ、あぁ……」
ユモトは感電して動かない体を無理やり動かそうとする。ムツヤさんを助けなければ。
「ムツヤ殿!!」
右足を引きずってモモも歩こうとしたが、激痛でうまく力が入らない。
「お兄ちゃん」
ヨーリィは体が枯れ葉に変わり、動くことが出来なかった。
ルーは斬られた後、精霊に囲まれて地面に倒れたきりだ。
「ムツヤっ!!!」
アシノはムツヤの近くで切られた胸を抑えながら歩く。回復薬を掛けなければあのバカは本当に死んでしまう。
そんなアシノのよろめく足元をダクフは蹴り飛ばす。
「勇者様も無様だな、ハハハ」
バランスを崩して倒れ、回復薬は地面に染み込んでいく。
「さて、お前達、やれ!!」
騒ぎが収まるとキエーウのメンバーがぞろぞろと出てきた。
ダクフはムツヤの元へ歩み寄ると鞄に手を伸ばす。
その瞬間だった、ムツヤが飛び起きてダクフを斬りつけた。
胸を斬られたダクフは思わず手でその場所を抑える。
「生きていたのか!!」
また剣で斬りかかり、ダクフと鍔迫り合いになる。
そう、ムツヤは右手を光らせ、魔法で体を貫いたように見せかけ、実は背中から魔法を放出させていただけだった。
「このっ……」
ダクフは完全にムツヤを見誤っていた。仲間の為なら従順に命を捨てるだろうと。
「みんなの為に俺は死ねない!!!」
否、ムツヤは仲間の為に命を賭けて一芝居したのだ。
「小賢しい真似をっ!! うっ!!??」
ダクフは急に気分が悪くなった、目眩がする。
その理由は簡単だった。ムツヤの余りに強大過ぎる力に体がついていかなかったのだ。
「今すぐ剣を納めろ!! 本当に仲間を殺すぞ!!!」
「誰を殺すってわけ?」
ムツヤにとって聞き慣れた声がした。ルーだ。傷はすっかり治り、精霊の上に乗ってこちらにやって来ていた。
辺りに居たキエーウのメンバーは精霊たちと戦っている。
「くそっ!!」
「逃がすか!!」
モモが背中からダクフを斬りつけた。
「ぐううう、豚がぁ!!!!」
「私からもお返しだ!!」
アシノはビンのフタをダクフの顔面めがけてスッパーンと飛ばしまくる。地味に痛いやつだ。
「バインド!!!」
そして、怯んだ隙にユモトが拘束魔法で縛り上げた。