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裏の道具を装備していくかい? 2

「あぁー……」


 ムツヤ達はやっぱりといった感じに声を出した。白とピンク色の、少し布の面積が狭いその服は驚くほどユモトに似合っていた。


「ねぇ、どう? どう? 可愛いでしょ!」


 ユモトの代わりにルーが興奮気味に言う。ユモトは相変わらず口に手をあててモジモジしながら下を向いている。


「や、やっぱりこの服はダメですよ!」


 ユモトは真っ赤に照れ涙ぐみ、うるうるとした目をしながら言った。


「それで、魔力の方はどう? 魔力が上がったとか魔法が使いやすいとか、そんな感じはない?」


「うぅ、ちょっと使ってみます」


 そう言ってユモトは先端がハート型の杖を使い、魔法の防御壁を出してみる。期待するルーを尻目にユモトは「うーん」と浮かない顔をした。


「何ていうか、やっぱり僕はいつもの服の方が魔法を使いやすい気がしますし、その、恥ずかしくて集中が出来ません!」


「そりゃ残念」


 ルーはわざとらしく両手を上げてやれやれといったポーズをする。ユモトは別室へ逃げるように入り、いつもの服に着替え直してきた。


 そして次はヨーリィの番だ。相変わらずムツヤの側を離れようとせず、ひょっこりと顔だけを出してルーを見ている。


「ヨーリィちゃんは得意な武器ってある?」


「私は魔力で作った杭を投げて戦います。その他に一応護身用のナイフは持っていますが」


 そう言われて、うーんとルーは目をつむって考えた。


「ヨーリィちゃんは体を枯れ葉にする事が出来るんだよね?」


「はい攻撃を受けた時に枯れ葉になりますが、自分の意志でも出来ます」


 話しながらヨーリィは右腕を枯れ葉にして見せ、そしてまた枯れ葉を集め自分の腕を作る。


「マジで凄いな、私も色々と見てきたが、そんな技を使っている奴は見たことがないぞ」


 アシノも感心していたが、ルーはうーんと唸ってヨーリィに質問をした。


「それって見た感じだけど、枯れ葉を腕にする時に魔力を使ってるんだよね?」


「はい、体の維持ならばそこまで魔力を使わないのですが、肉体の再構築には多くの魔力を使用します」


「無敵ってわけじゃないって事か」


 今度はアシノが腕を組んで下を向いた。ヨーリィにはどんな戦い方、そして武器が合うのだろうかと。


「でもそのドレス姿じゃ戦いづらいんじゃないか?」


 ヨーリィは白黒のゴシック調のドレスを着ている。確かに戦いの場では少し浮いた感じの格好だ。


「これも枯れ葉で出来ています」


 言ってヨーリィは自分の着ている服を枯れ葉にし始めた。袖からスカートの先からと、どんどん枯れ葉に変わっていく。


「ちょ、ちょっとストップわかったからストップストップ!!」


 さっきまでどんな事にも余裕そうに構えていたルーが慌てて言う。おかげでヨーリィは生まれたままの姿にならずに済んだ。


「ヨーリィちゃんは下手に裏の道具を使わないほうが良いのかもね。ムツヤっち、何かいい感じのナイフがあったら渡してあげて」


「それでしたら……」


 ムツヤはカバンから1本のナイフを取り出し、ヨーリィに手渡す。


「ありがとうございます、お兄ちゃん」


 ヨーリィは左袖の中に仕込んでいるボロボロのナイフを外し、ムツヤから受け取ったナイフと付け替えた。


「ところでルー、お前はもう決まってるのか?」


 アシノが思い出したかのように言うと、ルーは左手を腰に当てて右手の親指をグッと立てる。


「もちろん、この杖とマントを貰うわ!」


 ルーは机の上に置いてある紺色のマントと金属製の青色の杖を手に取った。


「このマントは魔力を流すと魔法も武器も簡単に弾けるすぐれもので、こっちの杖は魔力の伝導率が90%以上なのよ」


「へぇー、そうだったんでずか」


 ムツヤはあのマントに見覚えがあった、子供の頃に勇者ごっこをする時に身に着けていたのだ。だが魔力を流した時の効果までは知らなかった。


「そうだったんですかって、君ねぇ……」


 ルーはあきれ気味に言う。そしてまたモモがふと気付いた疑問を口にする。


「そのマントと杖をユモトにも使わせた方が良いのではありませんか?」


「うーん、このマントと杖はね、魔力の調整が難しいの。伝導率が高すぎるから」


 そして片目をつむってユモトを見た。


「一般の駆け出し冒険者なら、触って使おうとした瞬間に体の魔力が全部放出されて気絶すると思うわ。ユモトちゃんならそこまで大事にはならないだろうけど……」


「お役に立てなくて申し訳ないです」


 ユモトが落ち込みそうになっていたので、1つ咳払いをしてルーはフォローを入れておくことにする。


「ユモトちゃんは年齢の割には才能も実力も充分あるほうよ、でもまだこの杖は早いかなぁ」


「いえ、ありがとうございます」


 人から褒められる事に慣れてないユモトは少し恥ずかしそうに下を向いた。そして前を向いてすぅっと息を吸う。


「いつか…… その杖を使いこなせるぐらいに、強く…… 強くなりたいと思います!」


 言ってからハッとし、また恥ずかしさがこみ上げてきた。


「いいよユモトちゃん、その調子だよ!」


 ルーはまたグッと親指を上げた、そんな様子を見てモモはフフッと笑う。


 アシノは忘れていた眠気を感じ、あくびを1つして言った。


「とりあえず今日は夜も遅いしもう休むか、部屋割りはどうする?」


 この家には小さいが部屋が複数あるので1人ずつ個室で寝ることができる。


「私はどこでも大丈夫です」


 モモがそう言うとユモトも「僕も特には」と続いて言った。


「私はこの地下室で寝るわ」


「地下で寝るなんてアンデットみたいな奴だな」


 うーんとルーが背伸びをしながら言うとアシノは呆れて思わずそんな事を口にする。


「そうよー、太陽は天敵。地下室バンザーイ。ってなわけでみんなは上の部屋へどうぞー」


「わがりまじた、それじゃあルーさんおやずみなさい!」


 ムツヤの後に続いてみんながルーにおやすみの挨拶をして地下から出ていった。


「さてっと、空き部屋は充分あるから適当に好きな所で寝るか」


 アシノが眠そうに言うとムツヤも「そうでずね」と相づちを打つ。


「私はご主人様から魔力を頂かないといけないので、ご主人様と同じ部屋が良いです」


 モモは少し不服そうだったが、正当な理由の為に何も口出しは出来ない。だが1つ気になることを聞いてみた。


「その、魔力の補給はどうやってしているんだ?」


「手を繋ぎながらご主人様と一緒に横になります」


「なっ」


 それを聞いてモモはワナワナと震えだした。そこに追い打ちをかけるようにヨーリィは言う。


「寝ている間に手が離れてしまった場合、後ろから抱きつかせてもらって魔力を補給させて頂いてます」


「わ、わざわざ後ろから抱きつく必要は無いんじゃないのか? な、なぁユモト」


「えっ、あー、うー」


 ユモトは思い出してしまった。森の中でいつの間にかムツヤの背中に抱きついて寝ていたことを。

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