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はじめての武器屋 1

 大きな街『スーナ』へと続く道を歩く男女二人組が居る。


 男の名前は『ムツヤ・バックカントリー』だ、肩まで伸ばした黒髪と茶色い目。


 彼の住んでいた家は裏庭が裏ダンジョンで、小さい頃からそこで遊んでいる。


 なので反則級の強さと、この世の理をひっくり返しかねない道具を山程持っていた。


 腰に下げている剣は斬ると相手が燃え上がる。


 いわゆる魔剣だ。銀色の鎧はどんな高温にも低温にも耐性があり、快適だからといつも着ていた。


 女の名前は『モモ』、オークは種族全員が家族という思想があるので名字はない。


 緑色の肌で、頭に被った兜から結った栗色の長髪をしっぽのように出している。


 見た目はオークと言うよりも人間に近い。


 朝にオークの村を出て夕暮れまでには街に付く計算だったが、2人共体力には自信があったのと、荷物はカバンに仕舞ったので身軽な事があり、だいぶ予定より早く街に着きそうだった。


 二人は取り留めもない雑談をしていたが、その話題が尽きた頃、何か話題をと考えたモモは一番重要な質問をしていなかった事に気が付く。


「ムツヤ殿、私が言えることではないが、街に付いた後で当面の生活はどうなさるおつもりですか?」


 ムツヤはカバンから取り出したパンをむしゃむしゃと食べながら答える。


「とりあえずそーでずねー、店って奴でカバンの物を何個か売っでバレシってのに変えようがなと思っでまず」


 バレシはこの国の通貨で10バレシで丸いパンが1つ買えるぐらいの価値だ。


 オークの村からは感謝の気持ちとして「今の村にあるだけです」と30000バレシ程の金を送られたが、ムツヤは辞退した。


 今だに亜人は人の見た目からかけ離れるほど差別を受ける。


 オークが就ける職業は少なく、そうでなくても、畑と狩りで必要なものを必要な分だけ自給自足する事を好む彼らにとってそれは大金であった。


 村を出る前に集会所でその謝礼金の事を告げられたが、惨劇が起きた事に付け込んでいる様で気が引けたムツヤはそれを受け取らなかったのだ。


 村長とムツヤの間で受け取ってくれ、要りませんとのやり取りが2,3回続いた後にモモからこんな提案をした。


「しかし、薬代と村を救ってくれたお礼をしなくては一族の恥だ。なので30000バレシには遠く及ばないと思うが、私をしばらくムツヤ殿の従者にしては頂けないだろうか?」


「従者っで言うど…… 一緒に旅をしでぐれるどいう事ですよね?」


 ムツヤがそう言うとモモは笑顔で頷いて胸を張る。


 そして、カシャカシャと小気味よい鎧の金属音を出して姿勢を正す。


「お任せを、ムツヤ殿の身の回りのお世話と、いざとなったらこの身を盾にしてでもお守りいたす!」


 結局ムツヤが受け取ったのは1000バレシと食料が2日分、そしてオークの従者だった。




「まぁ武器や防具に色々とありますし、適当に売れば大丈夫ですよ」


 あっけらかんとムツヤが言うと、突然胸元の紫色のペンダントが光りだした。


 モモは慌てて立ち上がり、ムツヤは眩しさから手のひらで目を隠す。


 二人は取り留めもない雑談をしていたが、その話題が尽きた頃、何か話題をと考えたモモは一番重要な質問をしていなかった事に気が付く。


「ムツヤ殿、私が言えることではないが、街に付いた後で当面の生活はどうなさるおつもりですか?」


 ムツヤはカバンから取り出したパンをむしゃむしゃと食べながら答える。


「とりあえずそーでずねー、店って奴でカバンの物を何個か売っでバレシってのに変えようがなと思っでまず」


 バレシはこの国の通貨で10バレシで丸いパンが1つ買えるぐらいの価値だ。


 オークの村からは感謝の気持ちとして「今の村にあるだけです」と30000バレシ程の金を送られたが、ムツヤは辞退した。


 今だに亜人は人の見た目からかけ離れるほど差別を受ける。


 オークが就ける職業は少なく、そうでなくても、畑と狩りで必要なものを必要な分だけ自給自足する事を好む彼らにとってそれは大金であった。


 村を出る前に集会所でその謝礼金の事を告げられたが、惨劇が起きた事に付け込んでいる様で気が引けたムツヤはそれを受け取らなかったのだ。


 村長とムツヤの間で受け取ってくれ、要りませんとのやり取りが2,3回続いた後にモモからこんな提案をした。


「しかし、薬代と村を救ってくれたお礼をしなくては一族の恥だ。なので30000バレシには遠く及ばないと思うが、私をしばらくムツヤ殿の従者にしては頂けないだろうか?」


「従者っで言うど…… 一緒に旅をしでぐれるどいう事ですよね?」


 ムツヤがそう言うとモモは笑顔で頷いて胸を張る。


 そして、カシャカシャと小気味よい鎧の金属音を出して姿勢を正す。


「お任せを、ムツヤ殿の身の回りのお世話と、いざとなったらこの身を盾にしてでもお守りいたす!」


 結局ムツヤが受け取ったのは1000バレシと食料が2日分、そしてオークの従者だった。




「まぁ武器や防具に色々とありますし、適当に売れば大丈夫ですよ」


 あっけらかんとムツヤが言うと、突然胸元の紫色のペンダントが光りだした。


 モモは慌てて立ち上がり、ムツヤは眩しさから手のひらで目を隠す。


「あのね、ムツヤの持っている道具の一つ一つはこの世界の理をひっくり返しかねないぐらいに強力なの。モモ…… でいいかしら? あなたもそれはわかるでしょう」


 モモは頷いて村での出来事を思い出した。


 飲んだだけで致命傷も完治してしまう薬など聞いたことも見たこともない。


「そしてそんな物を無名の冒険者志願が持ってきたら怪しまれると思わない?」


 確かにとモモは思った。ムツヤの方は相変わらずピンときていないようでアホ面をしているが。


「どこかで盗んできたと怪しまれるだけならまだ良いわ。ムツヤは深く考えたことないでしょうけど、そのカバン自体もこの世界では貴重な…… それこそ夢のような道具なの」


「そうなんでずか!?」


「物がいくらでも入って劣化しないカバンなんて誰でも欲しがるでしょう? 悪人であれば所有者を殺してでも」


「目立つと盗賊のような連中にムツヤ殿が狙われると……」


 モモが考えてそう言うとサズァンは口を閉じたままニヤリと笑う。


「惜しいわね、盗賊も面倒だけどそれ以上に厄介なのがいるわ。例えば身元も分からない、後ろ盾も無い人間が貴重なものを持っていたとして、大きな組織や国がそれを知ったら?」


 モモはハッと何かに気付いたらしい、ムツヤは二人が何を言っているのかわからないまま少し眠気を覚える。


「ムツヤ殿のカバンを取り上げられるという事ですか?」


 よく出来ましたとサズァンは拍手をするが、モモは今の今までその考えに至らなかった事を恥ずかしく思う。


 自分でもムツヤの所有物の偉大さをいまいち理解していなかったらしい。


「もちろんこの世界の人間なんてムツヤの敵じゃないでしょうけど、盗賊や豪商の手先、そして国に狙われる旅をしたくなかったら、今のうちは人にそのカバンの事を言わないこと、カバンの能力もわからないように使うこと。約束できるかしらムツヤ?」


 話を聞いていたのだか、いないのだか分からないが、ムツヤは我に返って威勢良く返事をした。

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