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決闘するなよ、俺以外のヤツと 3

「で、どうしてムツヤが決闘することになったんだ?」


 床に正座をさせられているルーとムツヤ。アシノはそれをベッドに座り見つめていた。


「すいませんでした!!」


 ルーは頭を下げて謝罪をする。ムツヤもそれに習って頭を下げる。


「酔って寝ちまった私も悪いが…… ルー、何でお前が付いていながら……」


 ハァーっとアシノはため息をついた。後ろに立っているモモとユモトが床に座る2人を庇う。


「私が誤解を解くことが出来なかったのがいけないのです」


「ぼ、僕もです! 何か話をややこしい事にしてしまって……」


「もう良い、過ぎたことを考えても仕方ない」


 うなだれてアシノは言った。するとルーが手を上げて言う。


「すいません、もう正座辞めていいですか? あ、足がしびれて……」


 それを聞くとアシノは「ほほう」と言ってニヤリと笑う。そして立ち上がりルーの元へ歩いた。


「あ、アシノ? アシノさん? 何するつもりですか?」


 這いずって逃げようとするルーの足をアシノは手でつついた。


「あっ、だめっ、アシノそれはだめっ、んーーーー!!!!!」


 うっぷんを晴らすかのようにアシノは容赦なくルーの足を揉んだ。


「本当にそれダメだから、ダメダメ、あっ、ひっ、おかしくなりゅうううう!!!!」


 しばらくすると床に倒れてピクピクと動くルーがそこには居た。


「一般の冒険者だったら指先だけだろうがお前が負けることは無いだろうが……」


 アシノはムツヤをチラリと見た。


「強すぎるんだよなぁ……」


 はぁーっとため息をつく。他の皆も相手を秒でぶっ飛ばしているムツヤの姿が容易に想像できた。


「負ける心配は無いでしょうが、ムツヤ殿が目立ってしまいますね」


「だな、誤解を解くか、急いで街から逃げてバックレちまうか。どっちかだな」


 どうしたもんかとアシノは天井を見つめる。沈黙で気まずい部屋にノックの音が転がった。


「んー? こんな時間にだーれー?」


「キエーウの奴かもしれん、ムツヤ、お前が開けろ」


 頷いてムツヤはドアを開ける。そこに立っていたのはドアノブに手を掛けているタノベの姿だった。


「なぁ、やっぱやめとこうぜ?」


 後ろには冒険者仲間のフミヤも居る。彼はタノベを止めようとしていた。


「あらー、何でここが分かったのかしら?」


 ルーは冷や汗をかきながら引きつった笑顔をする。


「酒場から後ろを付けてきました!」


「そういうのストーカーって言うんだぞ」


 アシノはジト目でタノベを見つめていた。部屋を見渡してタノベはプルプルと震える。


「1つの部屋に女の子を集めて…… あなた、エッチなことしたんですね!!!」


「しとらんわ!!」


 アシノがツッコミを入れるがタノベは引き下がらない。


「部屋に女の子を集めて男が1人だけ…… 何も起こらないはずが無いでしょう!!!」


 ルーとアシノは珍しく同じことを思っていた。「あーコイツめんどくせー」と。


「タノベ殿、ムツヤ殿が言っていたハーレムというのは誤解なんだ」


「じゃあこの状況は何ですか!?」


 モモが弁明をするが、あまり意味がなかったみたいだ。


「あー、じゃあ論より証拠っつーわけで。ユモトお前が男だって証拠見せてやれ」


「な、ななななにを言ってるんですか! こんな可愛い子が男の子のはずがないでしょう!?」


 タノベは慌てて言う、ユモトは赤面してそれを聞いていた。


「僕が見せてムツヤさんの疑惑が晴れるのならば……」


「そうよ! 減るもんじゃないし!」


 ユモトは服の裾を持ち上げてその宝物庫の宝玉を御開帳しようとしている。


「ユモトさん!? そんな事しちゃダメです! おのれ、こんな変態じみたことをユモトさんにやらせるなんて……」


 タノベはすぅーっと息を息を吸って吐く。そして鋭い眼光でムツヤを見た。


「改めてあなたに決闘を申し込みます。時間は明日の14時、この街の闘技場で、逃げたらどこまでも追いかけます」


 言いたいことを言い終えるとタノベはドアを締めて出ていってしまう。


「何か戦う気満々なんですけど!?」


 ルーはどうしようとアシノを見た。


「まぁ、ムツヤに初心者っぽい戦い方を学ばせる良い機会かもしれんな、よし。今日はもう休め、明日付け焼き刃で戦う訓練をするぞ」


 朝になり、ムツヤ達は宿屋を出ると街外れの開けた場所まで来た。


 周囲に人が居ないか探知し、魔剣ムゲンジゴクをレプリカと取り替えてムツヤは抜刀する。


「剣を扱えるのはモモだけだからな、悪いがムツヤの相手を頼む」


「承知しました」


 モモも剣を抜いてムツヤの前に立つ。お互い真剣だが、実力差があるので怪我の心配は無いだろう。


「まずはモモの攻撃をかわしたり受け止めたりしてみろ」


「ムツヤ殿、行きますよ!」


「お願いしまず!!」


 モモは走り出してムツヤに斬りかかった。上から振り下ろされた剣をムツヤは最小限の動きで避ける。


 次に振り上げ、横なぎと剣を振り回すが、それも全て紙一重でかわされ。


 最後の体重を乗せた一撃も軽々と剣で受け止められて、弾かれてしまった。


「こりゃどうしたものかな……」


「完全に達人の動きね」


 アシノもルーもはぁっとため息をつく。


「とりあえずムツヤ、そのギリギリでかわすのをやめろ。後は剣を受け止めた時によろけたり、力を入れてるふりをするんだ」


「わがりまじだ!!」


 ムツヤとモモの特訓は仕切り直しになる。またモモが斬りかかり、今度は大きく飛び跳ねてムツヤはかわした。確かに大きくかわしたのだが……


「まてコラ!! お前は加減ってものが分からんのか!!!」


 十数メートル後ろまでその場からの跳躍でムツヤは飛び跳ねていた。やっぱコイツはバケモノだとアシノは再認識する。


「お手本でも見せてあげられれば良いんだけど、私は召喚術師だし、ヨーリィちゃんも相当強いし……」


 手本と聞いてアシノはハッとした。


 何故、最初に気付かなかったんだとちょっと呆れながらも。


「そうだ、手本ならそれこそ闘技場で見れば良いじゃねーか」


「それよ!!!」


「そうと決まれば急いで行くぞ」


 アシノは再び街に向かって歩き出す。ムツヤ達もその後を付いて行った。

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