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いわゆる男の娘 1

「はい、モスモスは色が赤い個体ほど強くて凶暴になります、これは緑色なんで弱い方ですね」


 塔の中にいるのは真っ赤な血を浴びたような奴ばかりだった。と、言おうとしたが、塔のことは秘密だということを思い出して言葉を飲み込む。


「い、いやー、初めて見ました」


 ムツヤは視線を左上にそらしてそう言った。ムツヤの嘘はわかりやすい。


「ムツヤさんの国ではモスモスはいないんですね、そう言えばムツヤさんってどこの国のご出身なんですか?」


 ムツヤはユモトからの質問を受けて困ってしまった。自分の住んでいた地名すらわからないのでどう答えるべきかと考える。


「えっ、えーっと田舎の……」


「ユモト、日が暮れる前には森を出たい、ムツヤ殿とのお話は森を抜けてからゆっくりしよう」


 モモが助け舟を出してなんとかこの場はしのいだが、いずれユモトだけにも本当のことを伝えるべきかどうかモモは考えていた。


「あっ、そうですよね、すみません。では行きましょう!」


 ユモトは元気よく前を向き直すと、ずんずんと森の中を進んでいく。


 道中モモはムツヤ殿の出身地を考えておかなくてはと考え事をしていた。


 1時間は歩いただろうか、その時になってようやくユモトは何か異変に気付く。


「おかしいです、もうとっくに目的地に着いても良い頃なのですが……」


 ユモトはそう言って不安げな顔をする。そしてまた1時間が経過した。


「すみません、すみません! 道は合っているはずなんですが!」


 またユモトが謝り始めた。今度は半分泣きそうな顔になっている。


「大丈夫だ、道を間違えるぐらい誰でもある」


 モモはユモトを慰めつつも違和感を覚えていた。森を同じ方角へ真っ直ぐに進んでいるはずなので道を間違えていたとしても森を抜けても良い頃だ。


 それともう1つの違和感は。


「先程から動物を見ない、虫の1匹や鳥の1羽すら居ないというのはおかしい」


 気付いていなかった2人も言われてみればと思い返してみた、やはりこの森はどこかがおかしい。


「もしかして……」


 ユモトは嫌な予感がした、道に迷って動物も居ない。それが指し示す答えは。


「幻覚か僕たちの周りに結界が張られている……?」

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