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レッツゴー拷問師 1

「近くの裏の道具の反応は私達以外に無いわね。あのオカマが遠ざかってく点と…… こっちに物凄いスピードで向かってくる点。多分ムツヤっちね」


 ルーが探知盤を取り出して言うと皆、安堵する。


「やだーやだー能力返せバカ女神ー!!!!!!!」


「モモちゃん、その子が逃げないようにしっかりと取り押さえていてくれるかしら」


「はい、わかりました」


 2人は同じ返事をした。ヨーリィとユモトは魔力が切れかけなのでモモが芋娘を拘束することにした。モモが近付くと芋娘は騒ぎ出す。


「オーグになんが触られたくねえだ!! っく、殺せ!!!」


 おそらく人間が窮地の際にオークに言う言葉1位をぶつけられ、モモは少し心が痛んだ。


「殺しはしない。少し大人しくしていて貰うだけだ」


「やだー近付くなー!!!」


「やだーやーだービンのフタなんかいらないやーだー!!!」


「うっさいわね!!!」


 芋娘と共にずっと騒いでいるアシノにルーはキレる。モモは芋娘の両手を後ろで組み上げた。





 しばらくの間、芋娘の叫び声とアシノの叫び声の汚いデュエットが響き、一同はうんざりとしている。


「ムツヤっちー!! 早く来てくれー!!」


 耳を抑えながらルーは言った、するとそれと同時に森の奥から人影がぶっ飛んできた。


「皆さん、無事でじだか!?」


 見覚えのある顔と訛り、ムツヤだ。


「やーっと来てくれた。私達は無事よ、ヨーリィちゃんの魔力が少ないぐらい。それよりもアシノの頭をスッパーンと叩いてあげて!! 見てらんないから!」


 やだやだーと地面に寝転がってバタバタしているアシノを見てムツヤは「……はい」と返事をした。


 頭に衝撃を感じてアシノは正気に戻る。


 そして、ゆっくりと記憶を辿り光線を浴びたことと、駄々っ子状態になっていたことを思い出した。


「もうやだ……」


「正気に戻ったんだからイジケてないの!! カバンはムツヤっちが取り返してくれたし、キエーウも追い払って、1人拘束できたんだから」


「そうだな……」


 アシノは目をギュッとつむってゆっくりと開け、芋娘を見る。


「キエーウの事、洗いざらい吐いてもらうぞ」


「ひっ」


 勇者の迫力に圧されたのか小さく怯えた声を出す。ムツヤ達はエルフの村に戻ることにした。





 ムツヤのカバンから取り出したロープで縛られ、芋娘は歩かされる。


「勇者アシノ様!! ご無事でしたか!?」


 村へと帰るなりタノベが声を掛けてきた。


「えぇ、無事です。村も異常はありませんでしたか?」


「はい、村には何も異常はありませんでしたが……」


 手をロープで縛られている女の子に気付いてそちらをじっと見ている。


「キエーウの1人を拘束しました」


「マジっすか!?」


 フミヤが言うとアシノは頷く。


「出来れば私達に尋問をさせて頂けませんか? 今回は事情が少し特殊でして」


「そうですか……」


 特殊と言われて一瞬は不思議そうな顔をしたものの、勇者アシノが言うことだから何かしらの考えがあるのだろうと、タノベとフミヤは思った。


 尋問は、エルフ達に尋ねて良さそうな場所を探した結果、村の離れにあるボロ小屋を借りて行うことにした。


 椅子を用意して芋娘を縛り付けてる。防音の魔法はもちろん使用済みだ。


「ぐうううう、はなぜえええええ!!!」


 まだ反抗的な態度だが、いつまで持つのか見ものだ。これから恐ろしいことが起こるとも知らずに。


「じゃあまず名前を教えてくれるかしら?」


「誰が言うか!!」


「それじゃあ、いつものいってみる?」


 いつものと言われ、何をされるのかと身構えた。


「レッツゴー名前付けタイム!!!」


 全員がパチパチと拍手をする。


 まずはアシノから手を挙げて発言した。


「もう色々と混乱させない為にこのまま『芋娘』で」


「オラ芋娘でねえだ!!!」


「アシノー? そういう誰かに対する配慮は良いけど程々にねー?」


 次に手を挙げたのはユモトだ。


「芋娘じゃあんまりですよ、せめてプリティ芋娘で」


「芋から離れるだ!!!」


 次はモモ。


「村に侵略をしようとしたのですから、侵略芋娘で」


「だがら芋娘から離れろって言ってペ!! それにそれは何か危険な香りがするだ!!」


 うーんうーんと考えて腕を組んだままムツヤも言う。


「芋娘、略してイモスでどうでずか!?」


「略すなーーーー!!」


 ヨーリィが無言のまま手を挙げて皆の注目が集まる。


「ぷりっぷりのおいも」


 ボソッと言う。


「じゃあ、ヨーリィちゃんの意見を採用して…… 何故村を狙ったの!? ぷりっぷりのおいも!!」


「やめろー!! 私はリースだべ!!!」


 ぷりっぷりのおいも、もといリースは名前を白状した。


「なるほど、リースってのか?」


 アシノが言うと勘弁したようにリースは返事をする。


「んだ……」


「贅沢な名だな」


「えっ?」


 アシノがそう言うと驚いてリースは声を上げる。


「今からお前の名前はリーだ。いいか、リーだぞ? 分かったら返事をしろリー」


「納得いかねぇだ!」


 口答えをしたリースの額にビンのフタを直撃させる。


「いっつううう、何をするだァーーーーッ」


 弱めとはいえそこそこ痛い攻撃をくらいリースは激怒した。


「私は勇者アシノ。答えな、尋問はすでに拷問に変わってんだからな」


 恐ろしい顔をしてアシノはリースを睨み付けていた。


「お前らは外の警戒をしてくれ、私が聞き出す」


 ムツヤ達は急変したアシノの態度に疑問を持ちながらも、外へと出た。


「アシノさん凄い怒ってましたねー」


 ムツヤが言うと皆うなづく。そんな光景を見て1人ルーがクスクス笑った。


「あれはね、作戦なのよ。有名な『悪い兵士と良い兵士』作戦。この場合は悪い勇者と良い美人召喚師になるかしらね」


 それを聞いてユモトが「もしかして」と話し始める。


「厳しく尋問した後に、優しく話を聞くと…… 敵なのに優しくしてくれる人に心を開いてしまうという……」


 ルーはユモトを見てウィンクをした。


「そうよ、その通り!」


 モモはなるほどと納得できたが、ムツヤはいまいち理解できていないようだ。ヨーリィは話を聞いているのかすらわからない。


「まー、アシノの事だから上手くやってくれるでしょう」

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