「あらぁん、やだわぁん、負けちゃったのね」
精も根も尽き果てているモモ達はその声を聞いてイラッとした。
アシノは無言でビンのフタを連射する。
オカマ魔法使いのウトナは防御壁を作って難なく過ごしたが、その後ろで「いでででで」と声が聞こえた。
「ウドナ様、オラも守ってほしいだ!」
「お黙り! その鎌を振り回して弾きなさい!」
声の主は若い娘、見た感じ俗に言う芋娘で、ムツヤよりも鈍った言葉を使う。
「だっで、鎌に鎖が付いてるだけでほんどに裏の道具なんだべやか?」
「探知盤にも反応してるし裏の道具よ!! はやくあいつらをやっちゃいなさい!」
芋娘はうぅ。と言いながら前に出てくる。
「食らいなさい、プリティビーム!!」
ウトナは裏の道具の杖を使い、感情を暴走させる光線を乱れ打ちした。
所々で爆発音が聞こえるので通常の攻撃魔法も混ぜているのだろう。
それぞれ丈夫そうな木の裏に隠れて魔法攻撃をやり過ごす。
ウトナの後ろでは芋娘がグルグルと鎌を振り回し始めた。謎の多い武器なのでこれが合っているのか本人ですら分からない。
しかし、そこは摩訶不思議の裏の道具。鎖の部分が飴細工のように伸びて攻撃範囲が広くなる。
「いいわぁん、やっちゃいなさい!」
「へい!」
ガスっと木に鎌が刺さると鎖が縮み始め。
「あああああぁぁぁぁ!!!」
鎖を手に絡めている芋娘はそこ目掛けて吹っ飛んでいった。
「ふばち!」
そして木に激突し、下の茂みに落ちる。
「なにやってんの!」
ウトナはイライラして言う。
そして、茂みから出てきたと思ったら、ヨーリィに右腕を後ろで拘束され、首元にはナイフが近付けられていた。
「本当になにやってんのおおおぉぉぉ!?」
「プリティビーム!!!」
ウトナはヨーリィに対してダメ元で杖を振る。
ヨーリィはこの杖は効かないのだから避ける必要もないのに、容赦なく芋娘を盾にした。
「亜人共をぶっ潰す! 亜人共をぶっ潰す! 亜人共をぶっ潰すんだべ!」
一応はキエーウのメンバーらしく、亜人を憎んでいることがわかる。
ウトナは呆れて頭を抱えたが、懐の連絡石が震えた為、作戦を切り替えた。
「さっさと道具を返しなさい!」
ウトナは爆破魔法を芋娘ごとヨーリィに喰らわせようとする。間一髪ユモトの防御壁が間に合う。
「あんた! 仲間じゃないの!?」
ルーが言うとウトナはふんっと鼻をならして言い返す。
「無能な仲間は敵以上に恐いのよ、自力で逃げられないなら死んでおしまいなさい!」
ウトナの中では既に芋娘を助ける事から、口封じに始末して逃げる事に目的が変わっていた。
「そんな、ウトナ様!」
ユモトとルーが攻撃の魔法を浴びせるが、ウトナは杖なしでも相当なやり手のようで、一撃も食らわずに立っていた。
(まずいわね……)
先ほど連絡石が震えてからそれほど時間が経ったわけではないが、このままでは最強の敵が来てしまうと考えていた。
「今日のところは勘弁してあげるわぁん」
「逃がすか!!」
アシノがワインボトルのフタをスッポーンと跳ばすが、反撃に合い光線を食らってしまう。
「やだやだやだー!!! こんな能力やだー!!!」
「わかったから落ち着きなさい、わかったから!!!」
暴れるアシノをルーはたしなめる。その隙にウトナは森の奥へと消えた。